子猫

書くこと、読むことが好きです。 子猫の名づけ親は、学生時代の恩師。以来、ず~と子猫を名…

子猫

書くこと、読むことが好きです。 子猫の名づけ親は、学生時代の恩師。以来、ず~と子猫を名乗っています。おばあさん猫ですが、 どこか子猫のまま、ネコジャラシたちに囲まれて、”ねこじゃら荘”でひっそりと生きています。

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どうぞ...

大切なものを誰かに差し上げるとき 「どうぞ」 チビ猫のころ、教わった 両前足のプニプニに その大切なものを載っけて、 「どうぞ」 このごろときどき思う。 猫たちも人間も、とても大切なものを 生れたときから持っていて (というか預かっていて) それは、もしかすると 小さな、石のかけらだったりして ときどき思い出しては ちょっと触ってみる 悲しいとき、口惜しいとき 体がしんどいとき 気持ちがしんどいとき 心の石っころに触ってみると ちょっとだけ丸くなっていたり 悲しいこと

    • カァ...

      燃えるゴミの収集日に よく顔をあわせた。 相手は朝ごはんの真っ最中、 黙って横を通るのも失礼かニャア で、尻尾を立ててご挨拶。 ―— おはようございます…… ―— …………(無視) 何回か同じことを繰り返して、ある朝 ―— おはようございます…… ―— カァ。            🥡 🍟 🍗 春ですニャー お天気のいい日には、お洗濯。 お日さまいっぱい🌞物干し場で ご機嫌いっぱい🍷乾杯の歌     Libiamo, libiamo, ne' lieti calici

      • 聖女と野の花

        早春の野のオオイヌノフグリ は、Veronica persica ペルシアの ヴェロニカ(クワガタソウ)。 お散歩ネコたちの鼻先がちょっと触れても 花弁はそよぎ、萌えそめた草に隠れる。 欧州猫の憧れの地ペルシア、 西アジアに生まれた花の 淡い青をイスラームの猫たちは 貴石ラピスで彩色(いろど)った。           🍃 ヴェロニカは、伝説の聖女の名。 エルサレムの旧市街、彼女は <悲しみの道 Via dolorosa>に 現在(いま)も、たたずむ(*) 。    

        • シリウスの青い花

          春先に姿を見せる青い小花 はかない風情の愛らしい花の名は なぜかオオイヌノフグリ。 オオイヌってオオイヌ座のこと? オオイヌ座の主星シリウスは、天の狼。 蒼ざめた氷の牙はトロイの勇者の槍の切先。 ホメ―ロスの戦(いくさ)の星は この冬もまた地上の殺戮を見た。 けれど、やがて現れる若い太陽の神、 『楚辞』九歌に舞う「東君」は 青い雲の衣に白い霓(にじ)の裳 青雲衣兮白霓裳   長い矢をつがえて、天狼を射る。 擧長矢兮射天狼  そのときオリオンの猟犬は秘めた嚢中から 冬中貯

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          うんぷてんぷ

          お金といっても、お銀(かね)、 銀が流通貨幣だった時代のお話です。 中国は宋の時代、 若いころから生業に精を出しそれなりに財を蓄えた老人がいました。 老人は収入の中から銀の小粒を少しずつ取り置いて、それが集まり 百両(*)ほどになると、角柱形(当時の錠前のかたち)の銀塊に 鋳直してもらうことにしていました。一個、二個…… 二個一対を赤い紐で括って、それも、いまでは八個四対。 老人は錠銀を枕元に並べ、毎晩、鈍く光る白い銀塊を撫でては ハハと笑って眠りに就くこともありました。

          うんぷてんぷ

          パ、パ、パ

          久しぶりに『魔笛』を聞いた。 モーツァルトの作曲、シカネーダー台本の ジングシュピール、台詞のある音楽劇。 パ、パ、パ、パパゲーノ 陽気な鳥刺しの声がする。 恋人が欲しくって、やっと出会えたのは 彼にぴったりのお相手、パパゲーナ。 パパパ、パパゲーナ パパパ、パパゲーノ             🐦 パ。 日本語には一つの音だけで ちゃんと言いたいことが伝わることばが たくさんあるけど、フランス語にも けっこうあって、"パ pas" も、その一つ。 最初の一歩の”歩”

          パ、パ、パ

          小さなことば

          小さなことば、 何気なく交わすことば あいさつのことば。 「おはよう」「こんにちは」 いまではあまり聞かないから ちょっと遠慮がちに 「ごきげんよう」 「ごきげんよう」は 出会えた仕合わせをよろこび いまこの時の無事を祝う 小さなことば。 昔、京の尼門跡寺の お庭先へ迷い込んだ半ノラ猫に ネコ好きの尼僧さんが教えてくださった。 「こんにちは」も「さようなら」も 「ごきげんよう」。 ハングル猫たちが出会った時は 「アンニョンハセヨ」 意(こころ)は同じ 「ごきげんよう」

          小さなことば

          クリスマスのノラ

          生れた時から飼い主のいない野良ネコでした。 兄弟ネコがミィミィ鳴く生温かな場所から 目もちゃんと開いてはいなかったけれど お母さんを探して這い出したのを覚えています。 生れたのは夏の終わり。 それからはずっと独りでした。 だから狩りのやり方を習ったことも 食べ物の探し方を教わったこともありません。 とりあえず自分より小さな生き物を 捕まえようとしましたが、 トカゲもバッタも結構すばしっこくて 十回に一回でも成功すれば、大満足。             ✨ 一度だけ大き

