日本が誇る世界文学作家の原作をギャング系映画で有名なスコセッシ監督が映像化した作品です。
主題は（（キリシタン弾圧））です。

このスコセッシ監督が作る映画には強いクセがあり、
ギャングとか宗教の話を描くとすごい良作が出るのですが、
それ以外だと陳腐なものしか作れない、という監督さんです。
（という記事をどこかで読んだんだよな）

逆に言えば、ギャングか宗教の話であれば、高確率で当たりです。
今回は宗教の話ですね。
当たりでした。一時期は話題でしたね。

ではざっと。
沈黙、あるいはサイレンス、というのは「神はなぜ沈黙しているのか」という問いです。
受難を受けている人は必ず一度は考えることです。

バチカンに不吉な報告が届きます。
それは日本に布教に言った伝道師が、教えをすて棄教したこと。
真実を探るため、主人公がさらに日本に送り込まれます。
当然、キリスト教は弾圧されているだろうなので、密航です。
現地にいる信徒の助けを借りて、真実を追い求めますが、
あっさり捕まってしまいます。

これはキチジローという男が裏切ったからなのですが、
役者は窪塚 洋介です。
いや、これが良い演技。

窪塚洋介と言えば、なんとなくサヨク感のイメージがあるような気がしますが、いや、それを逆手に取ったというか、ここまで弱い人物を体当たりで演技しているのを見ると、本当に役者としてはすごいと見直しました。

とにかく、弱いんですよ。キチジローが。
眼を背けたくなるくらい。
一周回って愛着がわいてきた段階で、またやらかす、またお前か、
という無限輪廻の地獄絵図。
いわゆる武士道的道徳律の対極にある人物像です。
いるよね。こういう人。
麻薬とかで逮捕されるのを繰り返しちゃう人とか。
まあ、ヒトのこと言えるほど強くもないというか、自分のいちばん醜い部分を見せつけられて同族嫌悪したくなる気分を感じます。誰でもそう感じると思う。

こういう人物を持ってくるところに遠藤周作の凄みがある。
適当に面白そうなキャラを創ったんじゃなくて、
主題を光らせるために、それとマッチした性格のキャラクターだということです。
この創作技法は凄みがあるぞ。ここまでやるか。

そしてクライマックスのあのシーン。
向こうの神父さまや牧師さまは全力で否定してますが、
（教義に抵触するため）

本当に言いそうなところがこの人の怖さだよな。

スコセッシもぶれずによくやった！
むしろ原作よりも攻めてる感がある。さすがアメリカ人。
アメリカ人に変化球は似合わない。直球ストレートで勝負が良い。
（という偏見です）

というわけで、これはあの人が実はいかにヤバい人か、
ということにビビってほしい作品です。以上でした。
すごいですね世界宗教は。

これなら世相を賑わしたのも頷ける作品です。
ちょっと長いですが。

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