マガジンのカバー画像

外国語学習/日本語教育

14
海外で継承語教育、ドイツ人に日本語教育をしていることから考える外国語学習についてあれこれ。
運営しているクリエイター

記事一覧

「カラダにピース」の意味とは

日本から持ち帰ったカルピス原液を娘たちが割って飲んでいたところ、ドイツ人の夫が、 「これは何て読むの?」 と話しかけていた。長女が、 「『カラダにピース』だよ。体に平和を、体の調子を整えるという意味だよ。」 と説明するのを聞いて、 「えっ!? 平和???」 と思った。 私はもっと単純に「ピース✌」ってことだと思っていた! だから、体がいぇーい!って言って、喜ぶ、みたいな、簡単なことだと思っていて、そんな深い意味だと思っていなかった。 そう話すと、長女が、 「でも、ピースっ

授業報告「銀色の裏地」(小5)他

雲の裏側のことを想像したことがあるだろうか。 確かにフライトなどで、雲の上を飛んでいるときに、ああ、この下は曇りなんだなと思ったことはあったけど、下から見上げて、ああ、この上は晴れているんだという逆の発想をしたことがなかった。 なんと英語では、その状態がことわざになっているという。 liningは線とかのlineの現在分詞系。 動詞では、線を引くの他、裏打ちする、満たす、肥やすという意味があるそう。 ここでは線の方ではなく、裏打ち、裏付け、裏張りの意味の方。 つまり、「全

「外で食べよう」は外食??

メーデーでの祝日の昨日。 とっても天気がよかったので、外でごはんを食べようと思い、夫に「Wollen wir heute draussen essen?」というと、早速庭の四阿(といっても、屋根はなく、葡萄と藤を這わせてある。元は「パビリオン」として売られていたのを勝手に藤棚にした)の掃除をしてくれた。 Wollen wir heute draussen essen?は、英語なら「Shall we eat outside today?」。 draussenが外という意味なん

バイリンガル児の「わたし語」

「わたし語」というのは、バイリンガル児に限らず、幼い子どもが言葉をうまく言えないことから、発音などをまちがえていたのが定着したり、誤って覚えていたり、自分で創作したりしたもの。 「となりのトトロ」のメイちゃんも「とうもころし」と言っていたが、こういうアナグラムも「わたし語」になるだろう。 長女はテレビを「テベリ」と言っていた。 ひらがな単位でなく、アルファベット単位でアナグラムされていて、TEREBIがTEBERIになっているのだ。 あとは、「パクリタ」。 パクリみたいだ

【今日の授業】背が高い?大きい?

にほんごクラブ「---は---が(形容詞)」 アニメキャラたくさん用意していって、描写してもらいました。 「背が高い」って日本語独特。 ドイツ語なら単に「あの人は『大きい』」と言います。 私的には、日本語で「大きい」と言われると、横も縦も大きい感じ(イメージは熊みたいな)がります。 でも、それに引っ張られて、みんな「背が大きい/小さい」って言いがちなんだよね。 今、インターネットで「背が大きい」を検索してみたら、自動的に「背が高い」が表示されました。 でも、「背が小さい」

「人/物は<何/どこ>が---」の学習と差別社会教育

明日のにほんごクラブの準備中。 ここのとろろ形容詞を取り上げていたので、春休み前の来週に「好きなキャラ(でも実在の人でも)紹介」でもしようかと、欠かせない「人/物は<何/どこ>が---」の文型を用意しつつ、これってでもきっとよくないんだろうなあともやもや。 大学で使っている教科書Genkiにも、この人が太っている/やせているという描写が出てきて、これ現代(ヨーロッパ)ともうすでに合わないなあと思った。 見た目を云々するということが、ほとんどタブーのようになっている。 私が

外国語学習で重要なアクセント

アクセントとは何か~方言と訛り まずは、日本語の中だけでいうと、アクセントは強弱で、イントネーションは高低という感じがする。 文の中で強く言う部分に、アクセントがあるともいえる。 一方、イントネーションは「訛り」だ。 いわゆる「方言」は地方の言い方で、ごはんを「よそう」を「つける」「つぐ」など、別の語彙のことをいう。 でも、訛りというのは、「ピアノ」と「ピアノ」のようなイントネーションの違い。 だから、標準語を話してる中の一音が違えば、 「今、訛ったよね?!」「イントネ

