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聞いて欲しいことがあります

15年以上の付き合いになる親友が、死産を経験した。妊娠6ヶ月でのことだった。

いつも、私のしょうもない悩みや弱音を聞いてくれる人だ。その頃も、ちょうど私の「ねぇ〜、結婚しないといけないのかなぁ〜、やっぱり〜〜」という謎の弱音(今思うと、その時どうしてそんなことで悩んでいたのか思い出せないほどだし今は全然悩んでいないから、本当にしょうもない弱音だ)をLINEで聞いてくれていた。

ぷつっとLINEのやりとりが途絶えた。そろそろ会いたいね〜、なんて話もしていた。忙しいのかな、くらいに思って、私は何にも考えていなかった。

連絡が来たのは、2日後だった。「一昨日、赤ちゃんが、お腹の中で亡くなってしまった」「死産をしなければならない」「妊娠5ヶ月を過ぎていたから、産後休暇を取らなければならない」「だからそのうちお茶でもしよう」「重たい話でごめんね」という内容だった。

妊娠していたことすら知らなかった。たぶん、次に会った時に直接報告しようと思ってくれていたのだと思う。

たった2日で、大きく変わってしまった。たった2日だ。その状況でたった2日で、私に連絡をくれた彼女は本当にすごいと思ったし、「重たい話でごめんね」だなんて、優しすぎるんじゃないかと思った。

多感な青春時代を共に過ごした人だから知っているけれど、彼女は本当に繊細な人だ。そして、とんでもなく優しい。弱った時に連絡すると、いつもいつまででも話を聞いてくれる人だ。深夜にLINEで送った相談事には、「考えて送るから、先に寝てていいよ、朝読んでね」とわざわざ言ってくれるような人だ。朝起きると、必ずものすごい長文のLINEが届いていて、私はそれを読んで、暖かい気持ちで1日をスタートさせるのだった。

さっき書いたみたいな一過性の甘ったるい悩みをぶつけても、「現実みなよ」とか「本当にそれでいいの?」とか「さえちゃんが悪いよ」とは言わない人だ。「さえちゃんはそのままがいいよ〜」「それはさえちゃんの感じ方・考え方を理解してない人だからそう言ったんだよ〜」と、一緒に悲しみ、一緒に怒り、そして励ましてくれた。まるで私が100%正しい人のように勘違いしてしまうほどだ。そんなはずはないのに、そう思ってしまう。それくらい、優しい。

そんな優しい彼女だから、今回のことも、落ち着いたあと、とても真摯に教えてくれた。死産というものがどんなものだったのか。どんな風に辛かったのか。パートナーと、どんな風に日々を過ごしているのか。何に苦しんでいるのか。生まれてきた赤ちゃんに、なんて名前をつけたのか。どんな風に、お別れの時間を過ごしたのか。

私は、妊娠・出産を経験していない。自分の身体の中に命が宿る感覚も、子を産む辛さも幸せも、子を失う辛さも、何もわからない。わからないけれど、寄り添いたいとは思った。悲しかった、辛かった、でも会えてよかったのかな、って。その一つ一つの感情を、拾いたかった。

これは私の経験ではないから、私が語るのはこれぐらいにしたい。むしろここまででも、書き過ぎたくらいだと思う。

でも、このnoteを書くにあたって彼女は「さえちゃんの言葉で伝えてくれるなんてこんなに嬉しいことはない」と言ってくれた。ね、本当に優しい人でしょう。

そんな彼女が、こんなクラウドファンディングのプロジェクトがあることを教えてくれた。

当事者の方たちが立ち上げた、流産・死産・新生児死などで赤ちゃんを亡くされたご家族の心のケアの必要性が、世の中でもっと広く知られますように、と、願いと祈りが込められたプロジェクト。

もちろん、少し前の私のnoteにも書いたように、個人の経験は個人の経験でしかない。どんな経験をして、どんな風に感じ・思い、そしてどう受け止め、他人にどう接して欲しいのかは、人それぞれだし、一概に括ることはできない。

ただ、だからと言って「何も知らなくていい」とか「どう接したらいいかわからないから触れないでおく」が正解かといえば、それも違うような気がする。

こういう話はデリケートだから難しいところではあると思う。けれど、こういう経験をしている人は、思った以上にたくさんいて、すぐ隣にいる人も、経験しているかもしれないことだ。もしかしたら、これを読んでくださっている方にも、いるんじゃないかと思う。

「腫れ物に触るかのように遠のくのではなく、一緒に赤ちゃんのことを、そしてこの経験を、想って欲しい」と彼女は言っていた。

そのために少しでもできるのは、知ること・想像することだと思う。

このプロジェクトは「啓発」を目的としたものだ。必ずしもお金を入れて欲しい、というお願いをしたいわけではなく、少しでも知る人・関心を持つ人が増えれば、という思いでこれを書いている。彼女の少しでもの一助になれれば、と思い。

↑このプロジェクトの概要欄を、ぜひ一読してみてください。

そもそも流産・死産というのがどういうものなのか、それらを経験した母親はどんなことに苦しむのか、どんな風に過ごすのか、そして母親だけでなく、父親、祖父母、赤ちゃんの兄弟など、それぞれの立場でどのような感情に苛まれるのか、現在の医療体制・サポート体制など、様々な視点で詳しく書かれています。

もう一度言うけれど、医療そのものに関する知識もそうだし、それぞれがどのような感情を抱くか、についても、どれも一概に言えることではないと思います。鵜呑みにして欲しい、とは全く思っていなくて、ぜひ考えるきっかけにして欲しいという思いだけです。私も、経験者ではない立場で書いています。何に詳しいわけでもありません。ただ、「知る」ということには、ものすごく大きな価値があると思っているのです。これは、私がこのツールで文章を書き、読み、出会い、感じたことでもあります。

長い文章を読んでくださって、ありがとうございます!
どうか多くの方に届きますように。



Sae

「誰しもが生きやすい社会」をテーマに、論文を書きたいと思っています。いただいたサポートは、論文を書くための書籍購入費及び学費に使います:)必ず社会に還元します。