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入管が「おとり捜査」に民間人を使い、兵庫県警に黙っていた件(その2)

▼前号の続き。兵庫県警は中国籍の社長を逮捕して、送検したが、神戸地検は拘留請求をせず、すぐに釈放した。県警の話。

〈県警の捜査関係者は取材に「入管側から、会社との事前のやりとり内容までは伝えられていなかった」と明かし、「(要請が)事実であれば、入管が犯罪行為に加担したとの指摘を受けかねない。地検はそうした事情を考慮して勾留請求見送ったのでは」と話す。〉

▼中国籍の社長を起訴すれば、大阪入管が犯罪の共犯者ということになるわけだ。神戸地検の関係者のコメントはない。

▼朝日新聞の2019年6月10日配信の続報に、社長のコメントが載っている。

〈派遣会社社長「要請なければ絶対しない」 不法就労問題〉

〈技能実習先から逃げてきたベトナム人を就労させた疑いで逮捕された兵庫県尼崎市の人材派遣会社の社長が、入国管理局から採用要請があったと主張した問題で、2日後に釈放された社長本人が9日、朝日新聞の取材に応じた。社長は「要請がなければ(雇用は)絶対しない。危ない橋は渡れない」と語り、入管側との詳細なやり取りの記録もあると明かした。〉

〈取材に応じたのは中国籍のソニンバヤル=通称・五十嵐一=社長(35)。不法残留などのベトナム人7人を工場に派遣した出入国管理法違反(不法就労助長)容疑で3日に兵庫県警に逮捕された。翌日、弁護人が会見し、大阪入国管理局(現・大阪出入国在留管理局)からベトナム人の採用要請があったと主張。神戸地検は勾留請求せず、社長は5日に釈放された。

 社長側によると、昨年6月にベトナム人約10人の応募があった際に入管に相談し、在留カードの偽造が判明。入管側から「一網打尽にしたい」と積極的な採用を要請され、入管が同年9月に一斉摘発するまでの間に追加採用も含めて計約30人を雇ったという。要請時の状況について、社長は「大阪入管の5階で担当者2人に会った。その後に幹部も出てきた。『協力して下さい』と言われた」などと述べた。〉

▼この社長が嘘をつくメリットはないと思う。

しかし、なぜ大阪入管は兵庫県警や神戸地検と情報を共有していなかったのだろうか。不思議だ。移民国家の歪(ゆが)みが浮き彫りになった事件であり、続報を知りたいところだ。

▼筆者はこの新聞記事を読んで、二つの映像作品が思い浮かんだ。

一つは、笠原和夫氏の脚本による「県警対組織暴力」である。今はじつに便利な世の中で、この傑作がネットで300円払えば見れるようだ。

タイトルが出るまでの冒頭の数分間は、菅原文太兄貴演じる刑事が、チンピラたちを飼いならす見事なシークエンスで、これだけでも300円払って見る価値があると思う。

有名な「仁義なき戦い」に並ぶ傑作だが、暴力描写と性描写が嫌いな人にはオススメしない。「警察はヤクザを使い倒してきた」という歴史を認識するのに有益な映画だ。

▼もう一つは、NHKの「外事警察」。映画も含めて脚本は古沢良太氏がかなり苦労して仕上げたそうだ。警察が「国益」を水際で守るために、狙った人間を「追いつめ、取り込み、使い倒す」一部始終を描くドラマである。

(2019年6月12日)

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