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恋は炭酸水、欲はアルコール、本当の愛はただの水。

――僕の経験上、アイデアは自分の体験から降ってくるもので、見つけるために必要なものも、掘り下げるときに参考にすべきものも、本や教科書じゃない。自分の過去。人生という物語。


人生は物語。
どうも横山黎です。

今回は「アイデアは経験から生まれる」というテーマで話していこうと思います。


📚たった3行を掘り下げる


昨日、こんなフレーズが頭の中に降りてきました。

恋は炭酸水、
欲はアルコール、
本当の愛はただの水。

個人的にとっても言い得て妙だし、詩的だなあと思いました。ちゃんと説明できないけど、ファーストインパクトがあるくらいにキャッチーだし、曖昧な概念を同系統の物質的な題材で言い表すことができているからフレーズとして質が高いんだと思います。

せっかく思い付いたし、これをどう使っていくか分からないけれど、このたった3行について馬鹿真面目に2000字書いてやろうというわけです(笑)


このフレーズを思いついたきっかけ、原因は分かっています。現在制作中の新作『君はマスクを取らない』についてあれこれ考えているさなか、降りてきたフレーズです。その作品のなかで、炭酸水がひとつの大事な要素なんですよね。


ざっくり『君はマスクを取らない』について整理しておきますね。

詩が好きな男子高生が、いつもマスクをしている寡黙な女子高生との出逢いや別れを通して、自分はこれからどう生きるべきかを思考していく青春純愛物語です。

元々高校2年生のときに書いた短編を、大学生になる直前に長編に書き直したんですが、大学での経験を踏まえて改めてこの作品と向き合いたいと思い、再び再創作に挑戦しているわけです。

「マスク」という題材から察しがつくかもしれませんが、コロナについて触れようと考えています。コロナ禍を肯定するような、この3年間を慰めるようなそんな物語にしたいのです。


『君はマスクを取らない』という作品は面白い軌跡を辿ってきました。

だって、元々はコロナ前に書かれた作品だったんですよ。「落ち着くから」を理由にマスクをずっとつけている若者が増えてきたという実態を受け、それを青春純愛物語に落とし込んだ作品だったのです。高校卒業を機に再創作した頃、世界中がマスクを取らない時代が始まったのです。そしてポストコロナが謳われる今、コロナ禍を捉え直すような作品を目指しているのです。

さらにいえば、僕の大学生になってからの経験が、作品とオーバーラップしたのです。以前にも記事にしましたが、『君はマスクを取らない』をきっかけに仲良くなった人がいました。同じ学科のサラという女子大生です。

なんやかんやあって付き合って、なんやかんやあって別れたけど、それ以降も仲良しではあって、なんとこの度、彼女と一緒に作り直すことにしたんです。

『君はマスクを取らない』を再創作するとなったら、サラとの日々は無視できないし、その経験をベースに作り直したい。そんな思いがあるのです。彼女に打ち明けたら以外にも乗り気で、一緒に共同再創作に踏み切ったのです。

新作『君はマスクを取らない』を実体験をベースにすることを決めたとき、真っ先に取り入れようと考えた題材が「炭酸水」でした。



📚思い出の炭酸水


サラからもらった言葉のなかで最も衝撃的だったのは、僕の作品を読んでくれたときに口にした一言。

「炭酸水みたい」

僕の作品を、炭酸水のようだと表現してくれたのです。爽やかながらも刺激的な作風であることを、こんなにもステキに表現してくれたのです。

当時彼女は炭酸水にはまっていたこともあり、そんな表現が生まれたと言っていたらしいですが、衝撃にも似た感動を覚えた僕もそれから炭酸水が好きになりました。
#単純


で、なんやかんやあって付き合って、なんやかんやあって別れたあと、彼女と一緒に呑む機会があったんです。
#なんで

急にサラに「一緒に課題やろ」と言われて、彼女の家に行きました。
#いや本当になんで

で、そこで僕はべっろべろに酔っ払って(笑)。バイト終わりに直行した身で疲れが溜まっていたし、缶のアルコールだったから変に悪酔いしたんだと思います。普通に潰れて、サラに介抱されるっていう謎の事態が起きました。

あんまり覚えていないけど、酔っ払いを口実に甘えていたっけ。サラは面白がってくれて、笑いながら、水を飲ませてくれました。

炭酸水、アルコール、水。

もうお分かりだと思いますが、この経験からあの3行が生まれたのです。


📚アイデアは経験から生まれる


恋は炭酸水、
欲はアルコール、
本当の愛はただの水。

さて、前置きだけで2000字くらいになってしまいましたが、本題です。今まで話してきた僕の経験を踏まえ、この3行を読み解いていきましょう。


「恋は下心」なんて言葉を耳にしますが、僕はそうは思わなくて、本来的に「恋」は純粋無垢な感情だと思います。そこに「欲」が結びつくから、下心に変わってしまうわけです。

「恋」は炭酸水。微弱な衝撃が伴う革命で、時に痛みを伴うけれど、その痛みすらも心地よく、爽やかさをもたらす。

「欲」はアルコール。甘味と苦味、芳香と異臭、あらゆる二元論の価値を失くして、その瞬間の自分の快感を追求する衝動。飲みすぎて粗相しても、時の経過と共に忘却し、再び欲してしまう。

「本当の愛」は水。衝撃も、甘みも苦味もいらない。でも、生きていくために必要なものだし、その人の半分以上を形作るかけがえのないもの。透き通っていて、時と場合によって名前の変わる流動的な存在。

今書いていて思ったんですが、「恋」にも「欲」にも含まれるもので、人間が本来もっているもの。さっき指摘した、純粋無垢な感情こそが「本当の愛」といえるかもしれません。


……気が付けば2000字を超えてしまいました。このままでは締まらないので、無理矢理まとめていきますね。


僕の経験上、アイデアは自分の体験から降ってくるもので、見つけるために必要なものも、掘り下げるときに参考にすべきものも、本や教科書じゃない。自分の過去。人生という物語。

知覚したこと、経験したこと以上のものを生むことは不可能に近いんだから、とにかくいろんな経験をして、いろんな感情を呼び起こして、アイデアを生む準備をするといいよねという話でした。

新作の執筆、頑張ります。

ちなみに、僕がサラの家で酔っ払った経験を綴った詩があります。今回のフレーズ、その詩から生まれたといったほうが正確かもしれません。興味をもたれた方は、是非のぞいてみてください。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20230105 横山黎




今日の1冊

『ぼくらの文章教室』髙橋源一郎

はじめにの木村センという昭和の農婦の遺書に、心を掴まれした。決して上手ではない短文に、木村さんの伝えたいものを確かに感じます。心を動かす文章って、技術だけじゃないと教えてくれました。

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