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料理が苦手な民に贈る小話

少なからず、、、いや、たくさんいると思う。料理が苦手な人。

私はというと、そもそも「腰が重い」。献立を決めて、スーパーに行って食材を買って、キッチンを散らかしながら作り、作り終わって食べるのは5分。一言で言って、「つらみ」である。

一人暮らし世帯が多いこの時代。一人暮らしでも美味しく健康に食事を楽しめる環境が整ってきた。

私が新社会人で一人暮らしをしていたときは、初の一人暮らしにウキウキしながら、たまには料理でもしてインスタに載せて「料理できる女子アピール」でもしてみよかな、と頭をよぎったこともある。

がしかし、実際料理をしてみると、ワンルームマンションのキッチンの狭さに絶望し、一人分の料理を作ることのコスパの悪さに絶望し、「明日も食べるから」と2人分作っておいたものの翌日には急遽飲み会に誘われて、結局余った野菜とともに腐らせて終わるのである。そして最終的にはコンビニの「母ちゃん食堂」的なチンすれば完璧に美味しい一人分の料理に行き着くのである。もう、これでいいじゃないか、と。

そんな私は、異動とともに実家に戻りキッチンも広くなり、「お主、ご飯、作らん気か・・?」という母の視線が痛くなってきた1〜2年ほど前に料理教室に通い始めた。パン、お菓子など様々なコースがある中で私が選んだのは、もちろん「家庭料理コース」。別にシェフになりたいわけではないのだから、家庭料理さえ作れればそれでいい。

そして、この「家庭料理さえ作れるようになればそれでいいから」という考えが、そもそもの過ちの始まりだったのである。



説明しよう。家庭料理を習う、という目的で料理教室に通い始めたことで、わかったことを。

1.料理教室で習う「家庭料理」は、本格的すぎる

料理教室は、「本当の家庭料理」を教えてくれはしない。「本当の家庭料理」とは、お母さんたちが知恵と経験で作り上げた超時短効率的なレシピであり、それでいて美味しい、もはやどこにも流出されていない「その家庭オリジナルの、秘伝の料理」である。

一方料理教室では、「家庭料理を教えるためにお金を取るのだから」という要らん気合のもと、かなり手間のかかるレシピを教えてくる。魚を食べる回には、魚のさばき方や骨抜き。フードプロセッサーがないと作れない「白和え」。数十分かかる煮物。とにかく材料を細かく刻まなければいけない「五目まめ」。

私が知りたいのは、それじゃないのだ。魚を使うときは絶対に切り身を買うからさばき方を教えてくれなくても大丈夫だし、味付けはめんつゆで大体いけます、的なこととかを知りたいのである。でもそれは、教えてくれない。なぜならば、そこにいるのは「私の母ちゃん」ではないのだ。

2.「お母さんの味」を超えられない

料理教室で習う味は、当然ながら自分が慣れ親しんだ「お母さんの味」とは異なる。おそらく栄養バランスも考え尽くされているのだろうし、いわゆる「正しいレシピ」なのかもしれないけれど、それは確実に、私が覚えている「お母さんの味」ではない。

「お母さんの味」は、どれもドストライクだ。しかも、10分やそこらで作ってくれるものが、とびきりに美味しい。

それを知っているからこそ、料理教室でどんなに手間暇かけて作ったものも「うーん、これじゃないんよな、好きな味は・・・」となるのである。もう一度言う。そこにいるのは「私の母ちゃん」ではないのだ。

3.「家庭料理すら作れないんじゃ、料理はできない」という不要な自己嫌悪に苦しむ

自分で「家庭料理さえ作れればいいから」と、家庭料理を料理の中の「最底辺」のように扱ってしまったが故に、家庭料理の壁にぶち当たるたびに「こんなのも作れないんじゃ・・・」と無駄に落ち込んでしまうのである。しかも作ったものは「理想の味」とは程遠いし。

