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展覧会レポ:アーティゾン美術館「ブランクーシ 本質を象る」「石橋財団コレクション選」

【約4,900文字、写真約55枚】
アーティゾン美術館で開催中の「ブランクーシ 本質を象る」と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 清水多嘉示たかし」を鑑賞しました。その感想を書きます。

結論から言うと、行く価値は大いにあると思いました。それは主に、1)ブランクーシの作品約90点を集めた日本初の個展、2)ブランクーシの変遷や考えが体系的に分かる、3)展示方法が面白かった(一部、課題あり)ことによります。是非、心を「無」して鑑賞しましょう。特に、現代アートやミニマールアートが好きな人は必見の展覧会だと思います。

▼以前に訪問したアーティゾン美術館の展覧会

展覧会名:「ブランクーシ 本質を象る」「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 清水多嘉示」
場所:アーティゾン美術館
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★★★☆
会期:2024年3月30日[土] - 7月7日[日]
休館日:毎週月曜日
開館時間: 10:00ー18:00
住所:東京都中央区京橋1丁目7−2
アクセス:京橋駅から徒歩で約2分
入場料(一般):1,800円(ウェブ予約の場合)
事前予約:おすすめ
展覧所要時間:サクッと見て1時間半(コレクション展含む)
展覧撮影:全て可能
ベビーカー:ー
URL:https://www.artizon.museum/exhibition_sp/brancusi/ 

アーティゾン美術館は京橋駅の目の前

▶︎訪問のきっかけ

同時開催されている展覧会

訪問のきっかけは、1)ブランクーシという人に興味があった、2)「本質をかたどる」というキャッチコピーに惹かれたからです。「象る」(漢字検定準1級)という言葉を使うセンスがステキです。

また、ブランクーシの作品をまとめて見られることも魅力でした。ブランクーシの個展は日本初だそうです!

「シンプルなかたち展」@森美術館(2015年5月撮影)

ブランクーシの作品は、アートに興味を持ち出したころに森美術館などで見ました。その頃は「なんかツルツルしてて、キレイなオブジェやなぁ」くらいしか思いませんでした。

「横浜美術館開館30周年記念 Meet the Collection」@横浜美術館(2019年6月撮影)

約10年前から徐々にアートを見るようになった中で、自身のアートの好みも少しずつ見えてきました。私は、現代アートのように、普段の生活にはない「気付き」や「多様性」を作品から得ることで、その後の人生や仕事などに活きればいいな、と思うようになりました。

アーティゾン美術館の入り口

仕事はもちろんのこと、生きる上での「本質」が煮詰まったものが、ブランクーシのような「ミニマルアート」ではないか、と思います。

仕事をする上でも「本質」に気付くことが肝要だと思います。無駄な情報や言い回しが多いと「本質」がズバッと伝わりません。また、課題を解決する上でも、表面上ではなく「本質」から解決しなければなりません。無駄を削ぎ落としていって、結局、最後に残る最も重要なものは何か?一言で言えば何か?そのヒントをブランクーシ展に期待しました。

カール・アンドレもブランクーシの影響を受けたと語っていました

銀座の歩行者天国

▶︎「ブランクーシ 本質を象る」感想

チケット

ルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)は、純粋なフォルムの探究を通じて、ロダン以後の20世紀彫刻の領野を切り拓いた存在として知られます。本展は、彫刻作品を中核に、フレスコ、テンペラなどの絵画作品やドローイング写真作品などが織りなす、ブランクーシの創作活動の全体を美術館で紹介する、日本で初めての機会となります。(略)計約90点で構成されます。

公式サイトより

私は展覧会が始まった最初の土日に行ったため、来場者がとても多かったです。ブランクーシの人気を改めて感じました。

《プライド》
:最初の展示作品

ブランクーシは、ロダンに腕を認められ、1907年からロダンの工房で働いたものの約1カ月で辞めてしまいました。粘土による塑造や分業制に反発したと言われています。その後、石を直彫りした《接吻》がつくられました。

