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ニルヤの島(著:柴田勝家)【待たれよ。まだ読書紹介の説明をしてござらぬ。いましばらく待ってちょんまげ】

戦国武将の柴田勝家が現代に転生してSF小説家になったという。
嘘です。戦国武将ではないらしい。

しかし「アメリカンブッダ」の後書き紹介によると、
素で吉本興業にいてもおかしくないキャラクター性があるらしい。
当然ツッコミ役ではない。天然自然流だ。
今宵のボケは微笑みに飢えている。
もちろん本業はSF作家であります。
すでにこの時点で相当な混乱が読者を襲っているだろうが、
当記事ではあくまでSF戦国武将として扱っていきたいと思います。
ん?

まずは柴田殿の最初の作品である「ニルヤの島」を紹介いたそう。

それがしはこれを電子書籍で読んで、そのアプリがなんだかわからなくなったので、再読はもはや叶わぬのだが。
しかもこれを読んでた頃のノートPCが壊れて動かない。
なので忘れている部分もあると思うのでご容赦ください。
図書館で借りた本などと同じでござそうろう。

いや、小説はまじめなストーリーです。
カーゴカルトという宗教をご存じでしょうか?

南の島バヌアツ諸島、
西隣はソロモン諸島、つまり日本軍とアメリカ軍が戦っていたソロモン諸島攻防戦の際に、アメリカ側の策源地になっていた島です。
日本側の島々はその後、追い込まれて戦場になっていきましたが、
アメリカ側の島々はアメリカ軍の前進に伴って忘れ去られました。

しかし、この短い期間、大量の物資をアメリカ軍が水揚げし、島に貯蔵庫を作ったのです。その量はこれまでの島の歴史ではありえない量だったので、それを見た島民の人たちは、
「神がやってきた」
と思ったのだそうです。

そして、ふたたび神の再臨を求めるための宗教がはじまったのです。
そのための聖なる儀式は、その時の行動を真似ること、
つまりアメリカ海兵隊の行進とかを真似ることです。
これがその宗教の祭礼となります。

ただこれは「未開の原住民よのお」などと馬鹿にできる話でもなく、
いわゆる祭礼とか儀式って、要するにみんなこんなもんです。

文化人類学的には、こういうのが宗教の起源になったのだといいます。
なぜお坊さんは木魚を叩くのか? 
なぜミサでおやつみたいなのを食べるのか?
なぜ神社で紐を引っ張って鐘をならすのか? 
なぜ1日5回お祈りするのか?
最初はみんな、取るに足りないエピソードから始まったわけです。

本書は特に葬式に注目します。
しかしSFですから、SF的な手法を用います。

まず作中の未来世界では、
人間のあらゆる行動はログを採ることができます。
そのログを集積すれば、例えば故人をAI上で再現できたりするのですね。
こういうことが可能な未来社会に、はたして葬式というものが成立するのでしょうか?

主人公の博士は、現代文明において失われた「葬式」という概念が、とある南の島には残されていることを知った。
その島では、死者は死後に「ニルヤの島」と呼ばれる場所に行くという。
調査に行く博士。最初はあくまで研究対象として観ていたが、
やがて・・・・・

こいつは、しっとり系SFですね。
SF的なガジェットが大活躍したりはしません。ハードSFではないですね。
どちらかというと、ハードSFを出汁に使った文学寄りの作品です。
だんだん思い出してきました。
ラストは、とても印象的で記憶に残るものです。

SFとしてはパンチ力が少ない感じですが、まあこれは偏見でしょう。
SFって価値観を揺らがしてきてくれないと物足りないなーと思っているのが私です。
そういう意味では期待外れでした。

でも、このラストは凡百の作品と違って、忘れ去ることはないでしょう。
私が死ぬまで脳の天蓋にこびりついて、
私も「ニルヤの島」に行くことになるかもしれません。

ざっくりミームの伝染力と不思議さを扱った話ですね。
SFらしからぬSF。
今回はこの感じで。

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