見出し画像

マニアックすぎるロシア文学案内

羨望 オレーシャ:その文体の洗練度はナボコフに匹敵するとロシア文学者の沼野充義氏は評しています。その引き合いに出されたナボコフもオレーシャを絶賛しています。基本的にソビエト文学をけなしているナボコフが褒めるのはめずらしいです。

われら ザミャーチン:オーウェルの『1984』を先取りした全体主義社会を寓意した未来小説の傑作。個人のデータの全てが管理された社会での人々の苦悶が描かれます。

土台穴 プラトーノフ:これは一読してわかる小説ではありません。あのノーベル文学賞詩人のブロツキーも難解すぎると言っているぐらいです。どうやらスターリン体制の寓意みたいな話のようです。当時のソビエト文学にはこういうのが非常に多いです。

エジプトのスタンプ マンデリシュターム:ラーゲリで獄死した悲劇の詩人の短編小説です。マンデリシュタームはアクメイズムという新古典主義的な作風で知られていますが、世界的な評価も高く、パウル・ツェランや上に出てくるブロツキー、またブロツキーと同じくノーベル文学賞をもらっているジェイムス・ビーニーが彼の影響を受けています。さて前置きは長くなりましたが、この『エジプトのスタンプ』は非常に実験的なものでキュービズムをおもわせる所があると人は評します。

消えた太陽 アレクサンドル・グリーン:悪い金持ちによってずっと地下に幽閉されていた少年がある時金持ちに寄って初めて外に連れ出されます。そこで少年は生まれて初めて太陽を見るのですが……。とまぁ続きは国書刊行会から出ている同名の短編集で読んで下さい。

ペテルブルグ ベールイ:ナボコフが『ユリシーズ』『失われた時を求めて』『変身』と並べて二十世紀文学の四大傑作と絶賛した小説です。ジョイスに匹敵する文体実験の傑作であるらしいです。

アルセーニエフの青春 ブーニン:ロシア人初のノーベル文学賞受賞作家の唯一の長編小説です。作家の自伝的な小説ですが、亡命した作者が二度と戻れぬ故郷へのノスタルジーが哀切な筆致で描かれています。この小説はプルーストの『失われた時を求めて』に似ていると言われますが、それはブーニン自身も思っていて、彼は『失われた時を求めて』を読んだ時あまりに自分の小説に似ていることにびっくりしたと書き残しています。

機械と狼 ピリニャーク:ロシア革命を象徴主義や自然主義の手法を使って書いた作品らしいのですが、昔読んだっきりで内容はほとんど覚えていません。ただ描写がい非常時SFチックだった感じがしたのをかすかに覚えています。

山羊の歌 ヴァーギノフ:あの有名なバフチンの仲間だった人の小説です。滅びゆく帝政時代のペテルブルグへの哀歌だといわれる作品らしいです。これも一読してもよくわからない作品です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?