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展覧会レポ:菊池寛実記念 智美術館「第10回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の今」

【約3,700文字、写真約45枚】
菊池寛実かんじつ記念 とも美術館(以下、智美術館)に初めて行き「第10回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の今」を鑑賞しました。その感想を書きます。

結論から言うと、1)想定以上に楽しめた、2)「現代陶芸」の面白さや奥深さがズバッと理解できた、3)全体の建築、展示会場のセンスもステキ、4)陶芸に興味がある人、全く興味がない人にもおすすめです。
目立たない美術館ですが、一度は足を運んでみてほしい場所です😄

展覧会名:第10回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の今
場所:菊池寛実記念 智美術館
おすすめ度:★★★★☆
会話できる度:★★★☆☆
ベビーカー:ー
会期:2023年12月16日(土)~ 2024年3月17日(日)
休館日:月曜日
開館時間:11:00~18:00
住所:東京都港区虎ノ門4丁目1−35 西久保ビル 智美術館1階
アクセス:神谷町駅から徒歩約10分
入場料(一般):1,100円
事前予約:不要
展覧所要時間:1時間弱
混み具合:ストレスなし
展覧撮影:全て撮影可(螺旋階段のみ不可)
URL:https://biennale.musee-tomo.or.jp/ 

撮影について(螺旋階段以外は撮影可能

100円割引クーポンあり💰


▶︎訪問のきっかけ

外塀

「明日は時間があるけど、どこか美術館でも行くか。(artscapeを見ながら)ん〜、智美術館はまだ行ったことがないな。noteを見ていると、泉屋博古館 東京とセットで行く人が多いけど、建築がおしゃれだった気がする。他に目ぼしい展覧会もないし…」と考え、行くことにしました。

▶︎アクセス

智美術館は神谷町駅から徒歩約10分、六本木一丁目駅からも徒歩約10分。すぐ近くに「泉屋博古館 東京」「大倉集古館」もあります。

住所:東京都港区虎ノ門4丁目1−35 西久保ビル

▶︎菊池寛実記念 智美術館とは

内塀

智美術館は、虎ノ門にある現代陶芸の美術館。炭鉱を創業するなど実業家だった菊池寛実氏の三女、京葉ガス会長などを務めた菊池智氏(1923 - 2016)の現代陶芸コレクションを公開することを目的とし、2003年4月に開館。

菊池寛実氏が、徴用で働きに来ていた陶工のために登窯をつくりました。疎開してきた智氏がそこを訪れた際、陶芸の良さに気付きました。以後、現代陶芸の収集を始めるようになり、その良さを広く紹介するに至りました。

“たまたま訪れた私は驚嘆いたしました。土の塊が、まるで魔術のようにろくろの上に形が整えられ、火の洗礼を受けて窯の中から美しい陶器に生まれ変わって私の前に姿を現したのでした。毎日のように死と対峙せざるをえない生活の中で『ここに生があった』という感動が、私の心の中を駆け抜けました。”

菊池智氏の言葉
超高層ビルに囲まれる智美術館

智美術館は、建築が特徴的でした。鎌倉文華館を建築した坂倉準三の後進である坂倉建築研究所による設計は、すらっとした和魂洋才な印象。

美術館の入り口
館内から入り口を見た風景

ビルは縦に長いものの、展示室は地下1階のみ。2階より上は一般企業が入居しています。その従業員も1階エントランスにあるエレベーターを利用しているようでした。また、駐車場にはその企業の役員(?)が利用する、運転手が乗った黒塗りのハイヤーがずっと停まっていました。

手摺:横山尚人、壁紙:篠田桃紅(画像引用

外観に加え、内観もステキでした。地下に伸びる螺旋階段(写真撮影不可)は、階段好きには堪らないのではないでは。ガラスでできた手摺は肌触りも見た目も一級品!展示室の設計も見事でした(後述)。

“『いつ、どんな美が私の前に示されるか分からない、そういう未知の感動を追いかける楽しみが、私を惹きつけたのではないでしょうか。思いがけない美をつかめるのが、現代陶芸の魅力ではないかと思っております。”

菊池智氏の言葉
トイレも美しかったです(具体的には写せません)
カフェ茶楓さふうは休業中

▶︎「第10回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の今」とは

チケット

菊池ビエンナーレは、2004年度から隔年で開催しているやきものの公募展(略)現代陶芸の「今」とその可能性を探るために年齢や制作内容に制限なく陶芸作品を募集し、陶芸における創作活動を行う方の日頃の研鑽の成果を問う場となってきました。(略)入選作53点を選出し、入選作の中から大賞1点、優秀賞1点、奨励賞3点が決定いたしました。制作者の創意と技術が結実した多彩な作品を通し、現代陶芸の「今」をご高覧ください。

