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2021年ベスト映画 トップ10

2021年の劇場公開映画で良かった作品を10本選んでランキング化。今年はとんでもない邦画の豊作でした。実は上半期ベストから3本しか変えてないのです。今後2020年代を振り返る上でも外せない作品が山ほど公開されました。


10位 JUNK HEAD

映画監督未経験の内装業者・堀貴秀氏が熱意と執念で仕上げたコマ撮りアニメ映画。途中まで一人で作ろうとしてたと知れば驚愕せざるを得ないほどに精緻に作り込まれている。滑稽かつグロテスクなキャラ造形、血と皮膚と肉を強く感じるモーション、地下へ向かうスリルを伴ったディストピアSFなストーリー。好きなものを複合し、好きな世界を掌から創出する、こんな理想的な在り方がある?デザインは異形だが意外と王道の冒険譚な点も好みだった。三部作構成のため、物語としては途中で終わるのだけど満足感は充分。



9位 偶然と想像

濱口竜介監督による短編3本からなるオムニバス。タイトル通り、良い偶然、悪い偶然、良い想像、悪い想像が複雑な相関で絡み合って転がる心ざわつく人間模様。それぞれに繋がりがあるわけではないが、1つの作品に収まることで相補的に意味が膨らんでいくという、滅多にない映画体験だった。3話ともに共通する“密室で2人“というシチュエーションにより、緊迫と親密が立っては消える。2人の間で果たされた交感が外から見られ、外に持ち出された途端に何が起こるのか。愚かで、だけども愛おしい、選択と受容の瞬間がここに。


8位 あのこは貴族

山内マリコ原作小説を岨手由貴子監督が映画化。「パラサイト」や「万引き家族」とはまた角度の異なる“階層”のモチーフで、息詰まるような閉塞感とともに凛とした解放感まで描いていてポジティブな強さがあった。自分が生まれた場所の基準でしか世界のことを知れず、その世界のルールでしか生きることができない。一方で、自由であればあるほど不安定な世界を生きねばならない。その“どこへもいけなさ”を脱するために、これほどの痛みが必要な社会とは一体、、?と。せめて心だけは自分のものだけで満たしたいな。



7位 シン・エヴァンゲリオン劇場版

庵野秀明が手掛けてきた一大巨編の完結作。これを単体の映画として評価するのはすごく難しいのだけれど、連作としての面白さを抜きにしても圧倒的な画の力があったように思う。大人になることを拒絶してきた物語をいかにして終わらせるのか。期待に応えるための切迫感と自信の作家性を追い求めた先に現れた歪だがこれしかありえないと言い切れるエンディング、鳥肌。



6位 くれなずめ

松居大悟監督が自身の劇団「ゴジゲン」の作品を映画化。高校時代の帰宅部仲間のノリ、その良くも悪くも眉をひそめちゃいそうなテンションで突っ走り始める物語は主人公演じる成田凌の一言で大きく様相を変える。思いこもうとする、忘れないようにする、飲み込んだり消化したりしないようにする、どんな思いだって肯定する、喪失と"大人になれなさ"についての話。



5位 猿楽町で会いましょう

MVや広告業界でも活躍する児山隆監督の初長編作品。駆け出しのモデルとフォトグラファー、その一見キラキラした青春譚が中盤から急激にべっとりとした不気味さに包まれ、鑑賞中に逃げ出したくなるほどだった。空虚な自分をコーティングし肉体と精神が蝕まれていく、それを当人のキャラクター造形として描くだけでなくそうならざるを得ない現行の社会構造までもある意味公平に描いた観察映画だと思う。更に非モテ側の人間はこういう物語に参入すら許されないことまでも刻んであってとてつもなくグロテスクだった。



4位 サマーフィルムにのって

三浦直之(ロロ)脚本、松本壮史監督、伊藤万理華主演による青春映画。文化系部活モノ、映画愛モノとして令和の金字塔を打ち立てたのではないだろうか。様々に理屈をつけ、自分の”好き“すらも人目を気にしなければならないような不条理な時代において、なりふり構わず好きを叫ぶ姿は頼もしく眩しかった。


3位 街の上で

恋愛映画の旗手・今泉力哉監督が漫画家・大橋裕之との共同脚本で紡ぐ恋愛と友情と知り合いとそのどれでもない関係にまつわるドラマ。下北沢の街を舞台に出会っては別れ、巡っては残る、そんな流れゆく毎日のことを淡々と綴った1作。上半期の中だと、劇場で声を出して笑った箇所が最も多かった。



2位 ドライブ・マイ・カー

濱口竜介監督作品。3時間に及ぶ、コミュニケーションにまつわる映画。徹底的に抑制されたトーンの中で徐々に感情が溢れていく場面が美しかった。様々な言語や言葉ではない伝達、そして“創作の物語”が交差しあいながら、理解と救いの存在をもう少しだけ信じたくなる。三浦透子は最優秀俳優賞だった。


1位 すばらしき世界

西川美和、初の原作つきの長編映画作品。圧倒的な強度がある作品ゆえ、言葉を添えることも意味を為さないと思うのだが、あえて言うならば自分もまた社会復帰を手助けする職業をしている身として、この苦しさともがきは痛切なものとして届いた。信じたい、でも信じられなくなる、ただ今度こそは、と何度も思う。そして辿り着いた先で何が待つか。その景色を、2021年に横たわっている現実として受け止めなければならないこの世界とは、、、と途方に暮れそうにもなる。気づいていないフリをしている場合じゃない。



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