文法の教え方-直接教授法じゃなければ

今日は、朝から5コマ。 まあ長い人も多いので、気楽で楽しいメンバーです。 うち、仕事でこちらに来ている日本人の彼氏のために日本語を習っている人がいるだけど、年に1度は彼と日本に行き、英語の話せない家族ともコミュニケーションをとっているので、中級と言える人がいる。 本は使わずに、都度テーマを設けて取り組んでいるんだけど、今日は助詞を取り上げてみました。 終助詞や間投助詞は、ドイツにないのでそのグループ分けでいいんだけど、格助詞は、ドイツ語にこそ「格」があるんだよね。 欧州系

【今日のセミナー】トランスランゲージングとスキャフォールディングなど。カタカナがいやな件

今日のセミナーは継承語系で、テーマは「トランスランゲージング」でした。 トランスランゲージングとはなんぞや ごく簡単にいうと、要はバイリンガルの子とかがごくふつーにやってる言葉のまぜこぜ。 例えば、今朝の我が家の姉妹の会話。 妹「Gestern hatten wir ein 国語テスト」(昨日Kokugotesutoがあったんだ) 姉「Und? War es 難しかった?」(で? それはMuzukashikatta?) 私が教えていた補習校では、校内でドイツ語(外国語

ブルームの教育目標分類(改訂版)

ブルームの教育目標分類とは何か 今日のセミナーで最大の収穫は、ブルームの教育目標分類を知ったことだろうか。 1973年にアメリカ人教育心理学者が考えた分類を、門下生がさらに改善したもの(だから改定版)で、学習の段階、内容をまとめている。 ピラミッドの上に行くほど、高度な学習ということになる。 今後、学習計画を立てる上で、目標に応じた活動をより明確にできると感じた。 例えば、昨日高校生クラスで行った「句会」は、俳句のルール確認や作品紹介という「記憶」の上に、「応用」(本歌取

バイリンガル教育をするなら、まず根を育てよ

先週のセミナーで出てきた「カミンズの氷山説」を記録に残しておきたい。 従来、バイリンガルは頭の中に2つの風船がある状態だと思われていた。 1つが増大すれば、自ずともう1つは圧迫され、縮小されてしまうという考え方。 その後、カナダ人教育心理学者ジム・カミンズが新たに「氷山説」を唱えた。 実際に私も、日常生活には困らない程度にドイツ語が話せて、ドイツ語日本語のバイリンガルの子どもを育てているが、氷山説に納得。 決して風船ではない。 言語を均等に育てていけるならいいんだけど

サブカル起点の外国語学習

数日前に拝読してから、つらつら考えていること。 まずはこちらの引用から。 筆者は日本の大学やNHKのラジオ講座で韓国文化や韓国語を教えている。 K-popが好きだから、という理由で韓国語学習を始める人は、文法重視の現在のスタイルだと離れがちだという話。 私もドイツで日本語を教えているが、学習者の8~9割は程度の差こそあれ、アニメ、マンガ、ゲーム好き。 私もマンガは好きなので、まさに筆者のいうところの「コンテンツをエサ(例文など)に文法を教える」ところをすることがある。 オ

コミュニケーション力(りょく)の育て方?

とっても共感するところの多いajekorea先生の記事より。 ダグラス・ラミス「イデオロギーとしての英会話」(1976年)を引用されて、コミュニケーションとは何かということを問題定義されています。 ダイジェストで書くと、アメリカ人であるラミス氏が金沢で「英語で話しかけれてもいいか」と聞かれ、了承するとお決まりのフレーズだけの質問を繰り返した、という出来事。 同氏は「彼はその答えに真実興味を持っていたわけでもなかった。(中略)彼が暗唱した文章は型にはまったお定まりで、(中略)

最近、世の中は「はやい>ただしい」が正しい。かっこよくいうと、拙速!

例えば計算。 428円のものを3個買ったらいくらか。 すぐに暗算できる人もいるだろうけど、時間がかかったり、「筆算しないと分からない」とか、「計算機使っていい?」っていう人も多いだろう。 でも、「しさん12だから、1200円より多い。1300円でお釣りが来る」という考え方でよければ、それなりに早く答えは出せる。 もちろんお店の人が、 「えーっと、1500円出されたらから、お釣りは大体200円ですね」 っていうのは困る。 だから、シチュエーションに応じて正確さも大切だ。 で