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リリカル・スペリオリティ!

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上野周辺を舞台にした、「悪魔」VS「公安警察」のお話を書いてみました。 【あらすじ】 1980年代後半、突然の好景気に沸いた日本。人々の欲を掻き立て、不動産や株価が跳ね上がった… もっと読む
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リリカル・スペリオリティ! #1 「悪魔ちゃんは、新宿に住んでいる」

リリカル・スペリオリティ! #1 「悪魔ちゃんは、新宿に住んでいる」

(※こちらの作品は、創作大賞2023 イラストストーリー部門の応募作です。募集内容・お題のイラストはこちらで確認できます。)

あらすじ第1話 悪魔ちゃんは、新宿に住んでいる
1.

 今日だけでもう10人目だ。
「ねえ、あの茶髪でポニーテールの女…の人が持ってるバッグって、人気なの?あの柄のバッグとかお財布持ってる人、結構見るんだけど…」
 電車のドアにもたれながら、キャラメルなんとかホイップフ

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リリカル・スペリオリティ! #2 「若きチェイサーの悩み」

リリカル・スペリオリティ! #2 「若きチェイサーの悩み」

第2話 若きチェイサーの悩み※前回までのお話はここから

1.

 岸谷華蓮は動かない。いや、動けないが正しい。
 東京都北区の自室のアパートで、かれこれ1時間、机の上のパソコンに向かっている。
 「今月も特に収穫なし」という文言をどうにかこうにかいい感じに語彙を変えて上司に報告できないものかと考えあぐねているが、ないものはない。
 さっき淹れたと思っていたコーヒーはとっくに冷め、網戸には雨粒がつ

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リリカル・スペリオリティ! #3 「佐藤リリカの憂鬱」

リリカル・スペリオリティ! #3 「佐藤リリカの憂鬱」

第3話 佐藤リリカの憂鬱※前回までのお話はこちら

1.

 佐藤リリカは激怒した。ペットボトルを捨てるのに、本体とラベルを分別しなくてはならないことに。
「なんっでいちいちラベルを剥がさなきゃいけないんだよ!だったら最初からラベルなんか付けるな!」
 2Lペットボトルからラベルを剥がし、プラスチックゴミ用の袋に捨てた。袋の中でラベルの粘着質がくっついて、さらにイライラする。
「仕方ないですよ、新

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リリカル・スペリオリティ! #4 「ダブルフェイスの精度」

リリカル・スペリオリティ! #4 「ダブルフェイスの精度」

第4話 ダブルフェイスの精度※前回までのお話はこちら

1.
 「佐藤リリカ」。1ヶ月ほど前に上野桜丘高校1年C組に転校して来た女の子。母親は日本人、父親はアメリカ人、双子の兄が1人。転校前はアメリカの日本人学校に通っていたが、両親の仕事の都合で日本へ。
 海外から転校して来たとはいえ、高校1年生の、しかも新学期に転校生が来るのは珍しい。入学前に挨拶に来た際は、忙しい両親に替わって双子の兄が来たと

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リリカル・スペリオリティ! #5「謀りごとは授業の後で」

リリカル・スペリオリティ! #5「謀りごとは授業の後で」

※前回までのお話はこちら

第5話 謀りごとは授業の後で「リリカ、どこで描いてたのー?」
 美術の授業が終わるまで、あと10分になった。そろそろ美術室に戻ろうと、校舎に向かっていたところで園子と合流した。
「正門の近くで、校舎を描いてたの」
 体が少し汗ばんている。梅雨のジメジメとした空気の中、真剣に描いていたからだろう。
 園子が見せて見せて、と画用紙を覗き込んできた。今日は下書きだけで終わって

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リリカル・スペリオリティ! #6「ドッグカフェ・トラップ!」

リリカル・スペリオリティ! #6「ドッグカフェ・トラップ!」

※前回までのお話はこちら

第6話 ドッグカフェ・トラップ!
1.

「あー犬ってかわいーなー」
「ちょっと、リリスさん、心の声漏れてますよ!そりゃ犬は可愛いですけども」

 サタンがリリスから呼び出しを食らったのは、電車に乗って帰宅している時だった。
 高校からの帰り道、電車の窓から流れる景色を見ながら、「今日の夕飯は何にしようかな」などと考えていると、制服のズボンに入れていた携帯電話が鳴った。

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リリカル・スペリオリティ! #7「悪魔の足音」

リリカル・スペリオリティ! #7「悪魔の足音」

※前回までのお話はこちら

第7話 悪魔の足音 華蓮が佐藤リリカの尾行に失敗してから、6日経っていた。その間、華蓮は2週間分の洗濯物を3日に分けて洗い、学校がある日は特に用がなくても1年生の教室の前をゆっくり通り過ぎたり、あの季節外れの桜を観察したりしていた。もちろん、高校教師としての勤めを果たしながら。
 しかし、教室の外から一瞬見えた佐藤リリカは、同級生と笑い合い、授業を真面目に受ける高校生の