《接吻》
:アーティゾン美術館所蔵のブランクーシ作品と言えばコレ

ブランクーシにおける造形の問題は単なる外形にはなく、根源的なフォルム に到達することにあった。思考や夢想を宿す頭部を起点とする卵形は、生命の起源や誕生といった観念との結びつきのうちに、あらゆる存在の原型、即ち、本質的なフォルムとして表されている。

会場の説明文より
《眠れるミューズ》
:ブランクーシがフォルムの探求へと移行したフェーズの作品
最初の部屋は人が溜まりがち

ブランクーシは、色んな思いを煮詰めて作品を作ったのでしょう。そのような考えを続けているうちに「生命の起源や誕生→あらゆる存在の原型→卵形」になったそうです。なるほど、卵形は概念的にも形状的にも根源(本質)ですね、メイクセンスです。

《ミューズ》
手を頬に当てているのかな

中でも「アトリエ」と題されたスペースに、アーティゾン美術館の気合いを感じました。美術館で初めて見る形の照明が使われていました。そのため、遠くからこの部屋が一際、煌々と光って目立っていました。

美術館で見たことない、気合を感じる特別な照明
配置にセンスが問われそう
正面《洗練された若い女性(ナンシー・キュナールの肖像)》
一番左《王妃X》
《標識》
:棒切れみたいなものもブランクーシの作品

私にとって、ブランクーシといえば、森美術館や横浜美術館で見た《空間の鳥》です。シャキーンとした《空間の鳥》に再び出会えて嬉しかったです。

《空間の鳥》
赤い背景が作品とマッチ

今回の展覧会で《雄鶏おんどり》が最も印象に残りました。世界一優雅なツルツルとギザギザのバランスではないでしょうか。不思議と心を奪われました。何となくバイクのHONDAのロゴに似ていると思いました。

雄鶏おんどり
来場者はみな心を奪われる

ブランクーシは、マン・レイからカメラを教えてもらったり、デュシャンがアメリカでブランクーシの作品を広めたりと、当時の有名人と親交があったようです。ブランクーシは、1907年よりパリ・モンパルナスを拠点にしていました。もしかしたら、ピカソとも交流があったのでしょうか。

左《アトリエでのセルフ・ポートレイト》右《アトリエのブランクーシ》
ブランクーシの写真作品

運営面に関して、作品にキャプションなどが何もなく、番号しか振られていない点が気になりました。詳細は、作品リストで確認する仕様です。アーティゾン美術館では珍しい取り組みだと思いました。ミニマルな作品から「本質を感じる」ことに集中するための計らいでしょうか。

作品にはキャプションも何もない

また、ブランクーシに関わりがあったモディリアーニやデュシャンなどの作品(アーティゾン美術館所蔵)が、ちらほら展示されていました。これらの作品にもキャプションが何もありません。そのため「これはブランクーシの作品なのか?」と困惑しました。デュシャンの作品をブランクーシの作品と言われても「へ〜!」と思ってしまう人もいるのではないでしょうか。

モディリアーニ《若い農夫》
:キャプションもなくモディリアーニが展示されており困惑

キャプションを付さないアーティゾン美術館の意図は分かります。しかし、ブランクーシ以外の作品はキャプションを付した方が親切だと思いました。もしくは、ブランクーシ以外は展示する必要がなかったかもしれません。

左《若い女のトルソ》右《若い男のトルソII》
:子供曰く、それぞれ「涙」「木」に見えたとのこと

展覧会全体を通して、作品はどれも素晴らしいし、(キャプション問題を除いて)展示方法も面白いと思いました。また、ブランクーシのことを体系的に知ることができた点は良かったです。

ただし、ブランクーシの人物像を深く理解するに至りませんでした。それは主に、1)一緒に行った子供が飽きていたこと、2)来場者が多かったことによります。ブランクーシのような作品に向き合う場合は、一人で心を「無」に近づけて鑑賞した方がいいですね。

