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Museum für Gestaltung Zürich|チューリッヒデザイン美術館

Museum für Gestaltung Zürich, Ausstellungsstrasse 60

SEA SONS PRESSはブックフェア参加のためチューリッヒに滞在しました。本日はその間に訪れた Museum für Gestaltung Zürich(チューリッヒデザイン美術館)をレポートします。

ここはスイスを代表するデザインミュージアムで、1875年に設立されました。美術館は二つの建物に分かれており、今回訪ねたのはその内の一つ。
ここは1933 年、Neues Bauen(新しい建築)という建築運動の中で、スイスの建築家Adolf Steger & Karl Egenderによって設計されました。〔→資料

ショップとカフェが併設されたエントランス

Posters by Celestino Piatti

Celestino Piatti (1922-2007) はスイスのグラフィックアーティスト。大らかな筆遣いと色彩がとても美しいです。一見すると大胆に描かれて見えますが、その形と色彩には、非常に考え抜かれたものがあります。

Celestino Piatti (1922-2007, スイス)
コンデンスミルクのポスター, 1958年
Erholung mit einem Buch (本を読んでリラックス)

Queens of their Discipline – Posters by Women Designers

ここからは、女性デザイナーたちの手がけた国際ポスター展。

Franziska Burkhardt (*1972, スイス)
Laurie Anderson/The End of the Moon, 2006
Irma Boom (*1960, オランダ)
Every Thing Design, 2009

オランダのブックデザイナー Irma Boomが手がけた、この美術館の収蔵品展のポスター。見慣れたピーラーがまるでドローイングのよう。

Elli Sieber (1925/30-1953, スイス)
Winter Sports? Fly there by Swissair, 1950
Lily Boesiger (1915-1991, スイス)
Le Corbusier/Architektur/Malerei/Plastik, 1957

こちらはLily Boesigerによる、Le Corbusier(ル・コルビュジエ)の展覧会のポスター。シンプルな図形の重なりに、空と建築が見えてきませんか?

Elena Kitaeva (*1968, ロシア)
Welcome Viscom Moscow, 1994

ロシア構成主義を代表する、Aleksandr Rodčenko(アレクサンドル・ロトチェンコ)のデザインを利用したポスター。時代の風を感じます。

Isolde Monson-Baumgart (1935-2011, ドイツ)
Kieler Woche, 1969

Kieler Wocheは、ドイツ・キールで開催されている世界最大の帆船イベント。シンプルな色面と線で、ダイナミックに波と帆の両方が表現されています。大胆な余白は日本画にも通じて見えますね。白に見える部分は、実物では銀色でした。

Anke Feuchtenberger (*1963, ドイツ)
Kongress/Wi(e)der die Vereinzelung!, 1993

ドイツ・ベルリンで開催された独立女性協会 (UFV)の大会のポスター。強い黒づかいで、ドイツ表現主義版画の流れを感じる一枚。デザインもイベント内容も、とてもドイツ的だなと思います。

Clarissa Herbst (*1959, スイス)
Nina Hagen, 1994

「パンクのゴッドマザー」ニーナ・ハーゲンのポスター。旧東ベルリン出身で、メルケル元首相の退任式で演奏された“Du hast den Farbfilm vergessen”(カラーフィルムを忘れたのね)が記憶に新しいです。ブラスバンドによる演奏は感動的でした。


Workshop Room

館内にあるワークショップルーム。ここで何が生まれるんだろう?とワクワクする空間でした。

建築のこうした細い鉄格子や古いガラス、無骨なペンキ跡が、1930年代の雰囲気を醸し出しています。こうしたモダニズム建築を訪れるといつも、空間の記憶がとても長く残ります。(噛めば噛むほど味が出る)

Design Kids Club, 8-12歳を対象にしたプロジェクト
針金と紙やテープで作られたミニチュア家具

遊びを通じてデザインのプロセスを学ぶワークショップ、Design Kids Club。これらの模型の中に、デザイン的な思考が息づいています。

棚や机のいたるところに並んだ木製の版
手彫りで、おそらくとても古いもの。

幼い頃からこうした物に親しむ文化が、スイスデザインを生み出す秘密なのかもしれませんね。


6 Rooms x 6 Positions

現代スイスを代表する6人のデザイナー監修による、6つの部屋。

Tavolata, 監修: Sebastian Marbacher
Myths, 監修: Jörg Boner

3つのマリオネットはSophie Taeuber-Arpのデザイン。その独創的な造形に魅了されました。


Collection Highlights

コレクションハイライト。スイスデザインの名作たちが並びます。

黒い展示台は引き出しになっていて、その中にも資料がたくさん
Antonio Vitali (1909-2008, スイス)の木製玩具

彫刻家・おもちゃデザイナーのAntonio Vitali (アントニオ・ヴィターリ)。彼の木製玩具は、シンプルでやわらかなフォルムが特徴です。非常に単純化されたその形は、子供だけでなく、大人の想像力にも働きかけてきます。

Kudelski社, Nagra SN, オープンリールレコーダー。
絶対使わないけど欲しい。
中央のコミック時計がなんとも言えない。
Adrian Frutiger (1928-2015, スイス)
書体「Univers」のデザイン原稿, 1953
「Univers」のデザインプロセスを垣間見る貴重な資料。
印刷に見えますが、手描きです。
こちらもFrutigerの手による原稿。まるで禅のよう。
Wolfgang Weingart (1941-2021, ドイツ-スイス)
Moon Rufen, 1970-1972
Josef Müller-Brockmann(1914-1996, スイス)
Otto Müller (1905–1993, スイス)
ダンボールのアーカイブは、まるで詩のようでした。

いかがでしたか?清潔で知的、そして優しいスイスデザインの世界を感じていただけたなら嬉しいです。

チューリヒに訪れる際は、デザインに興味のある方もない方も、ぜひ一度訪れてみてくださいね。

…それでは、最後までお読みくださりありがとうございました!


Museum für Gestaltung Zürich
チューリッヒデザイン美術館

Ausstellungsstrasse 60, 8005 Zürich
https://museum-gestaltung.ch/

悪臭追放。
トイレにて


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