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成人の日の前夜、家族に贈ったプレゼント

――プレゼントの正体は、家族それぞれに向けて綴った手紙のような歌、「メッセージ」。僕は家族の前でその楽曲をギターで弾き語ろうとしていたのです。



人生は物語。
どうも横山黎です。

今回は「成人の日の前夜、家族に贈ったプレゼント」というテーマで話していこうと思います。


📚成人の日の前夜に


今日は1月8日。成人の日の前日です。ということで、今日にゆかりのある話をしようと思います。

僕は1年前に成人式を迎えました。式典や同窓会で、地元の旧友たちと再会し、朝まで呑み語っていました。とってもステキな時間を過ごすことができたんです。そのステキな時間というのは、成人の日の前夜から始まっていました。

成人の日の前日、僕は家族と一緒に最寄り駅のそばにある居酒屋さんで外食し、そのあと家に帰りました。そのときから僕は緊張で少し胸が震えていたのです。僕は成人の日を迎えるタイミングで、家族にあるプレゼントを贈ろうとしていたからです。

そのプレゼントの正体は、家族それぞれに向けて綴った手紙のような歌、「メッセージ」。僕は家族の前でその楽曲をギターで弾き語ろうとしていたのです。


📚弾き語った20年分のメッセージ


僕は20歳最後の日、『Message』という小説を出版しました。成人の日を舞台にしたヒューマンミステリーです。

新成人の小山遊馬は、式典後に開かれた同窓会で旧友と口論になり、会の途中で行方をくらましました。幼馴染の飯尾瑞月は彼を探しに出ますが、彼女が見つけたのは歩道橋の階段の下で遺体となった遊馬でした。衝撃と混乱のさなか彼の手元を見ると、「110」という血文字が残されていたんです。「110」は何を表しているのか、ダイイングメッセージの謎を解いていくのです。

遊馬の母親、父親、そして幼馴染の瑞月の3人の視点で話が進んでいきます。彼の死を受けて、まわりの人間がどのような思いが生じ、葛藤を抱え、その後の人生を生きていくのか、そういった人間ドラマも追求した心温まる物語です。

試し読みできますので、是非、以下の記事をご覧ください。


で、その物語の中で、新成人が家族に20年分のメッセージを伝えるというエピソードがあります。それにひっかけて、僕は同じことを現実でもやろうとしたのです。20年分のメッセージを歌に込めて、ギターで弾き語ったのです。

家族全員を泣かせるつもりでいました。案の定、みんなの心に響くプレゼントになりました。しかし、僕自身、涙するとは思ってもいなくて……(笑)

結構早い段階で込み上げるものがあって、それを抑えながら弾き語らなきゃだったので、ギターは間違えるし、音程は狂うし、歌詞も少し間違えているし、散々でした(笑)

でもね。

歌い終わった後に、目を光らせている家族たちがいて、「あ、やってよかったな」「僕はこの家族で良かったな」と思うことができたんですよね。


📚お祝いの日だけれども


成人の日って、みんなが新成人をお祝いする日だけれども、それだけじゃなくって、新成人がお世話になった人に20年分の感謝を伝える日でもあると思ったんです。確かに20年生きてきたことはめでたいことです。昔は特にそうで、20年生きることが難しい時代だったから、重く受け止め、祝福するのは当然といえるでしょう。

しかし、その20年を新成人ひとりの力で生きてきたわけではなくて、いろんな人に支えられてきたわけじゃないですか。同じようなことは誕生日にもいえると思うんですけど、ならば、そういう日には与えられるだけじゃなくて、与えることも必要だなって思ったんです。

それは、何か物として贈るでもいいし、「ありがとう」のただ一言でもいい。僕は創作が好きだから、小説になぞらえた音楽を作ってそれを弾き語るという形で「与える」を実現しました。

とにかく、20年という節目に、一度、お世話になった人に対して感謝と愛情を伝えた方が良いよねという話です。それに気付く契機になればいい。それが、小説『Message』をつくった動機のひとつです。


照れくさいことって普段なかなか言えないじゃないですか。だからこそ、節目のタイミングで一歩踏み出す勇気を持つべきではないでしょうか。その手助けになる作品が小説『Message』であると、僕は信じています。

実際に、読んでくれた人が、作品の影響を受け、家族に思いを伝える機会をつくったという話を聴きました。その瞬間、僕はこの作品をつくってよかったなと思えたし、この上ない幸せを感じ得ました。


明日は成人の日。新成人のみなさん、おめでとうございます。是非、お世話になった大切な人に「110」を伝えてあげてください。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20230108 横山黎




今日の1冊

『阿部一族』森鴎外

大学の授業の発表のために、何度も何度も読んだ『興津弥五右衛門の遺書』が収録されています。僕にはわからない「殉死」が題材で、手紙形式の物語です。短い作品なのにめっちゃ人が死ぬ(笑)

ここに収録されている3作品はどれも歴史小説。しかし、当時だからこそのメッセージが込められています。僕らがこの先どう生きるべきなのか、100年前の文学に触れることで答えが見えてくるかもしれません。

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