上司の期待と部下の本音、ギャップはなぜ生まれる?
「こうして欲しい」と上司のあなたが願っても、部下がその通りに動いてくれない。
そんなときってないですか?
あなたのリーダーシップ不足が原因!?・・・ではなく、「エージェンシー問題」にその答えがあるかもしれません。
組織で必ず起こる利害対立、エージェンシー問題とは?
エージェンシー問題とは、依頼人と代理人の間に生じる利害対立の問題です。
語弊を恐れずに言えば、「依頼する側」の依頼通りに「依頼される側」が動いてくれないという問題です。
例えば、営業現場を例に考えてみましょう。
「目標に向けて、ちゃんと動けてる?」と、管理職の皆さんは部下に営業進捗を尋ねます。
部下は明るくこう答えます。
「もちろんです!頑張っています!」
いかにも純情そうなその表情に、管理職の皆さんは満足するでしょう。
しかし、心のうちは「バレない程度で手を抜こう」なんて思っているかもしれません。
エージェンシー問題が起きるのは、現場だけではない!?
これは現場だけでなく、経営層と管理職の間でも起こっています。
例えば、経営側は「売上を最大化して欲しい」と願っていたとしましょう。
多くの場合、その願いは目標達成が見えていたとしても終わることなく、むしろ、時間が許す限り、売上を伸ばして欲しいと願っているはずです。
しかし、現場はそうは思いません。
「目標達成したから今年はもうお休みだ」
こう思うことでしょう。もちろん目標達成が見えてもなお、高みを目指して働く層もいるでしょうが、決して多くないと思います。
経営と株主の間でも、エージェンシー問題は起きる!?
実はこうした利害対立は、経営と株主の間でも起きるのです。
例えば、株主は経営者に対して「株価を安定的に上げてください」と望んでいるとしましょう。
ただ、経営者によっては、別のことを考えていることがあります。
例えば、「リスクあるけど、派手なM&Aで注目されたい!」と、逆張りの考えを持つ経営者もいらっしゃいます。
企業経営ではこの通り、3階層でエージェンシー問題が起きるのです。
なぜ、こうした問題が起きてしまうのか?
さて、ここまでエージェンシー問題の具体事例を見てきましたが、皆さんが知りたいのは「なぜ、こうした問題が起きるのか?」の原因ではないでしょうか。
いくつかの原因が指摘されていますが、ひとつは「目的の不一致」が主な原因とされています。
「目的の不一致」とは、当事者間で目指すものがズレているということです。例えば「懸命に働いて欲しい」という管理職と、「少しでも楽をしたい」一般社員という構造です。
エージェンシー問題の発生原因のもう一つは「情報の非対称性」です。
「情報の非対称性」は、当事者間で情報格差がある状態です。両者が持っている情報が異なることによって、依頼人の利益を無視し、自己利益を追求する行動に出るという構造です。
ではこうしたエージェンシー問題をどう解決するのか?
大きく3つの解決策があります。
① モニタリング:要するに行動を監視するなど
② インセンティブ:業績連動型報酬などを設計するなど
③ ペナルティ:やってはいけない行動をルール化するなど
経営や人事としては、これらを組み合わせながら設計することが大切になってきます。
2人以上が集まり、共通の目的を持つことができれば、それはもう組織です。しかし、組織になった途端、エージェンシー問題が起きる可能性が出てきます。
そのとき、適切に対処ができるかどうか。これがリーダーの腕の見せ所ですね。
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