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ダニエルズのランニング・フォーミュラを久しぶりに読み返して気づいた7つのこと

私がダニエルズのランニング・フォーミュラを初めて読んだのはガチでマラソンの練習を始めた2022年のことです。その当時はまだEペースやMペースといった用語もわからず、ポイント練習などと言う言葉さえも知りませんでした。

当時の私はランニングに関する知識が全くなかったので、書籍やWebサイト、Youtubeなどで徐々にトレーニングのやり方や理論を学んでいきました。そんな時に出会ったのが「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」です。ランニングに関する情報が体系的に整理され、ダニエルズ氏の長年の研究と実践に基づく理論が余すことなく書かれた本書は大変参考になりました。そしてVDOTという指標やそれを基にしたトレーニング方法を取り入れたことで、わずか1年という短い期間でサブ4からサブ3へと記録を大幅に伸ばす事ができました。

今回は「ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 」(以下R・F)を久しぶりに読み返してみました。当時はさらっと一通り読んだだけだったので、見逃していた所や改めて気づいたポイントを7つまとめてみました。ランナーだったら誰もが「これってどうなの?」という項目をピックアップしてみたので、参考にしてみてください。


1. ストライド頻度(ピッチ) は180 その理由

ピッチは1分間180回を目指すよう、私は強く推奨しているが、その理由の1つは接地の衝撃を出来るだけ少なくするためである。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 Part1 第2章より

改めてR・Fを読み返してみて気づいたことの1つ目はピッチです。R・Fには「ピッチは180推奨」ということが明確に書かれています。理由も含めて具体的に見ていきましょう。

ピッチ180にする理由の1つとして

接地の衝撃を少なくするため

と書かれていたのは新たな発見でした。その項目に接地の際の衝撃を少なくするための具体的な走り方も書いてありました。

"一歩一歩バウンドせずに、まるで地面を転がるようなつもりで走る"

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 Part1 第2章より

とあります。これはランニングエコノミーに関わってくる部分ですね。

ピッチ180であれば大きくバウンドすることなく、接地の衝撃を少なくして効率の良い走りが出来る。「バウンドせずに、転がるようなつもりで走る」

これ、実際にマスターするのはなかなか難しいと感じています😅 常日頃から意識して練習していく必要がありますね。

また、接地の仕方にも言及があります。ミッドフットでもリアフット(かかと着地)でもどちらでも良いそうです。これもちょっと意外でした。

ダニエルズ氏曰く、接地は人や種目によって最適なものが異なるということであり「自分にとって最適な接地」を探す必要があると本書には書いてあります。その際のやり方としてピッチ180を意識して気持ちよく脚が回転する接地を選ぶといいそうです。

接地に悩んでいる方は《ピッチ180にして気持ちよく自然に走れる》という事を意識すると、理想的な接地方法が見つかるかもしれません。

2. 呼吸のリズムは2歩で吸って2歩で吐く

前回読んだ時、この部分は完全に読み飛ばしてしまってました。改めて読んでみて、推奨する呼吸方法が書いてあったことに気づきました。

呼吸は2歩で吸って2歩で吐くのが良いと明確に書いてあります。これはベテランランナーの調査や換気量とエネルギーコストから得られた結論のようです。この呼吸のリズムを本書では2-2リズムと読んでいます。

閾値ランニング、インターバル、レペティション、そしてイージーランニングでも快適な2-2リズムで走った方がいい。そうすれば、それが当たり前になる。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 Part1 第2章より

正直なところ、私はこれまで呼吸についてあまり意識した事がありませんでした。2-2リズムを遅いペースでも早いペースでも常に行って、それが当たり前になるようにするという記述はまさに「目から鱗」。私も今後の練習で実践してみようと思います。

3. Eランニングは心筋の発達に効果的

Eペースが重要ということは様々なランニングに関する情報で言われています。Eランニングは言わば基礎であり土台であり、多くの練習はEペースで行うべきだということは今までも理解していたつもりでした。

しかし今回のR・Fの再読によって新たな発見がありました。それは「Eランニングは心筋の発達に効果がある」という記述です。

Eランニングは心筋の強化にも効果を発揮する。なぜなら心臓の収縮する力は、約60%HRmaxのとき最大に達するからである。(中略) 心筋を発達させるには、かなり楽なペースでのランニングが効くのである

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 Part1 第4章より

これまで私は閾値走やインターバルトレーニングのような練習強度の高いトレーニングの方が心筋を発達させるものだと思いこんでいました。ところがEペースのような楽なペースでも心筋の発達に効果的だと書かれていたことに驚きました。

確かにマラソンでサブ3以上の記録を持つ早いランナーでもEペース走やそれよりゆっくりやスロージョグしかやらないという方々が実際にいます。きっとEペース走によるトレーニング効果と心筋の発達によって早いペースでも安定して走れているのかもしれないですね。

4. Eランニングの推奨時間

ランニングってどのくらい走ったらいいのかと悩んだことありませんか?本書ではEランニングの推奨時間が以下のように記述されていました。

ランニングは30分間持続すると、費やした時間に対する効果はかなり大きくなる。よってEランニングをする場合は、少なくとも30分間は続けたほうがいい。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 Part1 第4章より

…という事なので、ランニングは最低30分以上が効果的という事ですね。ランニング初心者の方も30分は頑張って走るようにしましょう。

では、トレーニングの上限(Max)時間はどうなのでしょう?これについては以下のような記述があります。

持続的なランニングの上限は(ウルトラマラソンの練習でもないかぎり)150分にしたほうがいい。これはマラソンのトレーニングであっても同じだ。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 Part1 第4章より

