科幻万華鏡

みちのくからSF情報をお届けするSFウェブジン。マイペースで更新していきます。

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マガジン

  • SF読書交換日記

    課題作を読み、感想を書いて次の担当者と課題作を指定して回すSF読書交換日記を集めたもの。詳しいルールやレギュレーションは第0回でご確認ください。

  • 『卜部理玲』の作り方

    Vtuber『卜部理玲』の技術公開記事を集めたもの。

  • SF書評集

    科幻万華鏡のSF書評集です。

  • SF小説集

    科幻万華鏡の記事から小説を集めたものです。

  • 非英米SFを読む

    イギリス・アメリカ(とオーストラリア)以外の、非主流SFの書評集です。当面はイタリア・チェコ・フランス・ソ連のSFの書評を行う予定です。中国SFは独立して別のマガジンに収録します。

最近の記事

  • 固定された記事

SFウェブジン、はじめました

 『科幻万華鏡』編集長の下村思游です。  突然ですが、SFウェブジン『科幻万華鏡』をはじめました。  これまで、私たちは東北大SF・推理研の一員として、東北大SF研の紙媒体の機関誌『九龍』の発行などを通じてSFファンとしての活動を続けてきました。しかし、仙台に住んでいる都合上、東京などで開催されるSFや創作に関連する大きなイベントに参加することが難しく、交流や発信をしようにも機会に恵まれないという状況が続いています。  そこで、立地や時間に左右されないウェブ上で新たにメデ

    • SF読書交換日記 第3回 ルーシャス・シェパード「竜のグリオールに絵を描いた男」

      あまりにも巨大な竜、グリオール。その肉体は活動をやめて久しく、今ではそこに川が流れ、木々が生い茂り、そして人々の生活の場となっていた。しかし、グリオールの精神は未だ健在であり、人間を含めた周囲の生命すべての意思を支配し、自身の周囲に束縛していた。そのグリオールに完全な引導を渡すべく、一人の男が名乗りをあげた。曰く、グリオールの体表に絵を描き、絵の具の毒をもって殺すのだ、と……。 今回この作品を読み直して、俺はファンタジー世界で大きなことを成す、という小説が好きだ、ということ

      • 卜部理玲ちゃんの動画の撮影手順

        Vtuber『卜部理玲』の技術公開第一弾として、過去に投稿した動画の撮影手法を公開する。 おことわり本稿で紹介している手法は,動画撮影やVR開発の知識のない人間が,2019年2月の時点で販売・公開されていたハード・ソフトウェアを用いてVtuber動画を作成する際に用いたものです.よって,コンテンツ作成の技術のある方からは,非効率だ,あるいは未熟だと思われてしまうようなものかもしれません.加えて,下記に取り上げるハード・ソフトウェアの中には,現時点(2020年9月)で販売・公

        • SF読書交換日記 第2回 宮内悠介「盤上の夜」

          面白い。が、なにが面白いのかを端的に表現することが難しい。この再読が何度目になるのかはわからないものの、読むたびに面白く読んでいることは確かだ。 語り手は<わたし>。記者である<わたし>の目線を通して、読者は後天的に四肢を奪われた異形の囲碁棋士灰原由宇の足跡を追うことになる。 これは本作のあらすじとしてさほど的を外してはいないはずだ。まとめてしまうとひどく簡単なように見え、実際に読んでみると、やはりずれを覚えずにはいられない。しかしながら、読み通してみてなにか驚くべき秘密

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          4本
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          1本
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          13本
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        記事

          SF読書交換日記 第1回 星新一「処刑」

          何度読んでも冒頭2ページから圧倒される作品。 銀の玉ただ一つを持たされ、広大な大地にとり残された男。生きるために必要な水は球体のボタンを押すことで得られる。ただし、銀の玉にはいつ起動するか知れぬ爆弾が組み込まれていて…。 文明が進展し、機械によって罪を裁かれるようになった社会。罪人の最終流刑地となったかつての新天地、赤い惑星でいつか来る「処刑」のときを待つ日々。単語一つ一つが的確に選びぬかれているため、多すぎない文章量で作中の社会構造や男の置かれた状況を過不足なく説明して

