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#44『ドミノ』(著:恩田陸)を読んだ感想

恩田陸さんの『ドミノ』

女優の松岡茉優さんが YouTubeの #木曜日は本曜日 のインタビューの中で、「人生を変えた本」として挙げていた作品です。僕はこのインタビュー動画を見たのがきっかけで読みました。


あらすじ

一億円の契約書を待つ、締切直前のオフィス。オーディション中、下剤を盛られた子役の少女。推理力を競い合う大学生。別れを画策する青年実業家。待ち合わせ場所に行き着けない老人。老人の句会仲間の警察OBたち。真夏の東京駅、二七人と一匹の登場人物はそれぞれに、何かが起こる瞬間を待っていた。迫りくるタイムリミット。もつれ合う人々、見知らぬ者同士がすれ違うその一瞬、運命のドミノが次々と倒れてゆく!抱腹絶倒、スピード感溢れるパニックコメディの大傑作。

「BOOK」データベースより

感想

  • とにかくカオス、かつシュール

  • 主人公たちの話の噛み合わなさに笑えた

  • 無関係に見える人たちも、読了後は意識して見てしまいそう?


たまたま同じ時間に東京駅にいた27人と1匹の主人公。本来全く関係ないだろう目的が異なる彼ら彼女らが、些細なことで次第に結びついていく。そして、彼ら彼女らがピースの一片となり、タイトルの通りドミノ倒しのような展開を迎えます。


とにかくカオス、かつシュール。これが本作の何よりの第一印象です。
主人公が20人以上いる作品を読んだのは初めて。1億円の契約書類を待つ保険会社の職員、ミュージカルのオーディションを受けた子役の少女とその親、オフ会で集まる俳句仲間、別れ話を持ちかけるため従兄弟を引き連れた青年など他にも濃いキャラが多数。目的は違えど場所は同じ東京駅にいる、そのことである出来事に巻き込まれます。

物騒なことが起きているのに、それを感じさせない呑気な雰囲気がありました。それは、主人公たちがそれぞれの目的に一直線だったからだと思います。読んでいると全体を俯瞰して見えるけど、主人公たちにとってみれば真っ直ぐにしか見れない。だから、一堂に会した主人公たちの話の噛み合わなさはとにかく笑えました。


登場人物の多さ、次々と視点が変わる展開に、序盤は僕の頭の中もカオスになりそうでした。しかし、何かが結びつく瞬間は分かりやすく、物語が進むにつれて主人公たちが濃く映し出される印象がありました。

僕が印象的な人は、俳句仲間の一員である俊策さん、子役の麻里花ちゃんと玲菜ちゃん、映画監督のフィリップとペットのダリオ、正博の交際相手の佳代子、生命保険会社社員のえり子。
子役の2人が一番冷静で大人に見えたのは気のせいでしょうか?痴話喧嘩のやり取りにおける佳代子の感情の起伏の激しさ、営業部長が東京へ向かうまでのやり取り、生放送での放送事故など、思わずツッコミたくなる場面が所々であり笑えました。


冒頭文のように、一見偶然に見える物事でも実は必然的に結びついているのかもしれません。

街を歩いていてすれ違う無関係に見える人々。でも実は本作のように何かしらの結びつきが生まれているかもしれない。そんな予感がして、読了後は意識して見てしまいそうな感じがしました。人の繋がりがテーマの心温まる作品ではそう感じることはありますが、まさか本作でも感じるとは思いませんでした。

印象的なフレーズ

人生における偶然は、必然である――。

『ドミノ』

「緊張するってことは、それがあたしにとって大事なことなんだなって思うんです。その時間はどきどきして、いつも学校や家で感じている時間とは全然違って、三倍くらいの長さに思えます。こんなに緊張するってことは、これからあたしがやろうとすることはあたしにとって大事なんだって思うから。大事なことは大事にしなきゃって」

『ドミノ』

強いというのはねえ、いつもきちんと周りを見ていて、自分が何をしなければならないかちゃんと決められる人のことを言うんだよ。

『ドミノ』


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