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これは本当に正しいことですか?

お久しぶりです。

前回の記事にもスキ、コメントありがとうございました。
あっという間にnoteを始めて2ヶ月。

1週間に1回更新も
ままならないような忙しない日々を送っています。

コメント少しずつ返しています。
遅くなってしまってごめんなさい。
丁寧に返したいと思います。





先日、母の誕生日でした。

朝5時に娘が起きたタイミングで
家族のグループラインでメッセージを送りました。
そのあと、続けて姉も送っていました。

2人からのたった一言のメッセージに
「ありがとう お母さんは幸せだよ」
と返事があり、胸がギュッとしました。

一緒にいたときはあんなにケンカしたのに。

誕生日プレゼントは帰省した時に渡しました。
欲しいと言っていた日傘を。

渡した後、
家の中で何度も傘をさしていました。
嬉しそうに、何度も、何度も。

母は小さなことに幸せを感じたり
感謝できる人だと思います。
そんな人になれたらいいなと思う日々です。





お盆に帰省した時に
自分の通っていた看護学校の横を車で通りました。

懐かしいなと思いながら、
昔、看護学校の先生が話してくれたエピソードを思い出しました。

今回はそのお話を。






看護にはマニュアルがある。

この処置をするときには
この物品を準備して、
この流れで実施するという基準手順である。

これがあるのは、
一貫した看護技術を提供するためだ。

もちろん個人差があるため、
例えば、温かいお湯がいい人には
マニュアルにかかれてある温度より高めにしたり、
適宜対応を調整している。

しかし、多くはこのマニュアル通りに行う。

そして後輩は先輩の真似をする。
先輩がやっていることは正しいと思い
いい意味でも、悪い意味でも、
自分の看護を省みず、”前ならえ”看護をすることもある。






老人保健施設で実習をしているとき。


昼間、多くの利用者さんが
車いすに乗り、デイルームに集まっている。
食事もそこでとるようになる。


一方で、ベッドで寝たきりの利用者さんもいる。
経口摂取ができない方は、胃瘻から栄養を投与する。

胃瘻とは、皮膚と胃の内部を繋ぐトンネルのことである。
嚥下機能が低下して口から食事をとることが難しくなった方を対象とした医療処置で、この瘻孔の中にカテーテルという管を通して、水分や栄養剤、薬剤を直接注入する。

多くのマニュアルには、胃瘻から栄養を投与する際
ベッドの角度を最低でも30度~60度にあげて投与と書いてある。
逆流するのを予防するためだ。





私の一つ上の学年の先輩は、
胃瘻が造設されている利用者さんを受け持っていた。

ただ、その利用者さんは
寝たきりではなく、車いすに自分の力で座ることができていた。

しかし、食事の時間になると、
デイルームを離れ、自室に戻り、ベッドに横になって待っていた。
そこに看護師が栄養剤を持ってきて
ベッドの角度を60度に設定し、栄養の投与を開始した。



正直、私が看護学生の時であったら
この光景に疑問を持つことはない。




しかし、先輩は疑問に思った。

「どうして座っていることのできる利用者さんが
 ベッドに横になって栄養を投与しないといけないのですか」
とカンファレンスで述べた。

看護学校の先生いわく、
その一言に誰もが息を吞み込んでいたらしい。


先輩の言う通りである。
胃瘻=寝たきりの方という固定概念があり、
誰も方法を変えたり、考えたりすることがなかったのだ。

正しいと思っていたことが
決して正しいことではないことに
先輩の一言にみんなが気づいた。



一年後、
私がその老人保健施設に実習に行くと、
その利用者さんは
車いすに座り、テレビを観ながら笑っていた。
その横には点滴棒に栄養ボトルがかかっていた。


「あの先輩のおかげで、
 この利用者さんは1時間ベッドの上で
 天井を見続けなくて済むようになったのよ」
と先生は話した。



マニュアルが間違っているわけではない。
ただ、マニュアル通りが正しいわけではない。
その看護が本当に正しいのか疑問に思うこと。

そしてその疑問を
何十年も看護師をしている相手に伝える勇気。

先輩が気づかなければ
1日3回、3時間
利用者さんはずっと天井を見つめていたことになる。

ただただ 私はその先輩がすごいと思った。









この夏、実家に帰ってよかった。

大事なことを
思い出させてもらえたような気がする。




ご覧いただきありがとうございました。
こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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