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「生きるヒント2」 五木寛之

「夢見ることは、人間にとって大事なことです。心にも大事だし、体にとっても大事なのではないでしょうか。」



「生きるヒント2」 五木寛之



前回の「生きるヒント」に続き、毎晩寝る前にこの本「生きるヒント2」を1章ずつ読みました。


一日の終わりに読む五木寛之さんの言葉は、疲れを癒すように体中に沁みわたりました。


各章ごとのテーマが「感じる」「夢見る」「認める」「出会う」「愛する」というように12章ありまして、今回惹きつけられたテーマが「夢見る」です。


「眠っているあいだに見る夢には、不思議なものがある」という話からこの章ははじまります。


僕は就寝中あまり夢を見る方ではないのですが、五木さんはよく夢を見るといいます。それも辻褄が合わなかったり、奇妙に現実味がある夢をよく見るのだそうです。


そこから同じ漢字の「夢」、「私の夢は〇〇です」というような希望を思い描く「夢」の話につながります。


そして、このように五木さんは語ります。


しかし、人生における夢というものは、必ずしも期待したとおりにはいかないものです。

むしろ夢の何分の一かでも実現できたならラッキーだ、と思っていいのかもしれません。


「夢が少しずつなくなっていくことが、老いていくことなのかもしれない」という五木さんの言葉が自分自身にも思い当たり、しばらく考えていました。


すると、そこから親鸞の話になりました。


親鸞は、十二世紀から十三世紀にかけて影響を残した宗教家です。


親鸞の語った言葉をまとめた「歎異抄」は信仰を持つ人だけではなく、科学者、政治家、芸術家など現在も幅広く読まれています。


親鸞の思想の一つに「他力」という考え方があります。「他力本願」という言葉がよく使われていますよね。


自分は何もしないで他の人をあてにする、という意味で<他力本願>という言葉はよく使われるのですが、本当の意味は、もっと深い思想にもとづいています。


僕もそのように「他人をあてにする」という意味で<他力本願>という言葉を使っていましたが、ちょっと違うのですね。


親鸞は<絶対他力>という言葉を使っていて、五木さんは「他力」をこのように説明しています。


私たちは自分ひとりの力で生きているわけではありません。私たちが生きていく上には、さまざまなものが必要です。太陽の熱、そして光、空気、水。また植物や他の生物たち。

(中略)

人間は家族とか友人とか、また仕事とか、社会とか、そういったなかに生きているわけですから、まったくひとりぼっちで生活していくわけにはいきません。

生きている、ということは、とりもなおさず、他から生かされている、ということでもあります。


このあと五木さんは、一艘のヨットを例に出し「他力」について語ります。


ヨットが進むには、風が吹かないと進みませんよね。また、風が吹いてきても帆を張っていないと風を受けて進みません。


そう考えると、私たちは何らかの形で、風という大きな力をじっと待ちながら、自分なりの帆を張ることを忘れてはならないのです。


自力で一所懸命頑張っても、風という「他力」がないとそこから進んでいけませんし、帆を張るという「自力」がなければ、夢は実現しないのかもしれません。


自分の思いと他人の思い、それに加えて目に見えない大きな力が合わさったとき、夢を叶える大きな力が生まれるのでしょう。


それには日々努め、感謝し、夢を見続けることが大切なのではないかと思い当たりました。


しかし、夢は必ずしも実現しなくてもいいのです。むしろ夢は夢にとどまるからこそ、意味があるのかもしれません。

(中略)

夢見ることは、人間にとって大事なことです。心にも大事だし、体にとっても大事なのではないでしょうか。

(中略)

そんな夢が豊かにいきいきとたくさん存在するような社会こそ、本当の意味での豊かな社会、と言えるのではないでしょうか。


この言葉を読んで、夢が叶うか叶わないかは考えず、自分の心が喜ぶような小さな夢を見続けようと思いました。


あとは「どんな風が吹いてくるか」楽しみにして。



【出典】

「生きるヒント2」 五木寛之 角川文庫


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