中村朔

不定期で怖い話を載せてます。「怪異蒐集」は実話怪談形式の怪異譚、「夜話」は怪異を蒐集し…

中村朔

不定期で怖い話を載せてます。「怪異蒐集」は実話怪談形式の怪異譚、「夜話」は怪異を蒐集している大学生たちが怪異に巻き込まれる日常(?)譚です。

マガジン

  • 怪異蒐集

    夜話に登場する大学生たちが収集した怪異話。 だいたい2,000字前後。ひまつぶしにどうぞ。

  • お知らせ

    夜話・怪異蒐集とは関係なく、筆者自身のお知らせです。あと選外になった応募作を供養代わりに載せたりします。

  • 夜話

    みたま市という架空の街で怪異を収集する大学生たちが体験した、恐怖譚・日常譚。 10,000〜15,000字程度の中長編が多いので、お時間のある際にどうぞ。

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眠らない猫と夜の魚

【夜話】 ※改変中みたま市という架空の街で怪異を収集する大学生たちが体験した、恐怖譚・日常譚。「夜を泳ぐ」は1,000字くらい、それ以外はだいたい10,000〜15,000字程度の中編。お時間のある際にどうぞ。 夜を泳ぐ 埋める 神様が眠る時間 落下と移動 【怪異蒐集】夜話に登場する大学生たちが収集した、みたま市にまつわる怪異話。1,500〜2,000字程度。ひまつぶしにどうぞ。 イミコサマ 願いを欲しがるもの 襖越しに猫と話す 床下の穴 クロネコ様 山

    • 怪異蒐集 『呪い(まじない)の始末』

      ■話者:Aさん、中学生、10代 ■記述者:火野水鳥  Aさんの中学で霊現象が多発した時期があった。  霊を見る、声を聞く、憑かれる、怪我をするなど現象は多岐に渡り、目撃される霊も、血塗れの子供、赤い目の女、首がない地蔵などバリエーション豊かだった。今までも、どこそこのトイレの個室で子供の霊を見たといった話が流行ったことがある。しかし今回は体験者の数が桁違いだった。普段は幽霊を小馬鹿にしている生徒まで霊を目撃するに至って、「これは本当かもしれない」というざわついた空気が学校

      • 怪談書籍参加のお知らせ

        3月29日発売の竹書房さまの新刊、 『呪録 怪の産声』 『投稿 瞬殺怪談 怨速』 に、それぞれ何本かずつ怪談を書かせていただきました。 読んでいただけると喜びます! また、同日夜には高円寺パンディットにて『怪の産声』の刊行記念イベントがありますので、足を運んでいただけるとさらに喜びます。 私も未収録の怪談を披露させていただく予定です。 書籍・イベントの詳細は以下リンクをご参照ください。 『呪録 怪の産声』の詳細はこちらから 『投稿 瞬殺怪談 怨速』の詳細はこちらから

        • 怪異蒐集 『ヒトガタの家』

          ■話者:Eさん、家業手伝い、30代 ■記述者:黒崎朱音  旧市街に住む、Eさんの話。  中学生のころ、Eさんはよく旧市街にある公園で時間を潰していた。母親が勉強しろと煩く、家にいたくなかったからだ。  ある日、公園の前で友人のNさんに会った。そのNさんが妙なことを言った。夕方にヒトガタを持ってこの辺りを歩くと、変な場所に迷い込むことがあるという。 「ヒトガタってなんなん?」  そう聞くと、Nさんは折り紙で折った妙な形の人形を渡してきた。Eさんは馬鹿らしいと思いながらも、

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        眠らない猫と夜の魚

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        • 怪異蒐集
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        • 夜話
          4本

