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僕の本が5000円で売れた話。

――ここが大事なのが、「本を読む」という「機能」には1000円の価値しか生まれないけれど、「応援」という「意味」には5000円の価値が生まれたってことです。


人生は物語。
どうも横山黎です。

今回は「僕の本が5000円で売れた話。」というテーマで話していこうと思います。


📚『Message』が5000円で売れた

昨日のことです。

去年出版した僕の初書籍『Message』が5000円で売れました。1000円で売っている1冊の本が5000円です。部厚い長編小説でも大作家の遺作でもなく、まだ無名の大学生作家の書いた140ページの本が5000円です。

今回はこの珍事について綴っていこうと思います(笑)



買ってくれたのは僕のバイト先の先輩。以前から僕の本に興味を持ってくださっていて、もう3カ月くらい放置してしまっていたんです。その人とは仕事が違うし、派遣される仕事場も違うので、なかなか会う機会がありませんでした。昨日は偶然タイミングよく同じ仕事場にいて、話すきっかけがあったので流れで本の話をすることができました。

先輩は「本買うよ!」と言ってくれて、財布を取りに戻りました。僕は仕事着に着替えながら待っていたんですが、次に現れた先輩が手にしていたのは、5000円札。

「ごめん、今財布に5000円札しかなかったから、5000円でいいや!」と驚きのセリフ。僕は「さすがに受け取れませんよ!」と断っていたんですが、「希望を込めて」という言葉に甘えることになりました。

「応援」を理由に5000円で買ってくれたんです。


📚僕だから買ってくれた

5000円で買ってくれた先輩は、僕の知り合いの経営者さんの方々とつながっていて、その経営者さんたちから先輩の熱い思いを事前に聴いていたんです。詳しくは分からないし、ちゃんと語り合ったことはまだないから、あんまり断定的なことは言えませんが、きっと「つながり」とか「応援」とかそういう言葉に寛容な人なんだと思います。

そうじゃなければ、僕の本に5000円は出しませんもん。

本当に財布の中に5000円札しかなかったんだとしても、じゃあ、5000円で買っちゃおうかとはならないはずです。また次の機会にすればいいし、今ならペイペイで送金することも可能です。

いろんな選択肢があるにも関わらず、5000円札で買おうとしてくれたのは、僕に対する信頼や応援しようという気持ちが少なからずあったから。

全く知らない人の本だったら定価よりも高い値段で買おうなんて思わない、というより、本を買う気も起らないはずです。たとえ知っているプロ作家さんの本だとしても、同じことだと思います。そもそも本屋さんにそういうシステムはありませんからね。

僕だから買ってくれたんです。


📚本を買う「意味」

商品を買うときに、消費者は「機能」と「意味」のどちらを理由に買うのかという問題があります。

たとえば、美容院を選ぶときに、技術的にはA店の人の方が優れているんだけど、B店の人の方が面白いし、話しやすいから、金額はちょっと高いけど、B店にいこうとすることがあるじゃないですか。ちなみに、僕もそういう風に選ぶことが多くって、「この人だから」を理由に商品を購入するんですよね。

あと、居酒屋を選ぶときに、安い大衆的な店よりも、知り合いの店主がいる居酒屋にいこうとします。どうせお金を落とすんなら、知っている人に落としたいし、それでお店が長く続くんなら、あるいはもっといいサービスにつながるんなら、応援したいという気持ちが湧いてくるんですよね。

つまり、「髪を切ってもらう」とか「ご飯を食べる、お酒を呑む」とか、そういう「機能」にお金を出しているわけではなくて、「この人と話したい」とか「この人を応援したい」とか、そういう「意味」にお金を出しているわけです。



話は戻りますが、僕の本が5000円で売れたのも同じ理由で、「機能」ではなく「意味」を買ってくれたからといえます。

で、ここが大事なのが、「本を読む」という「機能」には1000円の価値しか生まれないけれど、「応援」という「意味」には5000円の価値が生まれたってことです。

日本は人口が減り続けており、物を買ってくれる人が少なくなってきているので、安いものを大量に売ることが難しくなってきています。「機能」を売りにしていたら、お金がまわらなくなってしまうわけです。

だからこそ、物を高く売る必要があるといわれていて、そのために「意味」をつくりにいくことが求められているといえます。「この人の商品だから」「これが好きだから」「自分をよく見せたいから」という理由で、「機能」よりも高い値段を、「意味」に払っているのです。ブランド商品が分かりやすい例ですよね。



『Message』を出版してからもうすぐ1年。

手売りしたり、ビブリオバトルで紹介して全国大会に出場したり、展示会やったり、ライブイベントを開催したり、いろんな届け方をしてきました。

もちろん届けることは大事だけれど、丁寧に届けることが大切で、ひとりひとりと向き合うことを疎かにしてはいけないなと思いました。

本が売れない時代だし、作家は不安定な仕事。「機能」ばかりを追求していたら生きていけません。つまり、本を作るだけじゃいけない。信頼される人、応援される人になれるように、これからもがんばります。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

20230612 横山黎




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