          SF読書交換日記 第1回 星新一「処刑」

          SF読書交換日記 第0回

          この春以来、本についてだれかと直接話す機会がまったく失われてしまった。多忙な中でも合間を縫うように読書はしているが、他人と読書体験を共有する楽しさを覚えた身にはどこか物足りない。 それじゃあ互いの交流を促すようなことを企画しようということで考えついたのが、このSF読書交換日記だった。 ルールは簡単、前の人が指定したSF作品を読み、感想を書いて次の人と課題作を指定すること。なお、円滑化のため、以下のレギュレーションを制定した。 SF読書交換日記:レギュレーション ・課題作

          SF読書交換日記 第0回

          書評:『口に出せない習慣、奇妙な行為』より「バルーン」(ドナルド・バーセルミ、サンリオSF文庫)

          1978年から1987年にかけて刊行されていた、今はなきSF系の文庫。それがサンリオSF文庫だ。サンリオとは、キティちゃんとかピューロランドとかの、あのサンリオである。刊行から40年近く経った今でも名作の誉れ高い作品と、質の低い訳文でとても読めたものでない作品、そしてなぜ“SF文庫”に収録されているのか分からない作品まで、玉石混交のその雑多さが多くのSFファンを魅了してきた。かくいうわたしもまた、サンリオSF文庫の奇妙な魅力にあてられたものの一人だ。 今回扱うのは、なぜSF

          書評:『口に出せない習慣、奇妙な行為』より「バルーン」(ドナルド・バーセルミ、サンリオSF文庫)

          G-15より愛をこめて(4)

          本記事は2019年12月に川内地区の東北大生協購買店にて無料頒布した冊子「G-15より愛をこめて」のウェブ再録版です。 令和元年に読んでおきたいSF・ミステリ 新しい時代『令和』を迎えた2019 年。SF・推理小説でも多くの新作が世に出された。もうすぐ訪れる年の瀬。読み逃しはないか? 『そして誰も死ななかった』(白井智之、KADOKAWA) 離島に集められた五人の作家達。死体のそばに置かれた『ザビ人形』、五人と繋がりを持つ謎の女性、ある民族の大量死...全員が“死んだ”

          G-15より愛をこめて(4)

          白井智之作品リスト

          東北大学SF・推理小説研究会のOB、推理作家白井智之の作品・エッセイ・インタビューなどのリストをお届けする。 商業作品については2020年3月現在の発表済み全作品を網羅したリストになっているが、同人作品や各種エッセイ・インタビュー等には抜けが存在する恐れがある。間違いなどがあった場合、お知らせいただけるとありがたい。 単著※書名の下に記載されているものは、文庫で追加された文章や、各書店限定の購入特典。 ・『人間の顔は食べづらい』(長篇、KADOKAWA、2014/11/

          白井智之作品リスト

          京都SFフェスティバル2019参加レポート(天津一)

           京フェス以前に、僕はまともなSFイベントに参加したことがなかった。中国にSFイベントがないわけではなく、むしろこの数年の間にイベントの質量ともに著しく成長していると聞いているが、自分が高校時代のころは中国SF大会のような遠くて敷居の高そうなイベントしかなく、とても高校生一人で手軽に参加できる雰囲気ではなかった。それゆえ、僕は中国と日本の事情を直接に比べることはできない。  このように、僕ははじめてSFイベントに参加することになったが、そのはじめてのイベントになった京フェス

          京都SFフェスティバル2019参加レポート(天津一)

          京都SFフェスティバル2019参加レポート(本淵洋)

