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華麗なる誘惑

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Koji様の素敵イラストから妄想したショートストーリーたち。ヘッダー画像、この小説に使用させていただいたイラストは、すべてKoji様に著作権があります。
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2019年10月の記事一覧

優しい嘘、最後の真実*あとがき

未読の方は、まずこちらから。

優しく寄り添うように見えるこのイラスト。
心の中に広がる本音と嘘が向き合っているように思えました。

嘘を吐いたのは、優しさだったのか?

ただ、臆病だっただけではないのか?

7年後の前までは、ほぼ実話に基づいています。
伝えることをしなかった私たちの恋の結末。
嘘を吐き続けるしかなかった。
それでも、彼を好きという気持ちは、ちゃんと自分の中で大切にしてた。

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太陽の向こう側*あとがき

未読の方は、まずこちらから。

どうしても、背中を向けるのが怖かったことがある。
その人はいつも、手の届くところにいて、心の届かないところにいた。
いや、反対だったのかもしれない。心の届くところにいて、手の届かないところにいたのかもしれない。

お互いを想い合う気持ちを持っていたのか。
それともお互いが自分の気持ちのままに動いた結果、一緒にいる時間を持っていたのか。
でも、たったひとつ言えることは

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切愛の欠片を抱えて*あとがき

未読の方は、まずコチラから。

このお話は、ふたつでひとつのお話になっている。もうひとつのお話が以下のものになる。

Kojiさんの名付け親企画で、一番頭を悩ませたのは、このイラストだった。
もともと、一枚だったというイラストを分けた結果の二枚のイラスト。
雰囲気は似ているが、一緒ではない。
一緒ではないが、溶け合うように、寄り添う小説が描きたかった。

この世の中に、全く同じ人間はいない。
一卵

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瞳にうつる、欠片を見つめて*あとがき

未読の方は、まずこちらから。

いつも完璧な人間は存在しない。
どんなに幸せでも、ココロにだって、時々隙間風が吹きつけることがある。
そんなときに、まるでココロに空いた穴を埋めてくれるような、そんな存在に出逢ったら。
ピッタリと嵌るパズルの最後のピースのように。

ただ、自分の瞳にうつる、彼という真実に、ココロの欠片を感じた。

ひとりで過ごすのが辛いときがある。
誰かに寄り添ってほしいときがある

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涙の花が咲く夜に*あとがき

未読の方は、まずこちらから。

ファンの方にとっては、恒例となったKojiさんの名付け親企画の第3弾のイラストがアップされた。
第1弾、第2弾とすべてのイラストで参加させてもらっている。
どれも素敵なイラストなのだけれど、第1弾、第2弾と、譲れないどうでもいいポリシーがあった。
それは、アップされている順番に描きたいということ。
だけど、今回の第3弾はそれができなかった。
このイラストが素敵すぎた

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優しい嘘、最後の真実

雪が降りそうなほど、どんよりとした真冬の曇り空。

バイト先のドラッグストアで、ゴミ出しに外に出ると、一台のバイクが私の目の前で停まった。
あまりの寒さに、踵を返して店内に戻ろうとすると、そのバイクに乗っていた男性がヘルメットを取ろうとしていた。

「美咲」

まさか呼ばれるとは思ってなかった自分の名前に驚いて後ろを振り向くと、そこに立っていたのは、順一だった。

高校のクラスメイト。そして、私の

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太陽の向こう側

カップルで賑わう公園。
背もたれのないベンチに座って、陸のくれた本を開くと、ほどなくして背中合わせのベンチに、誰かが腰を下ろした。

トントンとベンチを二回叩く合図。
私も同じように二回叩いた。

隣に座ることが許されない、二人の秘密の合図。
深めに座り直すと、僅かに陸の背中に触れた。

「久しぶり。元気だったか?」

本を読んでるふりをして、ページを一枚捲る。
背中合わせに座って別々のことをして

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切愛の欠片を抱えて

俺が「愛してる」と言うと、真奈は少し困った表情を浮かべ、俺の背中に爪を立てる。
一瞬だけ強く、爪を立てた真奈は、これ以上俺が言葉を発するのを許さないと言わんばかりに、いつも俺の唇を塞いだ。

何度「愛してる」と伝えても、真奈はその返事を言葉にして伝えてはくれない。
だけど、俺の背中に爪を立てて応えるという行為そのものが、俺には真奈の声にならない言葉をだとわかっていた。

俺たちが出逢ったのは、夏の

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瞳にうつる、欠片を見つめて

「愛してる」

圭介は必ずそう呟いてから、私に口づける。
それは、初めて身体を重ね合った、あの雨の日の夜からずっと、変わることはなかった。

その圭介の言葉に、私は言葉で応えるかわりに、いつも圭介の背中に爪を立てる。
その行為を、圭介がどうとらえているのか、聞いてみたいと思うことは度々あったけれど、一度も聞けなかった。

圭介のその言葉に、きっと嘘はないんだと思う。
ただ、目の前にいる女性だけを、

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涙の花が咲く夜に

「ずっと、一緒だよ。おじいちゃんになっても、おばあちゃんになっても、ずーっと。梨花ちゃんは僕と結婚するんだ」

「うん!梨花、修ちゃんとずっと一緒にいる!」

「絶対だよ?20年後、絶対結婚しようね」

まだ幼稚園の頃。
幼なじみの修ちゃんと交わした、小さな約束。
修ちゃんのお父さんの転勤で、明日には引っ越してしまうという残暑厳しい九月半ばに、ふたりで家出をしてママたちのことを困らせたっけ。

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