どんなに長くても練習は150分を上限にするべきとの記述がありました。自分のフルマラソン前のトレーニングを振り返ってみると、最長の30km走は2時間15分(4:30/kmペース)くらいで走っていました。135分なのでこの基準に収まっています。

マラソン本番前の30kmは必要か考えてみる

よくマラソン前の練習としては30km走をするといいとされていますが、サブ4くらいまでを目指している方は30km走のかわりに150分走の方がいいのではないかと個人的には思います。走り慣れていない方が30km走をやると負荷が高く怪我や疲労の原因になりかねません。

例えばフルマラソンでサブ5を目指している方が、7:00/kmくらいのペースで30kmを走ると210分もかかってしまいます。なんとか走り切れても、翌日以降ひどい筋肉痛になったり脚や膝に痛みが出たりするでしょう。そうなると、疲労や痛みをリカバリーするためにしばらく練習を休まなければいけなくなってしまいます。その人の走力レベルに合った適切な負荷をかけるというのが大切なポイントだと思います。

つまり、マラソン本番前は30km走を絶対にやらないといけない訳ではなく、150分を上限として適切な負荷をかけるのが良いと思います。

5.休養とはトレーニングの一部

日常的にトレーニングを行なっていると休養をする事は少し後ろめたい気持ちになりがちですが、R・Fには「休養もトレーニングの一部である」と明確に記述されています。

また、(体に疲労が溜まっていたり体調が悪い時など)無理をして練習をして怪我をするよりも、練習を2~3日休んでしまった方がいいとも書かれています。時折2~3日の休みを取ったとしてもさほど大きなマイナスにはならないそうです。安心して休みましょう。

ただし、以下のような注意点もあります。

長期の休養ではどこかの時点で食習慣を変え、余分な脂肪を溜め込まないようにしなければならない。普段と同じ量の運動ができないときは、身体を適性な状態に保つことが何よりも重要だ

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 Part1 第9章より

これは自分もそうですが、ランナーで日常的に走っている方は日頃からかなりのカロリーを摂取していると思います。(私の場合は1日あたり3100kcalを目安に摂取するようにしています) 休養した時は当然運動量が落ちるので、食事(摂取カロリー)に気をつけないといけないという事ですね。

この休養に関して書かれている章には「休養した日数別のVDOT調整」について詳しく書かれているので、VDOTを使ってトレーニングされている方はとても参考になると思います。

6. シーズンの構築と期分けの考え方

Partllの「フォーミュラを応用する」には1シーズンのトレーニングの組み立て方が詳しく解説されています。この章では最初の方に「誰にとってもベストなトレーニングは、この世に存在しない」と書かれていて、ダニエルズ氏の人柄が伺えますね(笑) それに続けて以下のような記述があります。

我々は全て同じではない。それぞれ個として扱われるべきである。とはいえ、誰にでもあてはまるトレーニングの原則は実際にいくつか存在する。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 Part2 第10章より

ダニエルズ氏は「個々人で最適なトレーニングは異なる」という事が言いたいのではないでしょうか。さらにトレーニングの原則について言及していますが、ここでも重要なのはVDOTです。ダニエルズ氏が生み出したVDOTによってトレーニングの適切な強度が分かるので本当にありがたいですね。では具体的にどのようにシーズンを期分けしてトレーニングを組み立ていけばいいのか見ていきましょう。

シーズンを4つのフェーズに分ける

R・Fでは1シーズン(24週間)を4つのフェーズに分けています。本の中ではすごく丁寧に詳しく解説されているのですが、とても長いので要約すると以下のようになります。

  • フェーズ1 :Eランニングで基礎力を養成するフェーズ。週1でロング走を入れる。

  • フェーズ2:フェーズ1のメニューに加えR(レペティション)トレーニングを入れる。

  • フェーズ3:I(インターバル)トレーニングをメインに行うフェーズ。週2回インターバルトレーニングを行い有酸素性能力に負担をかける。引き続きEランニングも行う。

  • フェーズ4:Tランニング(閾値走)に移行する。

※全てのフェーズでEランニングは行う

上記4つのフェーズから成る24週間でトレーニングを組むそうです。さらに詳しい具体的なトレーニングメニューなども掲載されています。自己流のトレーニングで伸び悩んでいる方、トレーニングの期分けをやってみたいけどどうしたらいいのか分からない方などは一読してみると新たな気付きがあると思いますよ。

7. どの練習メニューにもウィンドスプリントが入っている

R・Fには数々の練習メニューが初心者向け、中級者向け、上級者向けといったようにレベルに合わせて書かれています。その全ての練習メニューにほぼ入っているのがWS(ウィンドスプリント)です。ウィンドスプリントとは以下のようなものです。

ウィンドスプリント(WS)とは、15~20秒間の軽く素早い動きのランニングを、合間に45~50秒の急速を入れて繰り返す練習である。コントロールして走る速いペースのランニングだが、ダッシュではない

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 Part2 第16章より

ウィンドスプリントは「流し」とも言われますね。ダニエルズ先生曰く「ダッシュではない」そうなので、ダッシュだと思っていた方は認識を改めましょう。

このWSはどの練習メニューにも入っているので、ダニエルズ氏が重要視しているのが伺えます。実際に本書の中でも「ウィンドスプリントはランニングエコノミーを高める」といった記述もあります。実際に私も練習の中にWSを取り入れるようになってから、走りの動きが以前より良くなり速いスピードでの巡航が楽になった経験があります。

まとめ

いかがだったでしょうか。自分も忘れていたことや曖昧な理解だった部分が再読したことでスッキリした気がします。「ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 」は上級者、中級者だけでなく、本当に普段全く運動していなくてランニングが初心者という方向けの練習プログラムもあるので、どんなレベルのランナーにもおすすめな本だと思います。


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