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エッセイ集

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2021年11月の記事一覧

やっぱりうまく笑えない

やっぱりうまく笑えない

花は散り際が1番美しい。花は咲いた瞬間に1番値打ちが付くものだ。花が咲くまでの苦労を、裏側をきっと誰も知らない。だから、咲けなかった花には一切価値がつかずなかったことにされる。本当に咲けなかった花に価値はないのだろうか。無論、そんなことはないと、答えたいところだけれど、誰にも見向きもされない花など一銭の価値もないのだろう。

かおりの恋人の透はよくモテる男だった。いつも周りに女性がいて、恋人が途絶

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溺れるような恋をした

溺れるような恋をした

世の中の恋愛には2種類の恋愛がある。それは誰かから祝福される恋愛と誰にも祝福されない恋愛だ。前者の恋愛はさぞかし楽しいことだろう。誰もが祝福される恋愛を望み、誰にも祝福されない恋愛を忌み嫌う。

あれは2年の前の秋の話だ。会社の同僚と臨んだ合コンで出会った女性に恋に落ちた。顔のパーツの1つずつを分解すれば、タイプではないけれど、絶妙なバランスで並べられた整った顔。キャンプや山登りではなく、お家で読

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「泣いてもいいんだよ」を届けるために文章を書いている

「泣いてもいいんだよ」を届けるために文章を書いている

「なんで文章を書いているんだっけ?」

昨日から目の手術のため病院に入院している。消灯は22時。普段は0時ぐらいに寝るため、まだ睡魔はやって来ない。どうしたものかと困っていると、この言葉が頭の中に急に浮かんできた。

深夜と考え事の相性はとにかく悪いことは有名なお話。そもそも深夜の考え事はネガティブなものが多い。考え事が解決に至れば問題はないけれど、さらにどん底まで落ちてしまう可能性だってある。睡

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なんとかなるさ、なんとかなるよ

なんとかなるさ、なんとかなるよ

朝、目が覚めるといつも隣でスヤスヤ寝ているはずの猫がいなかった。そうだ。僕は今日から入院するんだった。昨晩、姉に猫を預けたのである。いつもは深夜に暴れまわる猫と格闘しているのに、たった1人で物音すらしない部屋でただ眠りに落ちた。

猫がいないだけで、ありふれた日常が非日常になった。それはとても儚くて寂しい。いつもあるはずのぬくもりがそこになく、ただそれだけで、どこか物足りない感覚になって、猫のぬく

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おばあちゃんのサンドイッチ

おばあちゃんのサンドイッチ

携帯のアラームが「ブーブー」と鳴るいつもと変わらない普段どおりの朝。寝ぼけ眼でやけに音量の大きいアラームを手を伸ばして止めた。そのまますぐ起きるかというと、30分近くはベッドでだらだらしている。すると、猫がお腹の上に乗ってきた。ご飯を寄越せとでも言わんばかりの顔で、こちらの顔をクリッとした目でのぞいている。

まだ起きたくないのに重い体を引きずって、猫のためにキャットフードを容器の中に入れた。その

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弱さを見せられる人がいることが本当の「強さ」である

弱さを見せられる人がいることが本当の「強さ」である

2021年11月10日に左目の白内障の手術が決定した。またかよって気持ちとこれで良くなるかもしれないって2つの気持ちがずっと交錯している。今年に入って2度目の手術。手術を伝えられたときはそれなりに落ち込んだ。

いま思えば20代後半は散々だった、気が、する。好きだった人に振られたり、独立してすぐにベーチェット病と呼ばれる難病になったり。いまではあの体験があったからいまがあると思えるけれど、当時はず

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