公式サイトより
いざ、展覧会へ

この展覧会は、智美術館が定期的に行っている現代陶芸の公募展です。私は美術館に到着後、開催中の展覧会を知った時「初めて来たから、美術館所蔵の作品を見たかったな」と少し後悔しました。しかし、それは杞憂でした😀

大賞:若林和恵《さやけし》
優秀賞:宇佐美朱理《土環》
高さ51cmのまさに巨大な”ドカン”

全体を通して「陶芸は奥が深い!」と思いました。陶芸とは、粘土をねて、ろくろ回して、取手を付けた後は、焼いて終わり!ではないことが分かりました。

中でも「現代陶芸」は、現代アートに近い感性や奥深さを感じました。まさに、菊池智氏の言う「現代陶芸の魅力」を、この公募展ではっきりと理解することができました。

美しい展示会場
独特なカーテンの表現

また、会場の美しさ、センスの良さにも目を惹かれました。特に、カーテンの使い方が面白いです。このような表現の仕方を初めて見ました。ただ垂らすだけではなく、ジグザグにすることで、面白いリズム感が生まれます。

奨励賞:小枝真人《染付深鉢 細魚》
釣光穂《Breeze》
まるで編み物のよう。これも陶芸…!

「現代陶芸」は、使う●●より、置いて愛でる●●●●●●オブジェに近いと思いました。作品によっては、まるで使うことは想定していません。

清水剛《Zabtone》
気品漂う和菓子用の”座布団”
喜如嘉克昌《彫層磁渦文壺》
まるで「悪魔の実」

陶芸を見る時は、生で見た方がいいと思いました。写真で「現代陶芸」の面白さは伝わりづらいです。ゴツゴツ、サラサラ、ピカピカ、ツルツル…つい触りたくなります。その表面感、美しさは生で見ないと分からないです。

奥村巴菜《テングビワハゴロモ様とヤモリ》
これも陶芸…!(2回目)
星野友幸《練上鉢 ピンクグレージュ》
このピンクの美しさは写真では伝わらない

陶芸について詳しくない私にとって、これらの作品は、どうやって作ったのか、私の想像の域を超えていましたいました…🤯

布下翔碁《悠かなる》
内側の黒曜石のような美しさは写真では伝わらない(2回目)
増原嘉央理《紅白鮮 斜陽 -2307-》
すごく細かい

私はこの展覧会に何も期待していなかった分、いい意味で予想に反した内容だったため、十分に楽しめました。私の「陶芸」の概念が崩れました。さほど興味がなかった、三島喜美代氏の展覧会(練馬美術館、5月19日〜)も行きたくなりました。

展覧会の様子
奨励賞:腰越祐貴《おもう》
内側にもカエルが1匹

森美術館などで展示しても楽しまれそうな作品が多く、シンプルに「面白い!」と感じました。普段、陶芸を知らない人でも十分に楽しめます。中には、ブランクーシのような美意識を感じる作品も多かったです。

木野智史《颪(昇)》
まるでブランクーシのように美しく、エッシャーのような不思議さも感じる。この作品が一番好き
奨励賞:波多野亜耶《帰依》
西澤伊智朗《大地の食物連鎖 2023》
砂で作った爆弾みたい
展覧会の様子

智美術館に訪れる前、ちょっとマニアックな美術館で来場者はほぼいないかな?と思いました。しかし、平日にもかかわらず、来場者は常に5名ほどいました。来場者はみな、バシャバシャ写真を撮って、楽しそうでした。

やまわきてるり《いかりのぱわー ゆるしのぱわー》
憎めないやつ

この展覧会の楽しみ方として、一番好きな作品や、自分の部屋に置きたい作品を探すのが面白いと思いました。2人以上で行って、そのようなことを話し合うと、性格が出そうです。

大塚くるみ《SPACE CUBE》
デ・キリコを彷彿とさせる
中田雅巳《SEN》
筒を横に置く斬新さ

私は、智美術館に初めて行ったため、館内に菊池寛実氏や菊池智氏についての紹介があると助かりました(小さいパネルでも良いので)。紹介しないことも菊池智氏の意思なのかもしれません。

水野美術館の例(2023年11月撮影)
展覧会の風景
加藤智也《INTRON 2023-1》
まるで岡本太郎のような作品。高さ130cmもある
ビエンナーレ集計表
数値でまとめるアイデアが面白い
出品と入選の割合に大きな差がない

▶︎まとめ

買ったポストカード。杉浦康益《ヒマワリの種子》

いかがだったでしょうか?全く期待していなかった分、私はとても楽しめました。初めて現代アートを見た時の感動を、再び味わうことができました。陶芸を好きな人も、全く知らない人にも、おすすめしたい展覧会です。

▶︎今日の美術館飯

★3.4/3206 本店 (東京都/神谷町駅) - モーニングセット お好みサンド (¥780)
★3.5/オスロ コーヒー 麻布十番店 (東京都/麻布十番駅) - デンマークチーズパンケーキ (¥650)、クイーン hot (¥530)

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