見出し画像

原田マハ「あなたは、誰かの大切な人」

こんにちは。
久しぶりに展示に置かれていた本に目を奪われてしまいました。皆さんは大切な人思い浮かべるとしたら、それは誰でしょうか。頭の中にふと浮かべるだけで大丈夫です。今回は原田マハさんの書かれた6編の小説を読みました。
最近、既に亡くなっていた人たちの小説や詩ばかり読んでいたので、生きている方のを読むのかなり久しぶりかもしれないと、時差ぼけならぬ時代ぼけを覚えました。今、書店では本のカバーが絵画のフェアをしているのか、著者の選んだ特製版になっています。その絵がグスタフ・クリムトの接吻(The Kiss)でした。他にも2つ、同作者の本で特製カバーになって置かれていました。そこだけ、美術展になってるようにさえ感じました。「夏を喪くす」「風のマジム」も同様にクリムトの特製カバーになっています。

読み終えてから知ったのですが、初版は2014年に単行本で出版されたもの、文庫になったのは2017年のものだったようです。それが2023年に新しい表紙になって世に出されるのですから、奥深いですね。
ちなみし、最初の文庫カバーはマーク・ロスコ「壁画 No.1」のためのスケッチのようです。デザインの違いでもこちらの本は二重にも三重にもおいしい構造かもしれません。内容、内容に出てくる舞台、時代も何もかも異なる文章と絵画の重なる個所、絵画のメッセージなどなど知らない視点が自分に入ってきて面白いと感じます。

「あなたは、誰かの大切な人」の中身もとても面白かったです。後ろのあらすじを見て、概ね、誰かが誰かを想う愛に纏わる人たちの話なのだろうなと予想しました。だいたい合っていました。ここでのネタバレは避けたいので申し上げられませんが、どの話においても大切を大切にする美しいお話だったと感じます。宙に大きな器にはいった綺麗な水があって、泥だらけになった自分に滝のようにその水がどどどどっと落ちてくる感じです。いっそ、清々しいです。
この本は予想が当たっていても尚、次の誰かに読んでもらえたらいいなと薦めたくなります。

The Kissを描かれたクリムトはまさに「愛、正愛、親密」を主題にしていたとされています。ちなみにクリトムは「わかってくれる人が判ってくれたらいい」という思想を持っていたので、だれもかもが自分のを気に入らなくもよいという価値観を持っていたようです。調べてみてちょっと分からないでもないなって思わされました。
今回の小説と主題の重なる点に、ロコスの描かれたスケッチは考える深さについてを併せて訴えてきているように思われます。

この本の素敵だなと思わされたのは元カバーに記載されたYou are the one loved by someoneという訳です。そのままだとタイトルと変わりないのですが、こちらだと人数が限定的になりますSomeoneとは「誰かひとり」という意味合いになります。なので、あなた(ひとり)は誰か(ひとり)に愛された人という訳になります。人が人を愛せるには限りがある事を頭に刻まれるようです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?