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【連載1】伝統の勇者

裕福な家でもなく、学歴もなく、スポーツも微妙、顔も良くなかった私は、大した人生を送れることもなく、なんとなく社会人になった直後、仕事帰りの道でありふれた交通事故に遭い、特にニュースになることもなく人生の幕を下ろした。

なんともつまらない人生だった。
なんでこんな人生だったのだろうか。
努力が足らなかったのだろうか。

確かに、勉強も、運動も、オシャレも対して頑張ったわけでもない。
何か人に胸を張って頑張ったと言えることはなかったのかもしない。

もし、次の人生があるのであれば努力をしよう。
魔王を倒す勇者なんかになれたらいいな。


・・・ふと目を開けると見慣れない世界だった。
周りを見渡すと、見慣れないようでどこか知っている風景。

どうやら、今流行りの「ファンタジー世界への転生」をしたらしい。
ちょっと心が躍った。

その世界では、世界の支配を企む魔王と、それに対抗する王国との戦いの真っ最中だった。
ちょうど魔王との戦いに備え、王は国中へお触れを出し、魔王討伐隊を結成することになったらしい。
私もせっかく転生できたのだからと、この世界で一旗揚げるべく、王宮で開かれるとおいう討伐隊の激励会へ参加してみることにした。

王宮には多くの腕の立ちそうな人々が集まっていた。
そんな彼らを頼もしそうに見渡しながら、王が声をかけた。


ここに集いしわが国の英雄たちよ。
よくぞ立ち上がってくれた。
そなたたちの力を合わせ、この戦いに終止符を打ってほしい。

勇者よ、そなたの父は誠に残念であった。
魔王との戦いに挑んだその勇気に、わが国の民たちはどれほど勇気づけら れたであろうか。父から受け継いだ魔法剣が使えるようじゃな。

戦士よ、そなたは代々我が国の騎士団長の家系である。
その血筋に恥じぬ勇敢さを期待しておるぞ。
その家宝の騎士の剣の切れ味、とくと見せてくれ。

僧侶よ、教会の大司教の孫娘にして幼き頃より聖女と呼び声の高いそなたの清き力で、わが国を危機から救ってくれ。
聖なる杖に込められた神の祝福で多くの民を癒すのじゃ。

魔法使いよ、大賢者がその才能を認め、幾万人の中より選び抜かれた天才児よ。
そなたに備わった無限の魔法力を今こそ解き放つのじゃ。
大賢者より授かりし爆発魔法をついに見ることができるのじゃな。

多くの者は既に王と顔見知りのようだ。
何人もの“英雄候補”に声をかけた後、王は私を見て言った。

あと、もう一人は、、、おお、そこの兵士よ。
そなたは町民の子か?
剣の腕もそこそこ努力はしたようじゃな。
魔法は、、、使えぬか。
仕方ない、魔法は生まれついての才が必要じゃからな。
お主にも期待しておるぞ。


せっかく転生したのに、私の人生はまた、平凡なものになりそうだ。

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