《ロンサン小路11番地のブランクーシのアトリエの入口》

会場では映像も上映されていました(私は1秒も見ていません)。それを見れば、ブランクーシについてもっと理解が深まったかもしれません。

なお、コレクション展(後述)と違い、ブランクーシ展の展示室には、来場者が休憩できる椅子やベンチがありませんでした。高齢者や子供のために、1カ所はそれらを設置していただけると助かると思いました。

《眠れるミューズII》
:つい同月にDIC美術館でも同じものを見ました

何にせよ、ミニマルアートの先駆者であるブランクーシ日本初の貴重な個展は、行く価値があると思います!今回の展覧会で、私は「本質」を理解するに至りませんでした。しかし、今後もアートを見続けることで、少しずつ、自分なりの深淵に近付きたいな、と思います。

▼アーティゾン美術館とほぼ同時期にパリのポンピドゥ・センターでも「ブランクーシ展」が開催中(2024年3月27日〜7月1日)

▶︎「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 清水多嘉示」感想

外に展示しているポスター

アーティゾン美術館は、毎期、3フロアを使って展覧会を開催しています。今回は、6階から4階までサクッと見たつもりでも計1時間半かかってしまいました。ボリュームがあるため、子供と来るには不向きかもしれません。

▼以下、気になった作品をピックアップ

《セクメト神立像》
アレクサンダー・コールダー《単眼鏡》
:麻布台ヒルズギャラリーで2024年5月30日から「カルダー展」が開始
ピカソ《道化師》
アルフレッド・シスレー《サン=マメス六月の朝》
:私がコレクション展で一番好きな作品。ふんわりしたそよ風が聞こえてきそうです
ジョージア・オキーフ《オータム・リーフII》※新収蔵作品
:ユニクロのLifeWearマガジン vol.10の表紙はオキーフでした
メアリー・カサット《日光浴(浴後)》
:コレクション展の中で、子供が一番好きな絵らしい
クリスチャン・ダニエル・ラウホ《勝利の女神》
エミール=アントワーヌ・ブールデル《弓をひくヘラクレス》
:これの大きいブロンズが国立西洋美術館にあります
尾形光琳《李白観瀑図》
左:清水多嘉示たかし《ギターと少女》右:マティス《オダリスク》
清水多嘉示《すわる女》
清水多嘉示《石橋正二郎像》
オシップ・ザッキン《三美神》
:ピカソの絵を立体にしたような作品
黒田清輝《針仕事》
安井曾太郎《座像》
:お目目ぱっちり
山口長男《累形》
清水多嘉示《石橋正二郎氏之像》
:アーティゾン美術館でいつも素通りしていた銅像が著名な作家によるものだったと知りませんでした。今回はいつも以上にストーリー性がある良いコレクション展でした

▶︎まとめ

買ったポストカード。ブランクーシ《雄鶏》

いかがだったでしょうか?日本初のブランクーシの個展は行く価値ありです!特に、現代アートミニマルアートが好きな人は必見です。ブランクーシの考え方の一端を垣間見ることができました。また、展示方法も面白かったです(一部、課題あり)。なお、できるなら一人で心を「無」にして、鑑賞することをおすすめします。

次回は、4〜6階ぶち抜きでコレクション展を実施予定(7月27日〜)

▶︎今日の美術館飯

★3.4/とん喜 (東京都/銀座駅) - ヒレかつ定食 (¥1,200)
★3.1/サザコーヒー エキュートエディション新橋店 (東京都/新橋駅) - サザソフト (¥500)

▶︎おまけ(カメラを新調)

Sony α7iv

最近、カメラを買い換えました。 買い替え後、初の展覧会がブランクーシ展でした。買った当初は、使用感の違いをnoteに投稿しようと思っていました。しかし、α7iiの発売からα7ivの発売まで約10年も経つと、全てが刷新されていました。違いを書き切れないため、投稿は止めにしました😅

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