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移民問題の闇ーー「技能実習制度」は「国の恥」

▼「ジャケ買い」というか、「タイトル買い」してしまう本がある。ここ10年で印象に残ったタイトルには『自殺する種子』という新書があった(安田節子『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』平凡社新書、2009年)。

種子なのに自殺? とてもショッキングなタイトルだった。「ターミネーター・テクノロジー」という技術を使って、自殺するように開発された種子があり、その種子を使って大儲けしている大企業の話だ。

移民問題については『外国人研修生 時給300円の労働者』というタイトルが衝撃的だった。(外国人研修生問題ネットワーク、明石書店、2006年)

▼毎日新聞の「縮む日本の先に 「移民社会」の足音」が面白い。2018年11月17日付では〈出稼ぎ 日本より中東/ITも人手不足に〉の見出しがよかった。フィリピンから出稼ぎで海外に出る人は、6割が中東へ行く。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートの順で多い。〈日本は香港やシンガポールなどに次ぐ7番目だ。〉日本から祖国に戻ったものの食べていけず、さらに第三国に流れる人もいるそうだ。

▼11月21日付では技能実習制度の歴史がコンパクトに要約されていた。

〈1993年に「途上国への技術移転」を目的に導入された技能実習制度。だが、国策上「外国人労働者」を認めない日本において、制度は「安上がりな労働力確保策」に成り代わった。労災事故、賃金未払い、不当解雇、パワハラ、そして失踪……。実習生と受け入れ先とのトラブルが続出し、米国務省の「人身取引報告書」(18年)は「事実上の出稼ぎ労働制度」と指弾した。ある入管OBも「国の恥をさらすような運用の横行を許してしまった」と反省する。

入管OBの証言は重要だと思う。この記事でも報じられていたような悲惨な事例が後を絶たない。いい業者もいるが、悪い業者が多い。

▼技能実習制度の問題は、根深いと思う。問題の底には「移民」への徹底した蔑視がある。以下は北原みのり氏の最近のコラムから。

〈4年前の冬、私は3日間留置場に入れられた。あのときまで、留置場に拘留されている女性の8割が外国人であることを(少なくとも私がいた東京湾岸署は)、私は知らなかった。その多くが不法滞在の中国人だった。それでも中国語をしゃべる職員は一人もおらず、一日一度回ってくる書籍に中国語のものは数冊しかなく、そのほぼ全てがすり切れるように読まれていた。/ある日、同じ部屋にいた中国人女性に職員が何かの紙にサインするよう、鉄格子越しに指示をしていた。日本語で大きな声で。彼女がわからない、という顔をすると、職員は怒鳴るように日本語で大きな声で同じことを繰り返す。たまりかねてそばに行き書類をのぞき込むと、裁判で通訳が必要かどうか、何語の通訳が必要かを尋ねる日本語の書類だった。横から「ここに〇つければいいよと指を出し彼女を促すと職員は私に叫んだ。「手伝うな!」と。〉(「週刊朝日」2018年11月30日号)

▼この島国で、資源もないし食料自給率も低いこの日本で、周辺諸国から恨みを買うような振る舞いを撒き散らして、どうやって生きていこうというのだろう。入管OBが感じた「国の恥」は、入管だけの問題なのだろうか。

(2018年11月23日)

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