        記事

          夜話 『落下と移動』

          ※長編(約11,000文字) 『自殺者の霊が、同じ場所で自殺を繰り返す』  この手の怪談はよくある。先日、小夜が仕入れてきた怪談もその系統で、飛び降り自殺者の霊が同じ場所で飛び降りを繰り返すというものだった。テンプレと言ってもいい話だ。  でも小夜の話にはひとつだけ、テンプレと異なる箇所があった。     *  五月も半ばを過ぎて、吹く風は綿毛のようにあたたかい。海は凪いでいて、いつもは等間隔に並んでいるサーファーの姿も、今日はほとんど見えなかった。かわりにシロギス

          夜話 『落下と移動』

          最恐賞をいただきました(2023年9月)

          2023年9月の竹書房さんのマンスリー怪談コンテストにて、「娘の腕」という作品で最恐賞をいただきました。読んでいただけると喜びます! https://kyofu.takeshobo.co.jp/2023/10/15/202309/ あと、応募の過程でボツにした話を供養のために公開します。なむなむ。 あれこれ甘いですが、お読みいただけると幸いです。 「もう少しだったのに」 Nさんが大学生のときの話。 Nさんは正月休みを利用して、故郷の町に帰省した。大学生になってから

          最恐賞をいただきました(2023年9月)

          怪異蒐集『集合写真』

          ■話者:Rさん、会社員、30代 ■記述者:黒崎朱音 「ここで集合写真を撮らないでください」  みたま市にある火葬場の待合室には、そう書かれた一風変わった張り紙がある。理由は不明だが、この場所で集合写真を撮ると、知らない人物が映り込んでしまうという噂があった。  Rさんは高校生のときに、葬儀のためにこの火葬場を訪れたことがある。大叔母が亡くなったからだ。100歳近くになってからの逝去で、大往生と言ってもよかった。そのせいか葬儀も暗い雰囲気はなく、集まった親類が思い出話に花

          怪異蒐集『集合写真』

          怪異蒐集『猫の番』

          ■話者:Nさん、自営業、40代 ■記述者:八坂亜樹  Nさんが大学生のときに体験した話。  当時、Nさんは県外の大学に進学していたが、長く病床に伏せていた祖父が亡くなり、葬儀のためにみたま市に戻ってきた。  生前の祖父にまつわる良い思い出はあまりない。一代で会社を興し、一線を退いてからもなお会社の運営に深く関わっていた祖父は、盆や正月などの家族が顔を合わせる行事にも現れないことが多く、幼かった頃からどこか近寄りがたい印象があった。しかし、治る望みのない病気が発覚してから

          怪異蒐集『猫の番』

          怪異蒐集『山で目を塞ぐ』

          ■話者:Sさん、農業、80代 ■記述者:火野水鳥  昭和のはじめ頃に、Sさんが体験した話。  Sさんの家は農業を営んでおり、山にいくつか畑を持っていた。当時小学生だったSさんは、祖父の手伝いで山に入ることが多かった。  その日は台風が近づいているせいで、朝から強い風が吹いていた。山の畑に収穫待ちの野菜があったので、台風で痛む前にと、祖父とSさんは急いで山に向かった。  吹き付ける風の中を、祖父の後について山を登る。明け方の雨のせいで、足元はぬかるんでいた。足を取られな

          怪異蒐集『山で目を塞ぐ』

          夜話 『神様が眠る時間』

          ※長編(約17,000文字)  一週間のうちで一番やる気が出ない、木曜日。  読みかけのミステリを開いてみたものの、文章がさっぱり頭に入ってこなくて、さっきから同じページを何度も読み返している。向かいの水鳥はヘッドホンをつけて開いたノートの上に突っ伏していた。ヘッドホンを片っぽ持ち上げると、JUSTICEのStressが大音量で流れていた。 「この曲でよく寝れるな」 「えげつない低音聞いてると眠くならない?」 「わかるけど悪夢見そう」  私と水鳥はたいていの木曜がそう

