17歳

大紅蓮地獄

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架空の速い虎

焦げついた足跡だけを残しゆく光に近い輪郭の虎 チューブから出しっぱなしのイエローは今も速度を落とさずにいる 足音が2、3、遅れて4歩目は更に遅れて月光が差す 憧れをあしらえた肉球と牙と光線銃の撃鉄 まつげからはみ出さないで涙まで追い越さないで離さないで 凍りつく一歩手前で光る爪触ったことを思い出す夢 願い事聴く耳持たぬ流れ星あなたのひげのカーブにならう まばたきを耐えたいのだってちょっとでも残していたい陽性残像 忘れた 走る理由も速い理由も思い出すのをやめた理

    • 映画「窓ぎわのトットちゃん」の感想、子供の背中の汗の丸い跡

      個人的な整理のつもりでざっくり書きます。 ネタバレありますのでご注意ください。 背中の汗の丸い跡。これが何なのかというと、トットちゃん含め子供達が校庭で遊びまわった後に、背中に浮かび上がるグレーの汗染みのこと。これをアニメで描くんだ!という驚き。その驚きは、新しい気づきというよりも思い出されたことへの驚きで、周りに小さい子がいる人は分かりやすいだろうか。私も年の離れた妹や従兄弟がいるので、すぐに思い出した。背中の汗染みの丸いこと丸いこと。もし羽が生えてくるとしたらその位置し

      • ワールプールフールガールズを整理するための長めのツイートという体

        ワールプールフールガールズについて。私がこのコミュを好きな理由の一つにその多層的な構造があると気づいた。このコミュの軸として「ノクチルの解散」「借りたものの返却」その二つの物語の下に「タロットカード《世界》の暗示」が潜り込んでいる。この三つはそれぞれ現在→未来、過去→現在、過去→未来?(ここは微妙、未来→だけかもしれない)の時間の幅を伴っていて、それに対する回想やキャラクターの語りが物語の合間に挟まれる。その時間の移動や語る場所の変化がかなり複雑さを生み出しており、それぞれが

        • 試刷

          白い浜辺 うなじを旅行する 平日に見た夢 海浜公園のブランコで 犬と遊んだ その犬は黒い毛並みで 瞳も黒かった まるで黒猫みたいだった 少し歩いてみる 街路樹とすれちがっていく 耳鳴りのような葉音に 心はざわめいた わたしは海沿いの道を歩いていく 潮風が頬を撫ぜるから 髪が揺れる 海辺の街には 波の音しか聞こえない そう思っていたら 遠くの方で人の声がした 目を凝らすと 砂浜に人がいて 楽しそうな笑い声をあげている わたしはそちらに向かって歩きだす 砂に足を取られながら ゆっ

        架空の速い虎

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          生きてるよっていう手紙

          「ほんとは白いテーブルが欲しかったの。」 「あなたといると台パンが優しくなる。」 「今のテーブルは強いけど、私の好みじゃない。」 「捨てるつもりはないよ。新品で買ったもの。」 「そんなこと言ってない。」 「言わなくても分かるよ、君も得意だろ。」 「ちいちゃかった頃ね。恐竜が好きだった頃。」 「パラサウロロフスの歌だろ。」 「懐かしっ。」 「もう忘れたけどね、サビ以外は君が作った。」 「Cメロも私が作ったよ。器用さが売りなの。」 「は?意味わからん。知らんし。」 「

          生きてるよっていう手紙

          蛾の標本

          俺は今すごく頭が痛くて具合が悪いのに、ぴかぴかのオレンジの服を着てサンダルを履いているせいで陽気な感じになってしまっている。 つよい風 よわい風    よわい風でも耐えて 夏に鳴くセミって本当は一回も見たことがない気がする ホッキョクグマと同じくらいの時期に絶滅した気がする いつま でわた しは ここにい られる? 蛾の標本を見つめる あなた へ あなたのことが好きな訳ではなく、あなたの周りの空間に恋をしている あなたが両腕で作った円の中心は、甘い味がすると思う 靴

          蛾の標本

          ocean blue

          俺はまだ海を見たことがない 海に似た人形を抱きしめている 波をひきずりながら歩いていく 雪が降りしきる午後を思い出す (to be the continued…) (to be the animal hamaguchi…) さよなら、また会おう こんにちわ、初めまして 一回ずつボールに言う ちゃんと飛んでいけますように これは素振りの練習 白いマスク越しに見る 限りなく黒に近いほっぺた ・ハイハイン ・マミーポコパンツ ・コンデンスミルク 赤に近すぎて黒に見える

          ocean blue

          オレンジに透けている

          5月28日(土)  堂々と晴れている。高校の体育祭で見た応援団長を思い出すくらい晴れている。ただちに石を迎えに行かなければならない。いや、出迎えというよりも捜索といった方がいいのか、まだ分からないが、昨日の土砂降りで完全に水の中にいた石たちがあの場所から動かなかったとは考えにくい。もし流されていたとしたら。もう一度会うことは。あの日した約束は。それ以上の言葉は飲み込んで、まずは多摩川に向かうことにした。  立川駅南口から多摩川までの道のりはなんのてらいもない直線。直線

