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【空をゆく巨人】完成を目指さずに、作り続ける

この本を読んで良かったと思うのは、読み進めるたびに、元気が沸いてくることだ。

川内有緒さんの「空をゆく巨人」は、中国人の現代アートの芸術家と、福島の有名なおっちゃんを中心とした物語。

主な登場人物の2人は、それぞれ自分が行きたい方向へ進む。作りたいものを作り、やりたくないものはしない。

こんなに楽観的でうまく人生を渡っていける人がいるのか、と思わされるほどだ。

でも、読み進めるうちに、彼らが何を大事にしているか。人に対して、どう向き合っているかが分かってくる。

彼らはわがままでも、いい加減でもない。

徹底して「自分の生き方」を貫いている人たちなのだと思った。

人生において、この社会において、大なり小なり「困難」を感じることは誰にでもあるだろう。

だけど、その「困難」を、本当の「困難」にするのは、自分自身なのかもしれない。

誰かに相談したり、教わったり、あちこち動いてみれば、意外と「困難」ではなくなっているかもしれない。

主人公たちの作品づくりや交流を読んで、そんなことを考えた。

後半、東日本大震災が起きた3.11の後、2人とその仲間たちが福島で取り組んでいる、桜の植樹や屋外の美術館のことが紹介される。

著者は、この章につなげるために、それまでの章を積み重ねてきたのではないかと思うほど、行間に熱量が漂う。

登場人物の人となりがしっかり描かれているからこそ、3.11の後に、彼らがなぜ、桜の植樹に取り組んだのか。

屋外の美術館が、どのような場になっていったのかが、よく分かる。


自分が死ぬまでに完成しなくていい。

作り続けることに意味がある

私には、そういう思いで取り組めるものがあるだろうか。

改めて、考えている。




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