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自主映画を、撮る。その23

(※スチール担当の後輩ちゃんが、主宰の後ろ姿を格好良く収めてくれました)

10月21日(金)、午後9時。(2022年執筆)

(※撮影の都合上、映像が上下反転する場面がございます。予めご了承下さい)

全体会議が始まりました。案の定、参加予定のメンバーがちらほらいない。まあこんなもんですよ。主宰含む脚本班4名が2時間で拵えたプロットをまずはプレゼン。そこから監督や役者、また撮影クルー含めた質疑応答の時間を設けさらに作品性に奥行きを持たせていく。2つ引いた作品テーマのうち、採用されたのは「モキュメンタリー」つまり架空のドキュメンタリーです。

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、『パラノーマル・アクティビティ』辺りを思い浮かべていただけますと話が早いです。監督から真っ先に質問が飛んだのも、まずは撮影・編集技法に関する部分で。つまり、作り込まれたモキュメンタリーを目指すのか。荒編集あるいは素材そのものかのような、ラフな仕上がりをイメージしているのかという点。なるほど。

「モキュメンタリー」をどう定義づけるか。

監督の見立てはどうやら後者だったよう。作り込むのなら本当に誤魔化しが効かない、それなりのマスター映像と編集力が必要。他方、後者の方がよりモキュメンタリー色を濃く打ち出せる余地が大きいのでは。激しく同意で。例えば警察24時や藤岡弘、探検隊あるいはクレイジー・ジャーニーなんかも広義に捉えれば「モキュメンタリー」の一種であって。

米仕込みのリアリティショーが撮ってみたい、なんて声も挙がりましたよ。途中で演者のインタビューがインサートされるあの感じね、面白ぇじゃねえか。なんて話が脱線していくうち、いつの間にやら当初の脚本案がボツっていく雰囲気が漂った。嫌な予感。とりあえず明日の大まかなキャスティングと衣装、集合時間と持参物の確認まででざっくり2時間。時刻は23時。

深夜の泣き落とし大会、開幕。

撮影組の集合は朝8時に最寄駅と決まりました。脚本班は23時過ぎから翌朝にかけ台本をまとめ、ト書に演出プラン等仔細に書き残しあわよくば寝る。のつもりでしたが当初の予定と全然ちがーう、全く異なる作風でゼロベースで書き直すハメに。流石にこれはいかん。もう脚本班以外全員クレイジー・ジャーニーを撮る気満々でいますが、全然ちがーうおもてたんとちがーう。

という訳で監督に無理言って、五者面談のチャンスをもらいました。結果、泣き落としは2時間に及び。時刻は1時半。監督は朝7時半に現地入りし脚本班と細かな擦り合わせを行う運びに。一人、また一人と睡眠時間が奪われてゆく。でもなかなかにエモい2時間でしたよ。最年長の主宰はできる限り、泣き落としには加担せずじっと後ろから後輩達の様子を見守りました。

「後輩達が主役になれる」48時間を。

結局、オイシいところは全部年長者が持ってくんでしょ。後輩達は最後まで後輩ムーブを強いられるだけなんでしょ。そんなものは、真平ごめんです。監督、僕らが決めた脚本案でもっかいやらせてくれませんか。せっかく一生懸命作ったのに、あの数時間は何だったんですか。「モキュメンタリー」の作風にあれだけ強いこだわりがあるのなら、どうしてもっと早く。

良いですねえ、エモですねえ。主宰はもうお酒が呑みたくて仕方ありませんでした。彼らは本当にこの日のために、色々と賭けて臨んで来てくれたのだなあと伝わりました。監督が全体会議まであれこれと隠し球を用意していた意図も、凄く理解できた。彼もまた予定調和を嫌う人間ですから。その場で生まれた感性をいかに盛り込んでいくのかも、また重要なファクターで。

脱稿、午前5時40分。

泣き落とし2時間からの、台本執筆4時間。48時間映画祭、マジで正気の沙汰じゃねえわ。ストップウォッチ片手に、途中立ち演技も交えながらの楽しいひと時。弱冠1歳半のパパもお疲れの中深夜遅くまで付き合ってくれました。途中、撮影班から差し入れが届くという衝撃の展開までありましたが、彼らはあの後ちゃんと眠れていたのか。怖くて打ち上げでも聞けず仕舞いで。