          オレンジに透けている

          オレンジに透けている

           石を送り迎えすることにした。多摩川と私との間で。  先日、多摩川に石を拾いに行った。大学の課題のために。課題の内容は8ページ以上のブックレットの作成で、そのテーマとして「石」が提示された。ブックレットというものが何なのか私にはよく分からなかったが、講師に説明を求める胆力もないので、私は多摩川に行くことにした。行くことにしたといっても私が決めたわけではなく、「多摩川に石を拾いに行こう」という友達の提案に便乗した形になる。能動的な姿勢が欠如した自分にはこういう友達の存在は

          オレンジに透けている

          完璧な風

           凧揚げをしようと思って、3ヶ月くらい経ってしまった。受験が終わったら凧揚げをしようと思っていたのに誰も誘えなかった。大学生になってしまった俺には、もう凧はあげられないのかもしれない。そういうことを思いながら学食の毛糸玉のような唐揚げを食べていた。 (1週間前) 生乾きのズボンでバイトに向かっていると、道を通る野良猫にも煽られているように感じるのは、今が春と梅雨のちょうど間にあたるからでしょうか。  新しく友達ができたので、凧揚げに誘ってみると快く承諾してもらえた。しか

          完璧な風

          曳波

          ・誰かと話している声はまるで歌っているようだった 今日天気悪くないですか?エー・アァー・ヤ・・ソーです、そこから先がまだ分からなくて。・例えばなんですけど、「再会」「鳥肉」とかは・テンテン・ツー・ラー・<休符>・・・そうですよね、いや、こちらもすぐに肯定的になってしまったので。ンー・あ、ビッグマックのことですか?あ、違うかスーッ・ッフ・あ、聞こえてますか?大丈夫です、あの、声はもうちょっとよく分からないんですけど、でも、ちゃんと何を言っているのかはわかりますよ。ただ、声がち

          船の上で書いた手紙

          ここからは難破船である トイレットペーパーの芯を! トイレットペーパーの芯を! もうそれくらいにしときなよ…ほら、鯨の歌だよ …そういってリンドバーグは帰らぬ人となった。 だから今日も、トイレットペーパーの芯を食べる そんな僕の歌を聴いてください。 「街ブラリポート開始!こちらはすべての間を吹き抜けてきたかのような疲れ切った風が吹いています!」 「こちら高円寺チーム!こちらにはさっきまで花が咲いていた」 「あ!今そちらに風が向かわれたようです!ヘドを吐いていまし

          船の上で書いた手紙

          ひからびる前に見た

          ◯天国について想像することがある。自分が死ぬまでのこと、死んだ後のことを想像するのが、そのイカの趣味だった。趣味はそれだけで、それ以外のことは生きるために最低限必要な食事と排泄、そして睡眠。そのイカは変わりものだったから、縦になって寝た。マッコウクジラと同じように縦になって寝た。 ◯イカには家族が一人いた。同じような色と、同じような模様をしていた。その模様はイソギンチャクのようだとよく他の生き物に言われた。イカはイソギンチャクを見たことがなかったので、馬鹿にされているこ

          ひからびる前に見た

          遷音速の虎

          虎とチーターは未だ出会うことなく、互いの周回軌道のほんの僅かな重なりに気づくことなく、ただ互いのことを、星空の内の尊い一粒だと誤解したままでいる。 “光線”という名の平凡なチーター 音の速さをこえた、ものすごく速い虎 星降綱火 毛の流れに逆らうように、僕はうなじを泳いでいる、いつか産み落とされたオレンジの卵たちの中の一粒、電線が風にもたれた時のような曲線を、客観的に描いていた reflect(and search)ある日、家中の鏡を割った すると、その破片がきらきら

          遷音速の虎

          ビニール袋が転がるリズム

          ⚫︎白緑白緑白緑白 そういうリズムの歌が聞こえる? ⚫︎せんを抜くシャワールームが冬に近づく ⚫︎加湿器のそういうところが嫌いだよ ⚫︎踏みつけるクジラの声で鳴いている レインブーツのゴムのささくれ ⚫︎ハンバーグ叫ぶあなたの横顔よ ⚫︎また会おう来世はクジラかアイドルで ⚫︎氷点下の下のさらに下にある …まだ下にある僕の湯たんぽ ⚫︎これからもずっと隣にいてくれる? 出しっぱなしの扇風機に問う ⚫︎ビニールが転がるリズムを風が追い抜く 

          ビニール袋が転がるリズム

          健やかに生まれない

          ◯悲しくて爽やかだった人の夢 ◯電車の中で破水した。急いで来ていたジャケットを被せて、病院に電話をかけた。そんな自分に驚いた。 ◯まるでなにも気にしてないように笑う人。とても軽やかだったから、その軽やかさはどこから来たものなのか聞くことができなかった。 ◯「彼女、夫から暴力を受けていたらしいですよ。これじゃあ妊娠したのも合意があったのか怪しくなる。」 ◯ベランダがよく似合う人だった。 ◯「残念ですが、胎児たちのことは諦めてもらう他ありません。」  「そうですか、分か

          健やかに生まれない