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絶望となかよく

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生きにくい世の中を生きるコラム
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酒が飲みたいんじゃない。気を失って何もかも忘れたいんだ。

むかしむかし、まだ私がうら若き小娘だった頃、そして隠れた悪意なんてなくて、見た目からあからさまな悪意しか世の中には存在しないと思っていたバカだった頃(←まあ、今も相変わらずバカだけど)、今となっては信じられないことに、お酒はほんの少ししか飲まず、常に誰かの介抱役だった。

あのときは、飲んで騒いで絡んでくる人たちに嫌気がさしていたし、介抱しても次の日には介抱されたことすら忘れている酒好きたちがある

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知覚できないままに、下降する。

和歌山の知の巨人、南方熊楠は、生命現象にとって、観察者の立場は相対的なものにすぎない、と強調していたらしい。つまり、「生物を観察している人間は、それを生命の内側からではなく、外側にあらわれた行動を観察して、さまざまな判断や推測を行っているにすぎない」ということらしい(南方熊楠「南方熊楠コレクション-森の思想」)。

粘菌を例にあげると、粘菌はアメーバ状になっている時と、茎が伸びて胞子を出している時

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幸せになっちゃいけない症候群

おめでとう、と言われると、なんだか居心地が悪い。

誕生日おめでとう。

とか。

研修で表彰されたんだって? おめでとう。

とか。

言われるたびに、なんだか悪いことをした気分になる。

なんなら、このあと揺り戻し的に、ひどい目にあうんじゃないか、とさえ思う。

おめでとう! と言われて素直に「ありがとう」と言える人を羨ましく思いつつ、そのあと嫌なことがあると、やっぱりな、なんて思ってしまう。

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死んだように眠る

寝ていると、「死んでるのか思った」と言われたことがある。

一回目は高校生のとき。

夜、妹と共同の自室に向かい、敷布団の上にうつ伏せで寝ていた。

後からやってきた妹が酷く焦って、「死んでるのかと思った。やめてよ」と言った。

2回目は社会人になってからの20代。

彼氏さんと話をしながら、二人で床でゴロゴロしていたときに、そのまま寝てしまいそうになった所を、彼氏さんが焦ってゆすり起こした。「死

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子供向け小説という名の理想論

数ある職業の中で、短命で有名な職業と言えば、小説家をあげる人がいる。

それは考え過ぎちゃって病気になって自殺したり(芥川龍之介、太宰治、川端康成、三島由紀夫えetc)、インドアすぎて肺病になっちゃった人(中原中也なんて「文豪は肺病で早死してる人が多いから俺も!」とか言ってたら死んだらしい)が多いからだけど、児童書作家は逆で90歳でも現役だった(ダイアナウィンジョーンズとか)人はザラだ。

児童書

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人より苦労したからって、人より幸せになれるわけじゃない。

私の仕事は概ね個人プレーだ。

自営業とか歩合制の仕事ではなく、いわゆるサラリーマンではあるので、上司というものはいるのだけれど、複数ある自分の担当の案件それぞれに、別の上司がついていて、包括的に私が何をやっているか分かっている人はいない。

ついでに言うと、人によって、やっている仕事も異なるので、上司や先輩に仕事を聞いたとしても、分からないと言われることもしばしばだ。

そんな状態なので、本当か

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いっそ、笑ってくれよ。このろくでもない人生を。

朝、目が覚めると、まず最初になぜだか消えたい気持ちがやってくる。
それに理由があるといえばあるし、ないと言えばない。医者は病気ではないと言うけれど、毎日「これは脳の誤作動だ。死んではいけない。今は耐えろ」と声をかける。辛いことがないわけではないけれど、この世から消えてしまうには何て馬鹿馬鹿しい理由しかない。
それでも苦しくてたまらない朝は、自分をだましだまし叩き起す。

無駄に肥大化した自尊心のた

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少女終末旅行、忘れてしまった数々の記憶

「記憶なんて、生きるジャマだぜ」

仕事に行ける日が増えてきて、あんなに嫌だった仕事が、職場で仕事をさせて貰える喜びを感じるようになってきた。そういえば、勉強させてもらえる幸せ、仕事をさせてもらえる幸せ、そんなことを、考えてばかりの人生だった。

私は東北の震災の時に大学1年生だった。入学式がなくなり、1ヶ月勉強どころか、仙台にある大学の周辺に行くことすらできなかった。
本当なら大学生だけが

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暇の悪夢

コロナが流行してからずいぶんがたつ。

図書館も書店も閉まり,家の中にあるまだ読んでいない本(いわゆる「積読本」)も恐ろしいことになくなってしまった。

やっと緊急事態宣言が解除されたと思っても,書店が開いている時間は昔より短いし,図書館は開いていると言っても,本棚を見ることはできず,もっぱら予約のみの取り扱いらしい。さらに,返却された本をすぐに次の利用者に貸し出すのではなく,一度殺菌消毒してから

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