          クリスマスのノラ

          ロバさんと竪琴

          フランス中央山塊、 オーヴェルニュ地方の 小さな村の教会に そのロバさんはいた。 大学に入って一年目の秋、 新学年の履修登録会場には 先輩たちが詰めていて 新入生に必修や選択科目を紹介、 ついでに有益な(?)助言も。 —―《美術史Ⅰ⦆は中世建築。  近所の教会を見に行ったり、バスで遠出したり  現地見学…… 遠足が口頭試験のかわりだよ。  これに登録したら? —― 試験のかわりに、遠足?  じゃ、その…… 建築にする! 十一月初めの秋休みが終わると、 新しい学年が本格始

          ロバさんと竪琴

          おいる。

          おいる、は老いる。 黒猫だった子猫も、いまではグレイ猫。 キラキラ白髪が増える分、できないことも増える。 きのうまで、できていたのに! 何日か前, バレエの真似をしていて気がついた。 フォーキン(1880‐1942)の「瀕死の白鳥」、 作品の冒頭、白鳥を踊るソロダンサーが 左右の脚を重ね、爪先立ちでコチョコチョ移動する、 あの動きができない💦 爪先で立って、コチョ、でおしまい。 踵も尻尾も床にペタン、上体もクニャ。 でも猫語で おいる、は生いる。 昔の猫たちが使っていた「

          おいる。

          お仕事中…

          いつもの電車に 盲導犬とお連れが乗ってきた。 イヌさんは、ラブラドールレトリバー お洒落な花柄ベストが 黒い毛とよく似合う。 「お席、あいてますよ。」 「端でないとダメなんです。」 「端のお席ですよ。」 パートナーが腰を下ろすと そばに立っていたイヌさんは消えた と思ったら、座席の下で "伏せ" 。 電車の振動とともに かすかに伝わって来る温もりに ボーダーコリーのユリスを思う。             ☕🍂 ユリスは、ベルギーとの国境、 アルデンヌの森近くの農場で

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          ムカデと子猫

          夏の終わりに ムカデと出会った。 夜、ひとりでテレビを見ていたら 目の前の床を猛スピードで 走って行った。 何日かして、また会った。 (同じムカデ?) 今度は台所で、床と調理台の 細~い隙間に細~くなって動かない。 (隠れているつもり? でも、丸見えだよ) あまり動かずにいるので ほんとに足が百本もあるのか、 数えてみようとしゃがみ込んだら 相手と目が合った(?)。 ムカデは見慣れぬ生きものに、 「足、四本しかないの? ヘンなの…… まあ、どうでもいいけど、 わたし、

          ムカデと子猫

          寒(さむ)なりこぐち

          夏がすっかり終わって お月見も済みました。 〽うれし悲しや、月見の団子 食べりゃ、夜なべも、せなならん (しなければならない) こんな戯れ歌を聞かせてくれた 明治生まれの祖母猫は、秋が深まるころを ≪寒なりこぐち≫と呼んでいました —― 古い大阪ことばの響きで。 こぐち、って小口? 寒さを迎える小さな戸口? 昼と夜の寒暖の差が大きくて 羽織るものが欠かせないこのころは 夏物と秋冬物を入れ替える 衣替えの時機。 ある秋のこと、衣替えのついでに 整理整頓(?)を思い立ち

          寒(さむ)なりこぐち

          花野へ

          紀元前三世紀 江南の詩華集『楚辞』は 香草、薬草でいっぱい。 ラン、モクラン、カキツバタ、 メボウキ(バジル)、シナモン フジバカマ…… 神々の降臨を願って 巫(かんなぎ)たちが舞い歌う 「九歌」にも、水辺に香る四季の草花。 なかに唯一、香草が不在の「国殤(こくしょう)」は 国の戦で命を落とした勇者への頌歌。 原文は、七言十八句。 すべての句の四言目に配された 感動の助辞「兮(けい)」に 舞い手の身体は 躍動する。             乂 * 乂  国殤 【巫た

          ポンペイのトマトソース

          近くの農家さんのトマト、 今年はたくさん届いたから トマトソースを作ろうかニャ。 トマトソースの思い出は ポンペイ近くの小さな田舎家、 あたりに広がる小麦の畑 トマトの畑。             🍅 大学一年の春休み ポンペイの遺跡調査に くっついて行きました。 紀元一世紀の保養地で ローマの大学猫たちと合流。 イタリア猫は超ゆっくりのイタリア語 フランス猫は超ゆっくりのフランス語 そのうち、だんだんゴチャゴチャになって イタリア猫が、南仏訛りのフランス語、 フラン

          ポンペイのトマトソース

          ねこじゃら荘のネコジャラシ

          ねこじゃら荘のネコジャラシ 根元は小粋に葡萄酒色、 ボルドーの深い赤ではないけれど 村のカフェの淡いロゼ。 Setaria viridis、緑の粟。 フンワリしっぽについた実は、 芥子粒ほどの虫さんや 野の小鳥たちの朝ごはん。             🌾 大地にしっかり根を張って 株を立派に太らせる イネ科の仲間のすぐそばで ネコジャラシたちは遠慮がち。 空き地の片隅、道端で 細い根は地表に浅く もしも邪魔だといわれたら あらがいもせず場を空ける。 ネコジャラシたち

          ねこじゃら荘のネコジャラシ