見出し画像

ASDを抱える人のためのサイコドラマとTRPG

こんにちは。
ものくろです。

今回の記事では、以前紹介した『自閉スペクトラム症のある青年・成人への精神療法的アプローチ』の「第3章 サイコドラマの視点からの自閉スペクトラム症のある人へのアプローチ」、「第8章[2] 自閉スペクトラム症のある人を対象にした会話形ロールプレイングゲーム(TRPG)を通じた楽しいコミュニケーション」を読んだ上で、僕なりの解釈をざっくばらんにお話していきたいと思います。

結論から言えば、ASD(自閉スペクトラム症)のある人は、他者目線で物事を見る想像力が弱い、苦手だと言われています。また、発達障害のある人はセルフ・モニタリングが苦手だとも言われています*1。ですので、サイコドラマやTRPGを通して自分ではない第3者を演じることで、第3者としての視点を獲得することができ、結果的に他者目線で物事を見る想像力を養うことができる。また、自分を第3者に演じてもらうことで自分を客観視することに繋がる、ということになります。

それでは、そもそも「サイコドラマ」とは何なのでしょうか?
サイコドラマは、ルーマニア出身の精神科医ヤコブ・モレノ(1889-1974)が始めた演劇的技法を用いた集団精神療法のことです。

ヤコブ・モレノ(1889-1974)


サイコドラマの1例

サイコドラマの1例をイラストで示すと上図のようになります(現在の主役をA、当時の主役をaと表現します。)。
サイコドラマでは、ある患者が傷ついたエピソードを即興劇として再現してもらいトラウマ(程度の低いものから程度の高いエピソードまで幅広くトラウマと呼ぶことにします)からの回復を図ります。主役となる人(a)、主役の心の中に生じる様々な感情(C1-C4)、相手役(b)をそれぞれ患者に演じてもらいます。また、主役(A)にインタビューしたり、場面の展開を指示したりする監督も患者に演じてもらいます。主役(a)のロールを演じてもらう人は、傷ついたエピソードを持つ本人(A)ではなく、別の患者に演じてもらいます。
サイコドラマを実際に演じてもらうことで、トラウマを持つエピソードを客観視することができます。例えばこの場面では、C1からC4の中でC1が一番強い感情だとすると、傷ついたエピソードを持つ本人(A)はC1に近づき、「あなたは駄目なやつではない。誰だって失敗するものさ。次から気をつければ良いんだよ。」と優しく声掛けをすることで、C1は主役(a)から離れていきます。傷ついたエピソードを持つ本人(A)に友達役(b)を演じてもらうことで、怒りたくなる気持ちが理解できたり、実は大して怒ってはおらずただ相手に謝ってもらうだけで十分なのだと想像することもできるようになります。また、C1を演じた患者から共感してもらえることで、傷ついたエピソードを持つ本人(A)は傷つくのは自分だけではなく、他の人も同じように感じることが分かったり、反対にそこまで気にする必要がないことを知ることができたりします。これらが、サイコドラマの効果となります。
YouTubeにサイコドラマの短い紹介動画がありましたので、リンクを貼っておきます。

TRPGについては、村中直人先生のブログで詳しく説明してあるので、そちらをご覧ください。

僕のnoteでは、自分なりに簡単にASDとTRPGの関係性について説明しようと思います。

まず、TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)は、アナログゲーム、ボードゲームのことを指しています。特にTRPGは、紙や鉛筆、サイコロなどの道具を使い、プレイヤー同士の会話を交えて遊ぶ対話型のロールプレイングゲームという特徴があり、有名なものにクトゥルフ神話というものがあります。僕自身はクトゥルフ神話を遊んだことはないのですが、それでも名前だけは聞いたことがあり、周りの友人でも遊んでいる話を耳にしたことはあるくらい有名なゲームです。TRPGでは、プレイヤーは自分が遊ぶキャラクター(アバターと呼ぶことにします)を選択するか、司会進行を行うゲームマスター(GM)とに分かれて行います。

詳しい説明は省略しますが、ASDにおけるTRPGの重要な点はこのアバターにあると思います。アバターとは自分の分身となるキャラクターのことですが、現実の自分ではなくアバターだからこそ自由に振る舞うことができるようになるというメリットがあります。ASDのある人(特に受け身形ASD)は、自発性に欠けるという特性がありますが、ゲーム上でのアバターは大きな方向性として進むべき道、やるべきことが決まっています。ASDのある人(特に受け身形ASD)は、選択肢が多過ぎると何をすればよいのか分からず困ってしまうという特性がありますが、TRPGではやることが明確になっているため、安心してゲームに参加することができます。
また、リアルな世界では失敗を恐れて消極的になってしまっていたとしても、ゲームというバーチャルな世界だからこそ、失敗しても大丈夫という安心感があります。失敗しても大丈夫なので、「とりあえずやってみよう。失敗したらまたやり直せばいい」という好循環を生み出すことができます。また、人と接することが苦手な人でも、目的、役割が明確になっているTRPG上では、コミュニケーションを楽しむことができるそうです。注意してほしいのは、この章を執筆した加藤浩平先生は、ASDにおけるTRPGをあくまでも余暇、趣味として扱っており、社会復帰などのより高度なことを目指している訳ではないということです。しかし、TRPGを楽しむことで人とのコミュニケーションが活発になり、人生に楽しみができるなどの効果は期待できるそうです。
YouTubeに発達障害×TRPGの紹介動画がありましたので、リンクを貼っておきます。

*1) セルフ・モニタリングの苦手さが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)に特有なのか、ASDに特有なのかはハッキリとしていないのですが、ネットで調べる限りでは発達障害(ADHD/ASD)と記載されています。深入りする必要はないのですが、発達障害はADHDもスペクトラム(連続体)であり、ADHDとASDの明確な線引きは難しいということだと思います。

今回はここまでとなります。
最後までお読みいただきありがとうございます。

もしこの記事が少しでもお役に立てましたら、♡(スキ)をしていただけると嬉しく、励みになります。そしてフォローしていただけましたら、頑張って書いた甲斐があるというものです。

それではまた~☕️


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?