物書きについても赤素人ですから、大筋は後輩3人に託して細かな言い回しやニュアンス/イントネーションをグチグチ言う、文字通りおじきムーブに徹しまして。ただ一つ、後悔が残ったとすればそれは。本戦前に飛び込んだまさかの訃報に対する主宰なりのアンサー、仲本工事さんネタを放り込めぬまま脱稿を迎えた点でしょうか。これもまた、別の機会を見つつ。

起床、6時半。

本当は7時まで寝て良いことになってたんですけれど、あまりに全体LINEが騒がしいもので。何か台本に致命的な欠点が見つかったか、あるいはその、クレイジー・ジャーニー撮るって言ってたじゃないですか的な後輩ジャブ。等々色々な不安が頭を過り32のおじきはすぐさま内容確認。結果、後輩からの激励メッセージばかりが並んでおりまして、ますます不安になったり…笑

監督は7時過ぎに来ました。予定より30分近く早く。後々彼に聞いてみるとちゃんと眠れはしたが朝ご飯は喉を通らなかったそうです。僕も同じです。巻き進行に越したことはありませんからすぐ撮影現場入り、脚本の詰め作業に移行していきます。ト書と監督の映像イメージとを照らし合わせながら、このシーンはこの部屋で、あのシーンはこのくらいの間取りで等々。

午前8時過ぎ、無事全員到着。

無駄話一切ナシの、非常に緊迫したそれでいてクリエイティブ全開の数十分でした。幸い一人の遅刻者も出ず、朝イチミーティングまでスムーズ進行。各人「もしこんなの使えたら」的小道具を持ち寄ってもらったところ、あるじゃない良いものが。なんでこんなの持ってんの的笑いも生まれ終始和やかでした。監督が持ってきた水銀体温計は、実は主宰宅と同タイプのもので。

彼もまた32のおじき、後輩3人にしぬほど泣き落としされていたおじき。某100円ショップの開店時間を待って、最年少組にちょこちょこした買出しを頼む。その間、主役級2人はクランクインへ向けて台本片手に設定の確認。モキュメンタリー調ですから、最初から息の合った演技をし過ぎると不自然か。チューニングしながらお芝居が進行していく、何かそんなイメージで。

エセ演出家、主宰(※睡眠時間1時間弱)の流儀。

ああして下さい、こうして下さい、と1から10まで伝えた役者さんもいれば。敢えて何も伝えずとことん考え込んでもらった役者さんもいます。憑依型もいれば天才型もいたので、その人に合った演技/演出プランを考え主宰なりに今回アウトプットしてみたつもりで。その辺り、完成版で是非感じ取っていただけたら幸いです。意識してオーダーした点は、イントネーション。

例えば標準語の芝居中つい関西弁が口をついて出る瞬間ってありますよね。その時重要なのは、単語のどこに重点を置くか。語尾が強くなっていくのが関西弁なのだとしたら、文節あるいは単語のアタマにアクセントを置くことで自然と右下がりのイントネーションを作り出せる。喋り出しが聞き取りにくい、なんて問題も併せてクリアできる可能性が高い。一石二鳥。

次回、撮影後編→編集作業編へ。

午前の撮影はおおよそオンタイム進行、なんなら若干巻きくらいのペースで順調に運んでいきました。途中いくつか変更点もありましたが、シーン順に撮り終えて無事各人の昼食タイムも確保。とは言っても主宰はどうもこう、胃が酸っぱい気がしてお夜食のバナナ1本以来となるあさげ1杯のみで午後撮に臨むことに。勿論、突如襲い来るであろう睡魔も考慮に入れつつ。

先にネタバラシしてしまいますと。脚本班脱稿から丁度12時間後となる午後5時半過ぎに、本作はオールアップを迎えました。10時クランクインですから7時間半くらいの戦い、普段の映画部での撮影とさほど遜色なく、むしろ役者NGの極めて少ない素晴らしい現場だったと今振り返っています。ただ、ここからもう一山越えましたよ我々は。次回どうぞお楽しみに。

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