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#031家で作るラーメン―食と歴史にまつわる、あれこれ

 今回は、もはや国民食の一つとも言えるラーメンについて。ラーメンについて、と言いながらも、ラーメンに関する書籍、ラーメンとどういう来し方を過ごしてきたか、自宅で作るラーメンについてですので、気軽に読んでいただければと思います。

 ラーメンを外で最も食べていた時期は大学、大学院時代で、麺好きの後輩にいろいろな店に連れて行ってもらってました。個人的な好みで、とんこつの臭みが苦手だったこともあり、「私でも食べることが出来るとんこつラーメン」、なんていう無茶なリクエストをして、該当するような店を見つけ出してもらっては連れて行ってもらう、などということをしておりました。そうやって連れて行ってもらった店が、大阪で最初期の和歌山ラーメン、しょうゆとんこつの店だったように記憶しています。その時に連れて行ってもらった店は、大阪市内の大国町にありましたが、GoogleMapを見ても、どうやらもう無くなってしまっているようです。

 ラーメン自体の歴史としては、日本では江戸時代に徳川光圀が食べたのが最初、と語られます。しかし現在のわれわれが思うラーメンは、中華料理とはいいながらも、「ラーメン」と呼ばれる中華料理はなく、非常にさまざまなルートから流入して出来上がったもので、1つのルーツからなるものではなく、いくつもの祖先を持つものが、日本へ流入したことでラーメンと呼ばれるひとつのものに結実した、と岡田哲『ラーメンの誕生』にも記されています。この本は、麺、スープ、具材のそれぞれからのアプローチで「ラーメンとは何ぞや?」ということを解き明かしていく、という面白い試みの本です。特徴としては、他のラーメン関係の書籍では、作り手の立場からのアプローチや食べる側からのアプローチなどの角度からの分析が多いように感じますが、『ラーメンの誕生』は非常に俯瞰的な視点からの分析、叙述が特徴と特徴と言えるでしょう。元日清製粉にお勤めだったという経歴をお持ちの著者ということもあり、麺のもとになる粉の分析にまで至るという徹底ぶりがなかなか見ものの1冊です。

 また、日本のラーメンというと、店頭で食べるものだけではなく、いわゆるインスタントラーメンも「ラーメン」という料理の一角を占めるようになっています。海外でもインスタントヌードルとして各地に進出しており、物珍しさもあり、海外土産として購入した方も、人からいただいたこともある方もおられるのではないでしょうか。コンビニエンスストアにも所狭しと陳列棚にインスタントラーメンが並べられており、食べたことがない新製品を見ると、筆者自身もつい購入してしまうことも多々あり、月に数回は最低でも食べる機会があります。下記の『日本懐かし即席めん大全』は、チキンラーメンから連綿と続くインスタントラーメンの歴史を、製品を振り返ることで網羅的に紹介した本です。

 特徴としては、大手メーカーのものではパッケージのモデルチェンジなども追い、また大手メーカーだけでなく、各地方地方の独特なインスタントラーメンの紹介も精力的に行っているところが、なかなか興味深いです。個人的には、子供時代に見た「楊夫人(マダム・ヤン)」のCMでのインパクトが忘れられないのと、高級感あふれる「中華三昧」が非常に印象的でした。「中華三昧」は当時は高級志向の商品で、「チキンラーメン」や「チャルメラ」、「出前一丁」などの現在まで続く定番商品と比べると価格的にも高価で、他の商品とは一線を画する印象を子供心に持っており、また実際にそうそう親にも買ってもらえなかった印象があります。そのため、この本を読んで「中華三昧」がまだ販売されていることを知って、ついスーパーで探して全種類を1つづつ購入してきてしまいました。また、明星の「ちびろく」という、通常のサイズより少量の麺を6個入り1袋にして売り出したものがあり、これは大人と子供、家族でシェアするために分けやすい形を取ったものです。こちらは、実家で子供の頃に親が休日の昼などに作ってくれたことなどを、この本を見て思い出しました。

 先の岡田哲『ラーメンの誕生』にも記されていますが、筆者の子供の頃はまさにインスタントラーメンの発展の時期にあたっており、麵だけでも、フライめん、生めんや生めんタイプのノンフライめんなど様々な特徴を持つ製品が出て来ては消え、また新しい商品が出る、といった恐竜的進化を遂げていった時代であり、もはや食べることが出来ない思い出の品というのもそれぞれあるかと思います。是非『日本懐かし即席めん大全』でそれぞれの思い出の一品を探してみてはいかがでしょうか。同世代の方であれば、筆者と同じようなラーメン体験を思い出すこと、請け合いの1冊です。

 最後に、自宅で時々作るラーメンについて。時間のある時にですが、時々鶏ハムを作ることがあります。誰に教わったのかはすっかり忘れてしまいましたが、概ね次のような作り方で作っています。まず、鶏の胸肉を1、2枚使って、岩塩(普通の食塩でも大丈夫です)と胡椒、砂糖を順にしっかりと肉の両面に擦り付け、ビニール袋などに入れて半日ほど冷蔵庫で保管します。そのあと、鍋いっぱいに水を張って、そこへ先の鶏肉を入れ、沸騰する直前まで鍋に火をかけます。沸騰直前で火を止めた後、適度に温度が下がるまで待ち、夏場は冷蔵庫へ入れ、それ以外の季節はそのまま半日放置します。この間、鍋の中の湯の温度が下がりながら、鶏肉に熱を加えて行くことで、鶏ハムが出来上がります。鶏ハムの完成後、この時に使用した鶏肉を煮たお湯は捨てずに置いておきます。これには鶏のだしと塩、胡椒などの味が出ているので、これをラーメンのスープに使用します。このスープを再度温め直し、薄口醤油、濃口醤油、塩などで味を調え、別の鍋で中華麺に湯通しをし、湯切りをした後、丼鉢に麺を入れ、スープを注ぎ、お好みで刻みネギなどを入れます。我が家では、先に作っておいた鶏ハムを厚手に切ったものを麵の上に焼き豚の代わりに添えて出しています。特に調理を専門に習ったことがないので、家庭料理の域を出ませんが、普段の生活の中で短時間で安く、おいしく出来るに越したことがないので、あっさりした醤油ラーメンではありますが、下準備をする余裕のある時など、機会があれば試してみてください。

 今回は、歴史的というより、筆者の体験談に基づく現代史的な側面が無くもないですが、日清のラーメン博物館にもまだ行ったことがありませんし、筆者の知らない事象、歴史がまだまだあるかと思います。もう少し歴史的なことなども、知識が仕入れることが出来ましたら、今後ご紹介できればと思います。

 


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