           京都SFフェスティバル2019の参加レポートを記す。  はじめに、京都SFフェスティバル(以下京フェスと略す)とは、京都大学SF・幻想文学研究会が主体となって、毎年秋に京都で開催されるSFコンベンションの一つのことを指す。ほかの大規模SFコンベンションとしては、日本SF大会、SFセミナー等がある。  こちらのHPで詳しい情報が得られる。  筆者が所属しているのは、正式名称を東北大学SF・推理小説研究会とする団体で、(その経緯は省略するが)SF研と推理研が共生した集団だ。

          京都SFフェスティバル2019参加レポート(本淵洋)

          『わたしたちのためのVtuber』(電子版)

          2019年末の冬コミ(コミックマーケット97)で、東北大SF研に委託して頒布した同人誌のPDF(全16頁、B5)をこのnoteに添付する形で頒布します。 本誌『わたしたちのためのVtuber』の著作権は各執筆者にあり、無断複製・無断改変・再配布の一切を禁じます。 収録内容エッセイ:「十か月という期間は短すぎる」卜部理玲 評論:「どうして私がVtuberに!?」下村思游 評論:「「のらきゃっと」を語る・考える」春尋孝 批評:「わが物語(Vtuber)に与ふることば」壁石九龍

          有料
          250

          『わたしたちのためのVtuber』(電子版)

          小咄:「いける屍」

           ある館。今日も今日とて、殺人事件が起こる。 「探偵とやらはいつになったら来るんだ。いつもいつも後から来て俺たちの出番をかっさらっていきやがって」 「警部、今回はすでに来ていて、隣で現場を確かめてるところです」 「それを早く言わないか。早速お手並み拝見といこう」  警部が部屋に入る。 「おい、探偵さんよ、今回はどうかね。今回ばかりはお手上げだろうが、いつものあざやかな推理をご教授願いたいのですが」  死体に屈こみ、警部に背を向けていた探偵がこちらを向く。 「や、警部さん。あま

          小咄:「いける屍」

          小説:「迫りあがり東京」(先行公開版)

           バーチャル観光案内「Uprising TOKYO」へようこそ。  明治に江戸から生まれ変わった東京は、以降大正、昭和、平成、令和と四つの時代、四度の災難に遭いながらも、その度に新しく生まれ変わり続けて今日に至ります。この動画では、そんな二〇二〇年の東京の観光名所をご案内します。  東京府の中心、東京市は、積層構造をもつ世界唯一の超都市として、広く世界に知られています。東京市は、立方構造をもつ世界唯一の超都市、北京とともに、アジア地域の経済・文化の中核を担っています。  東

          小説:「迫りあがり東京」(先行公開版)

          書評:『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』(大森望編、ハヤカワ文庫SF)

           日本では、なぜか不思議と時間SFが好まれる傾向にあると思う。「時をかける少女」は何度も映像化されているし、某大人気アニメ映画も時間SF要素をメインガジェットに据えていた。  そんな時間SFの傑作ばかりを集めたアンソロジーが、今回取り上げる『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』だ。SFマガジン創刊50周年を記念したアンソロジー企画の第2弾で、訳し下ろし作品を含む13作を収録している。  最初の作品が現代SF最高の作家のひとり、テッド・チャンの「商人と錬金術師の門」。「アラ

          書評:『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』(大森望編、ハヤカワ文庫SF)

          G-15より愛をこめて(3)

          本記事は2019年4月に川内地区の東北大生協購買店にて無料頒布した冊子「G-15より愛をこめて」のウェブ再録版です。 ジャンルを築いた作家・名作~国内篇~ SF・ミステリどちらも現在の隆盛に辿り着くには多くの作家・作品の登場が必要不可欠であった。中でも特に大きな役割を果たしたと考えられるものを紹介しよう。 SF篇『夢十夜』(夏目漱石、岩波文庫)漱石の作品の中で不思議な輝きを見せる幻想的な作品。漱石が実際に見た夢を題材とする作品で、不条理ものから歴史もの、SFらしいものや幻

          G-15より愛をこめて(3)