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これだけネットが発達してるのにわざわざライヴパフォーマンスをやる意味とは。

「渋澤さん朗読とか文学系のライヴやってるならぜひ観た方がいい」と各方面から言われている朗読?演劇?パフォーマンス?を観に行った、が、イマイチだった。

http://scool.jp/event/20180203/
<SCOOL パフォーマンス・シリーズ2017 Vol.7>どちらがさきに口火をきったのか、もうわからない。vol.6 吉田アミ、か、大谷能生


どんだけイマイチかというと、初めの五分でもう「帰りてー」と思って狭い席の間を縫って退席するルートを頭の中で何度も描いてしまった。結局60分全部観てしまったのだが、やっぱりはじめの「退出したい」という直感を裏切るものではなかった。

ていうか「出たい」と思って観続けると脳の55%くらいを「いつ出る?」に持ってかれてしまって集中できない。こういう時は出ちゃった方が全員のためになるんだよな。演者も、他の客も、集中力の削げた客が一人いなくなった方が場の濃度が高まるし、むしろ「うわ、リタイヤする客もいるんだ」ってことで残った客の士気が高まったりする。

で、どこが気に食わなかったかというと、うーん、まず、セットが汚い。安っぽい。美大の卒展以下(というか、美大の卒展で無数に真似されているもの、の、元ネタなのかもしれないけど、だとしたら「古い」ってことだよね)。ごちゃごちゃして気が散るし、絵の具を垂らすなどの小道具の凝った演出も多いんだけど余計なものが常に視界に入るので何しても映えない。

あと演者の動きがテキトー。迷いながら動いてる(あとから聞いたら即興だったらしい。あ……そう……)。朗読原稿がバサバサして気が散る(てか、暗記しないの?)。服が変。ダサい。

とにかくビジュアル、動きなどの細部の精度が低すぎて「これなら肉体がない方が良い」と思ってしまった。声はまあまあ良かった。

そう、唯一良いと思ったのは、プロジェクタで映したワープロの文字と、演者の声で、同時平行で複数の話をする、しかもワープロ文字がブレたりダブったりするから3つも4つもの話を並行して提示してく点。面白かった。でもそれはYouTubeでもやれるんだよね。「肉体が邪魔」と思わせてしまった時点で生でやる意味ない

YouTubeやサンクラやiTunesが発達した今、わざわざ生でパフォーマンスをやる意味・観る意味って何だと思いますか。


わたしは「その肉体の切実さ、ヤバさ、圧力を伝えること」だと思ってる。


(今思い出したが、「こんだけ動画が発達してるのにわざわざ旅行する意味とは何?」って話、ここに書いてた)


「マジこれ伝わらないと死ぬ」ってことを、目の前の肉体が言ってる時の、とんでもない切実さ・ヤバさ・圧力。それを出せないなら生でやる意味ない。


街角で必死に何かを訴えている外国人の声が、意味は全く分からないけどその切実さだけをもってやけにガンガン耳に突き刺さってくること、ありませんか。

大久保の交番の前で、多分韓国語かな、わかんないけどずーっと同じ言葉を連呼している外国人。

新宿の電気屋の前で喧嘩してる中国人観光客ファミリー。

この不快を取り除いてくれ、自分じゃできないんだ、マジで死ぬー!!と泣き叫んでる赤子。

多くのパフォーマンスは彼らの切実さに負けてる。

パフォーマンスなんて所詮「フリ」だから。

(奇しくも「フリ」のことを「パフォーマンス」って言いますよね)


多くのパフォーマンスは「フリ」なのに、やれ携帯見るなとか途中入退室禁止とか、よく言えたもんだなと思う(!)。

高尚系の、演劇とかコンサートとか、いわゆる「アート」は、携帯電話を禁止する方向に向かう(あと「学校」ね)。低俗系の、ライヴとかアイドルとかいわゆる「エンタメ」は、むしろ写真や動画撮影を推奨する。

私のライヴは、写真・動画撮影を禁止していない。でも「気づいたら携帯を触る暇もないほど集中してた」と思わせたい。

全ての芸術にとって、TwitterやLINEはライバルだ。アートとかエンタメとか関係ない。全てのコンテンツは、可処分時間をスマホに奪われぬべく戦わねばならない。

ちょっとでも飽きたら携帯見たくなっちゃう、その現代人の心性に圧倒的切実さで勝ちたい。


大変静かな会場だった。もし私があの退出ルートを通って重そうな入り口の扉を開けてもらうべくスタッフに「つまんないから出たいんで開けてもらっていいですか」と言ったら、その声はどんなに音量を絞ってもめちゃめちゃ響いただろう。そしてあの演者に勝ってしまっただろう。でもそうできなかったのだから私もその程度のパフォーマー。



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