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リリカル・スペリオリティ! #8「ある午後の『いつもの』教室にて」

リリカル・スペリオリティ! #8「ある午後の『いつもの』教室にて」

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第8話 ある午後の『いつもの』教室にて リリカが尾行をまいてから6日が経っていた。
 あれから毎日、学校に行く日は通学経路を変えていたが、特に変わったことは起きなかった。今日の朝も、いつもと逆回りの山手線に乗って学校に来たが、尾行されている様子もなかった。
 …今日からまたいつもの経路で帰ろう。
 リリカは教室の自分の椅子にもたれかかると、手足をだらんと伸ばした。ここ数

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リリカル・スペリオリティ! #9「悪魔ちゃんの生理事情」

リリカル・スペリオリティ! #9「悪魔ちゃんの生理事情」

※前回までのお話はこちら

第9話 悪魔ちゃんの生理事情 6時間目の英語の授業が終わると、リリカはすぐに女子トイレに駆け込んだ。
 今月もついに来たか…。
 英語の授業中に、嫌な予感がしたのだ。人間生活も2ヶ月目になると、勘が冴えてくる。
 人間の女として暮らすのに、一番厄介だと感じているのが「生理」だ。
 毎月約7日間、股から血が出る。通常の下着では対応できないので、2〜3時間で取り替えるナプキ

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リリカル・スペリオリティ! #10「『毎日投票制度』、始まる」

リリカル・スペリオリティ! #10「『毎日投票制度』、始まる」

※前回までのお話はこちら

第10話 「毎日投票制度」、始まる「どうも!文化祭運営委員会でーす!」
 教室に戻ると、見たことのない顔の生徒が2人、黒板の前で話していた。喋っているのは男子生徒で、女子生徒は何かを持っている。

 リリカは、教室の後ろからそろーり、そろーりと自分の席に戻った。
「どこ行ってたの?大丈夫?」
 隣の席から、園子が心配そうな顔をしている。
「うん、ちょっとトイレ…」 
 

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リリカル・スペリオリティ! #11「夕暮れのフラペチーノ」

リリカル・スペリオリティ! #11「夕暮れのフラペチーノ」

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第11話 夕暮れのフラペチーノ 翌日の学校帰り、リリカは園子に連れられ、上野公園のカフェで新作のフラペチーノを飲んでいた。
 なんでも、「ピーチウィズレモンインヨーグルトフラペチーノ」とかいうフラペチーノが、期間限定で今日から発売らしい。園子はレジで一言も噛まずに注文していた。

「今日も暑かったね〜。体が溶けちゃいそうだよ〜」
 テラス席で、園子はフラペチーノの上に乗

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リリカル・スペリオリティ! #12「滑り落ちる者、掬う者」

リリカル・スペリオリティ! #12「滑り落ちる者、掬う者」

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第12話 滑り落ちる者、掬う者
1.

 「毎日投票制度」の開始から1週間が経った。
 リリカと園子は、相変わらずミスコンの票を毎日入れ合い、各々5票ずつ獲得していた。

「今日はついに福士紘太先輩が溝口潤先輩の票を追い抜くかな!?う〜んドキドキする!」
 昼休み、園子の開口一番の話題はやはりミスコン関連だった。
 園子は毎日更新される投票結果を確認し、ミスコンとミスタ

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リリカル・スペリオリティ! #13「『認められたい』君へ、処方箋」

リリカル・スペリオリティ! #13「『認められたい』君へ、処方箋」

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第13話 『認められたい』君へ、処方箋1.

「待って、佐々木くん!鍵落としてる!」
 廊下を行く佐々木の後ろ姿に向かって、華蓮は大きな声で叫んだ。
 佐々木が立ち止まり、こちらを振り返った。
 廊下を走ってはいけないので、小走りで佐々木に駆け寄る。
「これ、職員室のドアの隙間に落としてたよ」
 鍵を差し出すと、佐々木は驚いた顔で受け取った。
「あ、ありがとうございます

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リリカル・スペリオリティ! #14「君は友達」

リリカル・スペリオリティ! #14「君は友達」

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第14話 君は友達「はー、今日も一日乗り切ったね!」
 園子はあくびをしながら、自分の席で伸びをした。
 放課後の教室。リリカや園子など、部活に入っていない生徒は少なく、教室に残っている生徒は数人しかいなかった。
「そろそろ帰ろっか。リリカ、今日は図書館で宿題やっていく?」
「うーん、今日はいいかな」
 今日は「あくまちゃん」の新作グッズが発売される日なので、リリカは早

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