よくよく考えると、作る頻度が違うというだけで、ケーキやお菓子類の方が、よっぽどレシピは単純だったりする。混ぜて焼くだけ、とか、流し込むだけ、とか。(言わずもがな、パティシエさんは天才である。ここでは、家で作るレベルのケーキやお菓子のことを言っています。)

家庭料理を当たり前の存在として思いすぎて、その難しさや手間の多さや隠された工夫や味付けの繊細さを、知らなかったのである。今では、家庭料理は、イッチバン難しい料理だと思う。

肉じゃがも、鯖の煮付けも、炊いたお豆も、筑前煮も。全部当たり前のように食べていたけれど、全くもって簡単には作れないのである。



これらの経験を踏まえて、私が唱えたい一説がある。それは

料理が苦手な人は、「こんなの絶対に家庭で作らないだろ(笑)」と思う料理から始めた方がいい説

である。


この良いところは、3つある。

1.自分の中の「正解」(つまり家庭料理でいう「お母さんの味」)が存在しないから、成功も失敗もないこと

2.そもそもが「こんなの、絶対家で作らんやん(笑)」と思いながらやっているから、「こんなのも作れないんか・・」という自己嫌悪に陥ることがない

3.指導してくる人がいないから、冒険を楽しむことができる


これは、私が料理研究家・土井善晴先生のアプリを観て、ある料理を作ったことをきっかけに発見した説である。それは

じゃがいものニョッキ。


絶対に家で作ろうとは思わない「ニョッキ」。もともとニョッキみたいなモチモチしたものが大好きな私は、これ、作れるんか・・・?というちょっとの疑念とワクワクを抱き、チャレンジすることにしたのである。

詳しいレシピはHPなどをみていただきたいが、この「じゃがいものニョッキ」、めちゃくちゃ簡単でしかもめちゃくちゃ美味しくて、私の中の「どうせ料理できないし自己嫌悪」が払拭された感謝のレシピなのである。

まず、材料が少ない。

【フレッシュトマトソース】
・トマト 2コ(360g)
・オリーブ油 大さじ4
・砂糖 小さじ1
・塩 小さじ1/2
【ニョッキ】
・じゃがいも 2コ(260g)
・塩 少々
・かたくり粉 50g
・パルメザンチーズ (すりおろす)

これ、大体、家にあるくない?????
特別用意するとしたら、パルメザンチーズくらいでは???

工程も、少し手間はかかる(といっても茹でたじゃがいもをほぐして一口大にするくらい)けれど、味の失敗が起きる要素がない。そして、工作みたいで楽しい。(土井先生曰く、綺麗に丸める必要は全くないらしい。子どもも出来る!)

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トマトソースなんて、超絶簡単である。ざっくり言うと、トマトをオリーブオイルで煮込むだけ。

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そして、先ほど形作ったニョッキを茹でて、このトマトソースをぶっかけたら完成〜!

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超フレッシュなトマトの美味しさが溢れ、ぷりっぷりモッチモチの出来立てニョッキを楽しめる完璧な一皿が出来上がりました。

「お母さんの味」があるわけでもないから、「なんか違う」と凹むこともない。ハードルが低くて、かつ楽しくて、新鮮なレシピ。

きっと、料理が苦手な民、特に「苦手意識」が強い民は、こういったレシピからスタートするのが、良い。これが、私が紆余曲折を経て現時点たどり着いた結論である。


ちなみに土井善晴先生は、限りなく家庭料理のハードルを下げようと努力してくださっている素晴らしいお方なので、「料理苦手・・・無理・・・つらみ・・・」と落ち込んだ際はぜひアプリをダウンロードして見てみてほしい。超簡単レシピと軽快なトークで、そんな気持ちも晴れるに違いない。

Sae

「誰しもが生きやすい社会」をテーマに、論文を書きたいと思っています。いただいたサポートは、論文を書くための書籍購入費及び学費に使います:)必ず社会に還元します。