「犯人を追いかけて」
幸次郎は、探偵。
今日は、外での情報収集を終えて、
犯人を探すために、壁に写真と資料を貼り付けていた。
「うーん、はてさて」
次の行動が、全く思い浮かばない。
ここから1週間前に、話は遡る。
幸次郎の探偵事務所に、1本の電話が掛かってきた。
「あのー、泥棒って探してもらえるのでしょうか」
自信なげな、か細い女性の声だった。
「どうされましたか」
「何を取られたかと、簡単に状況をお聞かせ願えますでしょうか」
一通り内容を聞いた後、事務所へ来るようにと伝えた。
二日後に、直子と名乗る電話を掛けてきた女性が事務所に現れた。
もう一度状況を確認して、契約書にサインをしてもらった。
「宜しくお願いいたします」と言われて、事務所を出て行った。
「わかりました」「最善を尽くします」と、幸次郎は答えた。
その次の日、現場検証と近隣住民への聞き込み調査が始まった。
時に目ぼしい物的証拠も見つからずに、そのまま事務所に戻った。
その次の日も、何も得るものがなかった。
その次の日は、直子の高校の同級生と先輩と後輩へコンタクトを取り、
聞き込みすることに。
連絡が付いても、なかなか聞き出せないし、会ってくれない。
幸次郎は、正直、焦っていた。
そんな聞き込み調査中に、直子から電話が掛かってきた。
お父さんのお墓参りの時に、変なやつに後をつけられたとのこと。
その男は、サングラスにニット帽、上下黒のスエットだったらしい。
そして次の日、幸次郎は直子の後を付ける作戦に出たのであった。
早朝4時に起きて、直子の住んでいるマンションまで向かった。
幸次郎は、直子が出てくるのをひたすら待つことに。
7時になって、ようやく部屋から出てきた。
今から、勤めている会社に向かう直子をこっそり尾行する。
バスに乗り、電車を乗り継ぎ、会社の前までやってきた。
その後、昼食のランチタイムになって、コンビニに向かう直子。
静かに、後をつける幸次郎。
必要に応じて、都度、写真を撮りまくっていた。
そうこうしている内に直子が、退社する時間になった。
同期の女友達と喋りながら、会社のビルから出てきた。
その後、一人で自宅まで帰る直子の後をつけることに。
すると、急に直子の前に、黒いワンボックスカーが止まった。
中に乗り込む直子。
何をするのか、何をされるのか。
幸次郎には、想像することが全く出来なかった。
そのままワンボックスカーは、某テレビ局のある地下駐車場へと、
向かっていった。
幸次郎が、依頼された内容は下着泥棒を捕まえて欲しい。
直子は、OLとして働きながらニュースキャスターとしても、
活躍しているタレントだった。
後で聞いた話なのだが、サングラスにニット帽、上下スェットの男は、
直子のマネージャーだった。
実は、幸次郎は直子の大ファンだった。
直子が出演している番組は、全て観ていた。
探偵事務所を構える前から、直子のことが好きだった。
下着泥棒は、実は幸次郎自身だった。
壁面には、直子の写真と盗んできた下着の写真が貼り付けられていた。
※この物語は、フィクションです。
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