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『遺体』ブックレット
一、バトゥミに浮かぶ
終わっていくのを見ていました。
何も憎まないように過ごしてきました。薄く引き延ばされた時間のなかに、ほんの少しの愛らしさを見つけて暮らしてきました。
だからどうか、わからずにいて。理解しないでいてね。
ここはバトゥミの港湾、望む黒海。
逆転する画にわたしのからだは透けて。
ジェットコースターの行き着く先で待っていてね。抱えきれないほど大量の時間とともに、会いに行
きみは地獄をとりもろす
ぼくたちはいつもちゃんと死にたかった。
写真におさまるほどの画角の中で、息が詰まる、真空、花火の爆発、星が生まれるとき、ぼくの静電気がきみの指先に伝わる瞬間、カーブを曲がりきれず落ちていく時間、観覧車から覗く、あまりに、あまりにも暖かな光の東京タワー、そのすべて、余すところない一瞬のなかで、ぼくたちは死にたかった。
人間としての不全を振りかざして沈む地獄は心地よく、だからぼくたちは生きていら
「とりとめのない」台本
「映画」
憂鬱な坂道を、みみずが進んでいく
どれだけ悪いことをしたのだろう
砂漠で傘をさす、割れた花瓶に水を注ぐ
意味のないことを積み重ねて
地下鉄の空気にやられて
終点の、自動販売機の灯りに跪いて
鉄の味を
何も知らず生きていくだけで、どうしてこんなにも痛いのだろう
守りたいものは、いつもどうして見えなくなるのだろう
ここはとても寒くて、ついには、あらゆるものが凍ってしまった
時間が止まってし
供養の会「風邪をひいてうなされている時に見たとってもエモーショナルな夢」
そこは何処かの高校の校庭だった。秋の終わり、少し曇った鈍い空気の漂う夕暮れだった。
僕は校庭の端っこの銀杏が立ち並ぶ所に一人座り、味の無いガムを食べながらただボーっとしていた。地面が見えない程の落ち葉が僕の周りを円状に囲み、少し風が吹くとカサカサと音を立てる。
校庭の入り口近くにはバレエダンスを踊る制服の女の子の集団がいて、そこから少し僕に近い所、落ち葉の円の外側にはブランコに乗った同じく制
供養の会「まち針の季節」
一年の焦燥はたった五秒の決断で打ち砕かれた。私が行き先の分からぬバスに揺られている理由は、ただそれだけ。失恋旅行なんて俗っぽいモノ、嫌ってたのになあと思いながら、今はそんな俗っぽさがぬるま湯のように心地良く感じてしまう。窓から見える銀杏がそれを肯定するように連なる。
隣の席の男子高生はしきりにメールを打っている。幼い横顔が文豪に見えるのは、きっとそれが愛を囁くメールだからだろう。
私は男子高
供養の会「la mars」
放課後、美化委員会の教師に教材室の掃除を頼まれた。ニヤケ顔でお願いする中年教師の顔が、この子は断る術を知らない、と言っているように見えて不愉快だったけれど、やっぱり私は何も言えなくて、喉から言葉が出なくて、目を反らしてうなずいた。その横を一瞥もくれず歩き去る委員の子達は、私の存在など一瞬も頭に入れず、それぞれ帰り道の秘密を考えていたに違いない。
掃除用具を運びながら歩く廊下の床の温度が冷たく感
供養の会「to kaho」
きみの偽物を見た。
六月だった。
デパートの屋上にある小さなメリーゴーラウンド、その隣のベンチで、おおきなクレープを食べていた。雲は妙に粘ついていて、まるで脂肪の膜のようだった。飛んでいた飛行機が絡め取られて、もがきながら落ちていくような気がした。
十月にも見た。
公園の砂場で、蟻の巣をじっと見ていた。ピクニックに向かう幼稚園児たちが、その横を通り過ぎていく。並べられたドミノのように整然