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儚いからこそ苦しい、愛とはどこまでも利己的なもの。NETFLIX 「彼女」見た感想

とても他人事とは思えませんでした。

終始刺さりすぎて涙がとめどなく溢れてきました。

この儚さこそが、
同性愛の苦しみやよな…って

私も大学の頃に好きになって
ほんのひととき付き合った女の子が
人生で1番愛した人で、
あの時を超える経験はもうできないと
思っています。

苦しくて苦しくて苦しくて、時々幸せで、
何度も2人だけの世界になればいいのにって
夜に駆けるように消えようとしました。

誰にも秘密で
誰にも知られずに
自分だけの手で彼女を抱く時、
優しく彼女の肌に触れる時、
どれだけ今この時が止まって欲しいと
この瞬間が一生続いてほしいと
そう強く願ったことでしょうか。

噛み締めるようにその幸せを抱いて
毎日刹那的に生きていました。

2人でいる時間がかけがえなくて
言葉にはできない満たされた幸福感の中
ケラケラ笑い合ったことが
あんなにも、まるで宝石のような時間だと
感じたのはどうしてなのか。
それは、
儚いものだと分かっていたからなんだなって
今思えば分かります。

いつか終わる私たちの関係は、
こんなにも幸せなのにいつも悲しくて
不安でたまらなくて、
楽しいのに毎晩泣いていたあの頃。

たった2人誰も知らないところで
生きていたいって切実に思っていました。

水原希子ちゃんの全ての姿に
思わず自分を重ねてしまいました。

共感しかなかったです。
これはマイノリティのための作品だと感じました。

何もかも捨ててもいいから、
全てから解放して奪ってやりたいって
本気で思っていたこと、
思い出したらもう涙が止まりませんでした。

男の子と付き合って平穏な今が
どれだか幸せだとしても、
あの頃の感情はこういう映画を
きっかけに、ふたたび溢れ出すのだと、
改めて感じました。

特に印象的なシーンは
家族に見つかって、希子ちゃんの覚悟を感じて
逃した兄嫁の言葉。


あなたは誰のためなら人を殺せる?
私はあなたや子供のためなら殺せるよ。
あの子は何のために人を殺したと思う?
あの子は覚悟持って
"殺すこと"を選んだのよ!



それを聞いた瞬間、
あぁ、この世は綺麗事で塗り固められた世界なんだなって、なんだか深いため息が出ました。
ひどく心に刺さりました。

そういや昔うちの父親も、
「家族のためなら俺は何だってする!
殺すことだってするぞ!」

悲惨なニュースを見て怒った父が
本気の目をして言い放ってました。
父の言葉にこれは嘘なんかじゃないと
重みを感じた私は、
あぁ、私は本当に幸せなんやなぁって
子供心に思ったのを覚えています。

好きな子のためなら人を殺せるかって言ったら、それは分からないけれど、
その子にとって世界に自分しか頼る人がいなくて、一生2人きりになれるのならば
あの頃の私はなんだってしたと思います。


愛とはどこまでも利己的だと思います。


相手のためだと信じてとった行動は、
結局本当は自分のためなのです。

希子ちゃんが殺した本当の理由
本当の行動の源は、自分のためなんだと思いました。

そういえば「MOTHER(マザー)」の
18歳の少年も、母親の言いなりで逆らえなくて殺したかのように見えて、実は、
「お母さんが好きだったから」という本心もあることが後で分かっています。

可哀想だったからあなたを救うために殺してあげたのよ!って叫んだ希子ちゃん、でも、

「今ならこの子の世界を全て自分だけのものにできる」って、そう考えたんじゃないかなって。

"高校の頃からずっと好きで、
隣を歩きたいって死ぬほど強く願ってもできなかったあの子を今、独り占めできる"

叶わないと思っていたものほど、
手に入れたらもう明日死んでもいいって
思ってしまう気持ちはよく分かります。

男性に対してなら一瞬で冷める気持ちも、
女性に対してはむしろ燃え上がる。

私が思うに、
異性は異なる価値観を楽しめるけど
同性は価値観が同じだから共依存してしまいやすく、
沼にハマりやすいのかなって。

なんで分かってくれないの?!
って許せない感情も、つい期待してしまう
同性間ならではなのかなって。


それにしても希子ちゃんの演技には
息を呑みました。。。

彼女があれだけの体当たり演技をして
何かを世に訴えてくれるのなら、
私もセキララな感想を
ありのまま書こうって気持ちになれました。

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