          夜話 『神様が眠る時間』

          怪異蒐集 『クロネコ様』

          ■話者:Cさん、自営業、30代 ■記述者:火野水鳥  Cさんが通っていた小学校でクロネコ様が大流行したことがあった。  クロネコ様というのは、いわゆるこっくりさんで、みたま市では『クロネコ様』という名称で行われることが多い。休み時間になると誰もが仲間内で集まって、他愛のないことを質問したものだった。  その頃、Cさんはある女子グループに属していた。そのグループのリーダーはMちゃんと言って、街で大きな商店を経営する両親と、小学生にしては大人びた容姿を持った、クラスの女王

          怪異蒐集 『クロネコ様』

          夜話 『夜を泳ぐ』

          夜明け前。 真夜中と朝のちょうど中間くらいの時間。 空の碧が一番濃くなる時間に、街を歩く。 夜の街を歩くのが好きだ。 目的はなくて、ただ単に、夜を歩くことが好きなだけ。 寝静まった人気のない商店街を覗いたり、 コンビニのガラスに並んだ雑誌の表紙を眺めたり、 河川敷に座って対岸の灯を眺めたり。 そんな風に寝静まった街並をふらふらしながら、 夜の断片を拾い集める。 歩く人なんてほとんどいない。 すれ違うのは猫ばかり。 真っ黒な影絵のような街。 誰もいない交差点で点滅する

          夜話 『夜を泳ぐ』

          怪異蒐集 『床下の穴』

          ■話者:Mさん、大学生、20代 ■記述者:黒崎朱音  Mさんが、高校生の時に体験した話。  みたま市には『首吊り屋敷』という、いかにもな名称の心霊スポットがある。ここでは過去に父親が家族を殺害後、首を吊って死んだらしい。    ……という話になっているが、実際にここで一家心中や自殺が発生した記録はない。『らしい』という噂だけが流れて、何でもない場所が心霊スポットになってしまっているのだ。  だが、若者の間では怖い噂の的になっていて、他にも、二階の窓から赤い目の人が覗

          怪異蒐集 『床下の穴』

          夜話 『埋める』

          ※長編(約15,000文字)  気がつくと、夜の森の中に立っていた。  背の高い木が等間隔に並んでいる。夜空は天窓のように遥か高いところにあって、そこから覗き込むような満月が見えた。うっすらと霧が立ち込めているせいか、視界は青く煙っている。森というより、湖の底にいるようだ。遠くから耳鳴りのように聞こえてくる虫の声は、金属の鱗を持った魚たちが立てる、警告の音ように聞こえた。  ――ザクッ。  そう遠くない場所で、尖った音がした。  茂みの向こうにちらりと動くものが見える

          夜話 『埋める』

          怪異蒐集 『襖越しに猫と話す』

          ■話者:Yさん、会社員、30代 ■記述者:八坂亜樹  湯田沼に住むYさんの体験談。  Yさんは両親から相続した一軒家に一人で暮らしている。複数の部屋を使うと掃除が面倒なので、Yさんは家にいるときの大半を一階の居間で過ごしていた。    居間は狭い庭に面していて、垣根越しに隣家の縁側と和室が見えた。和室は隣家に住むおばあさんの部屋のようで、縁側に座って繕い物をするおばあさんの姿を何度か見た。隣家はおばあさんとその息子夫婦の三人暮らしで、日中はおばあさんが一人で留守番をしてい

          怪異蒐集 『襖越しに猫と話す』

          怪異蒐集 『願いを欲しがるもの』

          ■話者:Nさん、大学生、20代 ■記述者:火野水鳥  Nさんが中学生の頃に体験した話。  三珠山の麓の森の中に、それほど大きくない湖がある。Nさんの通っていた小学校で、この湖に関する噂が流行ったことがあった。  湖の中央には人が数人立てる程度の小さな島があって、木でできた小さな祠が建てられている。湖の岸からその祠に向かって願い事を叫ぶと願いが叶う、というのが噂の内容だった。  ただし、いつも叶うというわけではない。祠の陰から誰かが顔を出すことがあって、そのときに

          怪異蒐集 『願いを欲しがるもの』