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意地で東京にしがみつくひと、東京を諦めるひと

映画リトル・フォレストを見た。
山の小さな集落で母子で生活していた女の子が、母が失踪して一生懸命に畑仕事とかをしながら生活する映画だ。
淡々と畑仕事をして、毎日自炊する。
村での生活の映像が美しい。
友達から、お母さんがいなくなっても、自分一人で生活できると、意地になってここに住んでいるんじゃないの?と何回か聞かれる。
主人公の女の子はわざわざ不便な山の小さな集落で生活していく理由なんてないのだ。
別に好きでもない集落で不便な生活をする必要性が主人公には皆無だ。
それでも淡々と生活していたのだが、ついにアルバイト先で何かがカーっとなって村を捨てることを決意して映画は終わる。
意地だけで続けた村の生活だった。

大学時代にうちの大学には全国から毎年異常な数の学生が入学してきた。
時代はサブプライム不況で、卒業後の進路は極めて暗いものが予想された。
在学中に東日本大震災が来て、日経平均株価は今の4分の1を下回る金額を私たちに示した。
うちの大学の最も多かった就職先は公務員。
全国から東京に夢を見た学生は、現実を見定めて地元の県庁に就職していく。
それでも自分は東京で何者かになるんだと発奮する人たちは、大企業に就職するわけだが、殆ど地方に飛ばされる。
都内で仕事を見つけて、これが自分の求める夢のカケラだと信じたい人々も、いつのまにやら自分を見失ってしまう。
何かを成し遂げた人々も、恋人が地方に帰ると言い出すと、慌てて結婚して、共に地方に行ってしまう。
そうやって毎年東京には大量の大学生がやって来るが、10年もすればそのほとんどは東京には存在しなくなる。

じゃあどうして私は東京で生活するのだろう?

東京生まれは、東京でイヤなことがあっても、帰る場所も、逃げる場所も、東京だしね。

コロナで何人かの優しい友達が東京を去った。
この映画の主人公の女の子ように、誰か大切な人に捨てられて、意地になって東京に残っていたわけではないと思いたい。

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