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書評・映画評

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評論文的コラム。主に、新書を中心に評論していきたいと思います。不定期更新。ヘッダーは、大好きなくらげさん(カブトクラゲ)。
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長編アニメーション作品としての「君の名は。」に関する一考察--真実性と物語性の致命的欠如

長編アニメーション作品としての「君の名は。」に関する一考察--真実性と物語性の致命的欠如

 皆さん、ご無沙汰しております。

 最近、友人とたわいもない会話をしている際に新海誠監督の作品の話になり、以前映画.com上にアップロードした評論の存在を思い出したので加筆修正してみました。

 今読み返すと、根拠が明瞭でなかったり、論理構成が危うかったりする部分が多々ありますが、「君の名は。」に対しての(筆者個人の)おおよその所感は今も昔も大差ありません。

 ちなみに、近作「すずめの戸締まり

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書評:開拓使官有物払下げ事件、あなたは正しく理解していますか?-『明治史講義』を読む。

書評:開拓使官有物払下げ事件、あなたは正しく理解していますか?-『明治史講義』を読む。

前回、『明治史講義【テーマ篇】』(ちくま新書、2018年)の書評という形で、日本の開国年について論じた。一般に、高校の歴史教科書などに書かれた、通説にしか触れてこなかった人にとっては、最新の史料研究の成果に、目から鱗が落ちるような感覚を味わった方も多いのではないか。

そこで今回は、筆者も『明治史講義』を読むまでは誤解していた「開拓使官有物払下げ事件」をめぐる事実関係について、整理してみたい。

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書評:日本の「開国」時期はいつか。-『明治史講義』を読む。

書評:日本の「開国」時期はいつか。-『明治史講義』を読む。

日本の開国年は1854年か?27日夜、国賓として訪日したトランプ米大統領夫妻を歓迎する宮中晩さん会が開かれた。冒頭、天皇陛下とトランプ大統領がそれぞれ挨拶され、筆者もその様子を中継で観ていたが、天皇陛下のお言葉に気になる件(くだり)があった。

筆者が気になったのは、文中の太字部分、すなわち日米和親条約の締結をもって日本の開国としている部分である。

山川出版社の『詳説 日本史B』を確認すると、第

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