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執着

グランドキャニオンを一望していて、その場から動けなくなった事がある。
日常で“地球”を深く考える事なんてそうそう無い。
でも、神代や太古なんて言葉じゃ表せないほどの遙か昔から、地核は脈打ち生き続けている事実。
そう考えると、身震いさえする。

その大自然に牙を剥かれると、人は泣き狼狽えることしかでない。命乞いさえ聞き入れてはもらえない。
その時に改めて“抱かれ、生かされている”事を再認識するのだ…



なんて事を考えていたら、目の前の茶色い固まりがとてつもなく恐ろしいものに思えて足が竦んだのだ。

そして“人間は弱い”ということも…
なのに人は傷つけ合い殺し合う。
過去に捕らわれ未来を切り捨てる。


以前、私の兄は言っていた
「死にたいけど、怖くて死ねない」
私は『一番人間らしい言葉だね。じゃぁ、生き急げば?早く死ねんじゃない?』
「お前らしいわ」と兄は笑った。



子供の指1本で潰せるような蟻だが、生きるために大きな群をなし巨大な動物をも倒す。
時には肩を組み合い、壁となり守りの塔を造る。
自分のためではなく、行き倒れた仲間のための“栄養袋”を必ず持ち歩いているという。
“生”に特化…いや執着した生き物だと感心する。


生きとし生けるもの、上手いこと出来ていると改めて思う。
弱く小さいからこそ、無力の塊の中から生み出せるものがあるのだ。


明日、久々に兄と会う。
「飯おごる。渡したいものがある」と。
今までに無い事なので、嫌な予感がした。
『…なに?最後の晩餐?』そんな私に
「インフルエンザが治ったから、外に出たいだけ!相変わらずだな、お前は」
兄はケタケタと笑った。


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