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『インターネットで私のことを知ってくれた人へ』

She is(シーイズ)というメディアでエッセイ公募があり、応募したものです。落ちちゃったので公開します。

お題は「超好き -Ultra Love-」。


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タイトル『インターネットで私のことを知ってくれた人へ』

ありがとう。Twitterかな、noteかな。それともこのshe isがはじめましてかな。とにかくありがとう。私はインターネットで私を知ってもらうのが一番嬉しいんだよ。

私が初めてTwitterを始めた9年前、Twitterは「共感のメディア」なんかじゃなかった。

海外でTwitterというものが流行ってるらしいとキャッチした情報の速い人、ギーク、あるいは日常世界の常識の型にはめきれない自分の一部分をインターネットに流し込もうとする人、趣味がニッチ過ぎてネットでしか仲間を見つけられない人……とにかくそんな人ばかりの集う場所で、今よりずっと人が少なくて、尖ってて、ヒリヒリしてた。
「いかにトンチンカンなこと言うか大会」が日夜繰り広げられていて、みんながみんな、勲章のようなふぁぼをとることに無邪気に躍起になっていた。私も「選挙ポスターの板でストラックアウトしてー」とか、なんか、今思うと何が面白いかわかんないことばっかり書いていた。

でも、当時から小説を書いて同人誌や新人賞に投稿していた私にとって、小説に比べて受け手の反応速度が圧倒的に速いTwitterは、革命だった。わたしのことを知らない人に、私の「言葉」だけを飛ばして、一瞬後にはファボやフォローが返ってくるのだ。私が一番大事にしてる、私の「言葉」だけで、誰かに好かれることができるのだ。

時が過ぎ、Twitterの利用者は増え続け、その間に私は女子大生から女子大職員になり、と同時に「ちょっとフォロワーが多い人」くらいにはなり、そしてインターネットで見つけたチャットレディという仕事を「やってみた」レポをネットに書いたら思いのほかバズり、そして私の身元をネットで調べたアンチが私の職場にメールして、でも優しい上司が私を怒るどころか同情して「ネットって怖いね」って言ってくれた時も、私は心の中でこう言い返した。「ネットが怖いんじゃなくて、怖いのは人です」。ネットは相変わらず尊かった。私が一番大事にしてる、私の「言葉」だけで、誰かに嫌われることができるのだ。

どっちにしろやめるつもりだった仕事を辞めて、私はますますインターネットに身を投じた。最近はもう「ネットばっかやって現実を見ないのはダメだ」とか「ネットは怖い」とかいう人はほとんどいなくなったけど、かわりにネットは「誰でもやってるもの」になった。そして、ネットは「いかにトンチンカンなこと言うか大会」ではなく、「いかに『あるあるわかる~』といわれるか大会」の場所になった。

私の好きだった、トンチンカンなことばっかりいうツイッタラーはどんどんいなくなった。というか、ツイッタラーという語自体が死語になった。Twitterがつまらなくなった私は、noteという、皆がブログを書き合うSNSような場所に移り、超短編や詩やらエッセイを書いてたけど、そこでもやっぱり人気なのは、皆に「あるあるわかる」と言われるような、「時には休むのが大事」とか「自分のペースで」とか「結婚とか出産とかいういうレールで窮屈にならなくていいよ」とかいう、私に言わせれば誰が言っても変わらない、あたりまえのことを言うエッセイだった。全然キラキラしてなかった。

それに腹が立っていた私がある日、体調が悪い日にヤケクソで20分で殴り書いた「共感ってくだらなくない?」という記事が自分史上一番のPVを獲得し、「うわ、『共感ってくだらなくない?』に共感された……」と思って更にウンザリし、インターネットを嫌いになりかけた。

でもそこで更に、「ネット時代の嫌なところを全部吐き出した小説を書く。みんな『ネットばっか見て小説を読まない』とか『小説は売れない』とか言ってるけど、そんなネット時代にこそ読まれる、ネット時代にフィットした小説を書く」とnoteに宣言したら、その意志を応援してくれる人がたちどころに20人以上あらわれ、書きかけの私の小説を読み、アドバイスをしてくれる仲間になった。

昔話がしたいわけでも、自慢がしたいわけでもない。


言いたいのは、

インターネットを自分を慰める道具にするか、自分を鼓舞する道具にするかは、完全に自分次第ということ。

いろいろあったけど、私は多分、ネットのことがちょっと尋常じゃないくらい好きで、それは私が私のことをそう思ってることとパラレルなんだろう。
ネットでこの文章を読んだ人が、自分と、自分の好きなことのために、インターネットを使えますように。


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初めて私の文章を読む人向けに、しかもおよその媒体向けに書いたので、noteに出すの恥ずかしいんですが笑、ありがとうございました。

(「たちどころに」とか普段使わない言葉使っててウケる。よそいき~~……?!)

ちなみにShe isに掲載されるのは毎月一本で、今回選ばれたのはこちらのエッセイでした。 https://sheishere.jp/voice/201802-maiiwaana/

さすが感ある。

エッセイ公募は毎月やってるようなので、これにこりずにこれからも応募してみようと思う。みんなも応募しようぜ。(次回は3/14締め切り)


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