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短編小説(一話完結)

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記事一覧

【短編】 三度のコウミョウ屋

【短編】 三度のコウミョウ屋

○ コウミョウ屋

【チンドン屋】
 太鼓や鐘やラッパなどの楽器を演奏して人目を集め、他店の宣伝や紹介を行う日本の伝統的な広告業である。

 この物語に登場するチンドン屋・コウミョウ屋は、何も宣伝せず、何も紹介などしない。
 彼らの行いも存在も都市伝説とされ、出会う事はあれど存在の証明は出来ない。

 何時しか記憶から消えていく彼らは、なんの為に演奏を続けているのか、都市伝説にはその理由が記されて

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【短編】 星空とバス停

○ バス停の夢

 ”そいつ”を見たのはその夜が初めてじゃなかった。今晩で十日目。連続して十日じゃなく、一日か二日置いてそいつは海の見える道路沿い、T字路の突き当りにあるバス停に座って海を眺めていた。

 そいつを見るのはいつも星が空一面に散りばめられて輝く夜だった。不思議なのは、いつも新月なのに満月の時のように風景の輪郭が分かる程明るく、真夏なのだが微かに涼しい。

 夜の光景はいつも俺がそいつ

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【短編】 ヒメノと伯父の持論

【短編】 ヒメノと伯父の持論

1 ついてこい、ヒメ!

「これは世紀の大発明だ。実践するからついてこい」
 発明好きの伯父の一言が始まりであった。

 その日は雨天――午前十時半現在。
 降雨量はまだ小雨よりやや強め程度。しかし天気予報では昼過ぎから土砂降りになると報じられている。
 そんな悪天候の中、ヒメノは六階建ての某廃ビルへ、半ば強引に連れてこられた。

 ヒメノは両親を早くに亡くしており、現在父方の伯父・ヒロシゲの家に

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【短編】 高級ステーキを前にして

【短編】 高級ステーキを前にして

1 田中秀三の叫び

 食べれない。ああ、食べれない。
 仕方ないと言えば仕方ない。……どう足掻こうと、これが現実。それもやむなしとしか言えないのだが。

 どうしてこんな時に、こんな状態なんだ。”あのようなもの”を一口も食べる事が出来ない、この無情はなんという仕打ちなんだ。
 これが実の父に行うことか? 尋常ではない!
 それともなにかの腹いせか!? 畜生、ド畜生!!
 食事に文句を言い続けた罰

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【短編】 似顔絵のしおり

【短編】 似顔絵のしおり

1 野間 悠香

 門脇真緒さん、の……ですか? 私から言える事は特にありませんけどぉ……強いて言うなら、門脇さんの傍には誰かいたというぐらいです。
 幽霊? いいえ、そんなんじゃ無いと思いますよ。もっと別の、何か。……いつから? って聞かれましても……正確には分かりませんけど、漠然とした記憶では、小学生の時にはいたと思います。

 あの人とは保育園の時からだから、一応は幼馴染みです……。たぶん、

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【短編】預けられた者達の衝動

【短編】預けられた者達の衝動

戦力外者達の相談
 王国近くの小高い丘の上。そこに二人の人間と三体のモンスターが円陣を組んで座っていた。

 モンスターは青白い肌にあちこち傷だらけではあるが腐敗による損壊の無いゾンビ女性・エルダ、人間のような伊出達にズボンをはいた狼人間・ガル、半透明な色白い肌、白い衣装を纏った幽霊の男性・ボーマンである。
 人間二人の内、一人はローブが暑くて脱ぎ上半身裸の、魔法使いの初老男性・バルドと、村人と同

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【短編】One Month Novel~片岡亮太郎のこだわりと苦悩の執筆活動~

【短編】One Month Novel~片岡亮太郎のこだわりと苦悩の執筆活動~

亮太郎のこだわり アマチュア作家・片岡亮太郎(かたおかりょうたろう) はアニメとドラマが大好きである。(勿論好みはある)
 尚、好きな理由にはこだわりをもっている。

 アニメでは、
 一、世界観
 二、キャラクターの性格や個性。次いで見た目
 三、ストーリー構成
 ドラマでは、
 一、キャスティング
 二、世界観
 三、ストーリー構成
 これらに重点を置いて作品を観ている。

 しかし、だからと

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【短編】変理の種

【短編】変理の種

彼女が叶えたい願い 変理の種とは、世界中を変化対象とした、理そのものを変える力を持つと云われる種の事。外見は巨大な岩の様な丸く表面がざらざらした赤紫色をしている。

 種は三百年に一度現れ、ある条件下で【拡散状態】と呼ばれる、外殻も内部も小さい粒子となって爆散する現象を起こす。
 変理の種が拡散する。それは、どんな願いでも一つだけ叶えてしまう変化現象の事。

 個人であれ集団であれ、人間の力によっ

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【短編】勝利の先の生活

【短編】勝利の先の生活

~ある研究者の手記『記憶』より~

 人間の記憶は曖昧だ。
 覚えた時は定着するが、どれほど頑張ろうとも脳に刻まれる記憶は確実に残るとは限らない。たとえ残ったとして、曖昧に漠然と。
 残りものは一部が強調されている程度であり、100%完璧ではない。
 しかし人間それぞれに脳機能の統一性が無いことが、個性を築く要因の一つなのかもしれない。

人生を賭けたポーカー

 今、男は最終ステージでトランプを

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【短編】再会はあの居酒屋で

【短編】再会はあの居酒屋で

友の背中「絶対、また飲みに行こうな」そう約束を交わし、謙太郎と隆太はそれぞれの帰路についた。

 互いに別々の仕事に就きながらも定期的に居酒屋で会い、愚痴を交わし、仕事の話で盛り上がり、将来の事を語りあったり、何気ない他愛ない世間話もした。

 そんな二人が居酒屋で楽しめる習慣は、隆太が三十歳を迎えたある日、突然終わりを迎えた。

 謙太郎の実家の母親が他界した。そして足腰の弱った父の面倒を見なけ

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【短編】相棒ロブと古の化物

【短編】相棒ロブと古の化物

語り・1 古代人の歴史とロストアーツ 広大な荒野を、俺は軍用ジープ車をとばして走っている。

 ちょいと俺の事を紹介する前に昔話をしよう。
 遙か昔……つってもまあ、いつの話かはまるで不明だが、おおよそ三百年ぐらい前ってのが一般的な歴史書に記されて出回ってる。だから三百年ぐらい前なんだろうな。
 そんな大昔、行き過ぎた文明がとてつもない大惨事を起こしたらしい。
 あちこち火の海だったり、大爆発で街

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【短編】湖の女神?

【短編】湖の女神?

湖に現れたのは ここはとある村の近くの林にある湖。
 兄・イグス(十九歳)と、妹・エレシア(十七歳)の兄妹はこの湖近辺の草むらをかき分け、何かを探しています。
 というのも、昨日山菜取りに来た時、エレシアが大事な髪飾りを落としたからなのです。

 二人の住む村では不思議な言い伝えがいくつもある。その一つに、あの有名な童話『金の斧銀の斧』に似た伝承です。
 内容はほぼほぼ同じで、鉄の斧を落とした際、

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【短編】時の世界のカーニバル

【短編】時の世界のカーニバル

目覚めると、ウサギと……タヌキ? 國下弘幸(くにしたひろゆき)三十九歳。
 目覚めると、森の中で得体の知れない生き物が自分の顔を覗き見ていた。

「わぁぁぁ! 調整者が起きた! 調整者が起きた!」
 そう叫んだのはどう見てもウサギにしか見えない。恐らくオスだと声色と顔の雰囲気、『夏の田舎の少年』と表現出来る地味な服装から弘幸は判断した。

「よかったぁぁ……。もうカーニバルが始まったからどうしよう

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