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社会的孤立の危険因子


📖 文献情報 と 抄録和訳

地域在住高齢者における社会的孤立の危険因子に関するグローバルな視点:系統的レビューとメタ分析

📕Chen, Meiqian, et al. "A global perspective on risk factors for social isolation in community-dwelling older adults: A systematic review and meta-analysis." Archives of gerontology and geriatrics (2023): 105211. https://doi.org/10.1016/j.archger.2023.105211
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🔑 Key points
🔹本論文はグローバルな視点に立ったシステマティック・レビューである。
🔹国際社会における高齢者の社会的孤立には多次元的な要因がある。
🔹地域社会における高齢者の社会的孤立の要因は地域によって異なる。

[背景・目的] 高齢者の身体的・精神的健康は現在、公衆衛生にとって大きな脅威である社会的孤立によって大きな影響を受けている。我々の目的は、様々な地理的地域における高齢者のリスク因子と社会的孤立の関連を明らかにすることであった。

[方法] 7つのデータベースを、開始から2023年4月まで徹底的に検索した。研究の選択には包含基準と除外基準を用いた。横断研究についてはAHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality)を用いてバイアスの確率を評価し、コホート研究についてはNewcastle-Ottawa scaleを用いて評価した。統計解析はSTATA 15を用いて行い、プールされたオッズ比(OR)と95%CIを算出した。

[結果] 全3043報の論文を精査し、42報が組み入れ基準を満たした。その結果、世界の高齢者における多領域危険因子と社会的孤立は有意に相関していることが示された。これらの多領域危険因子には、生物学的因子、社会経済的因子、心理学的・行動学的因子が含まれていた。
<社会的孤立の危険因子:メタ分析>
■生物学的要因

・配偶者なし:2.10(1.39-3.17)
・認知機能低下:1.71(1.36-2.15)
・ADL障害:1.70(1.29-2.24)
・男性:1.47(1.10-1.95)
・自己評価による健康不良:1.44(1.30-1.59)
・>80歳以上:1.41(0.90-2.20)

■社会経済的要因
・高卒以下の学位:1.25(1.06-1.47)
・持ち家なし:1.30(0.99-1.70)
■環境要因
・一人暮らし:1.96(1.49-2.59)
・都市部に住んでいる:0.92(0.57-1.48)
■心理的・行動的要因
・社会参加がない:1.45(1.22-1.72)

また、これらの要因は地域によって異なる可能性があることも重要である。
<社会的孤立の危険因子:地域別-アジア>
・認知機能低下(n=2):1.74(1.24,2.44)
・一人暮らし(n=3):1.58(1.04,2.38)
・社会参加なし(n=2):1.43(1.11,1.83)
・自己評価による健康不良(n=7):1.39(1.24,1.56)

[結論] 世界各地のコミュニティで暮らす高齢者において、多くの領域要因が社会的孤立と関連していた。社会的孤立をコントロールするための効果的な戦略を開発するためには、地域社会における社会的孤立の危険因子の評価を行うことが極めて重要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

私たちは、網の目のように紡がれたつながりの中で経済活動を行い、社会を構成し、日々暮らしていることを平時には忘れがちだ。
しかし、なくなって初めて気づく前提が数多くある。
そういった前提によって紡がれた網の目は、ますます複雑化し、一部で起こった衝撃がここかしこにも想定もしなかったような影響を与える。
私たちはかつてないほどの「相互依存」の時代を生きているのだ。

学習する組織:訳者前書き

そのような「相互依存」の時代。
その中で、社会を構成する網の目の一部になることを内発的、外発的に止めてしまう場合がある。
そのような個人の状態は社会的孤立、と呼ばれる。
社会的孤立や個人の感じる孤独感は、様々な症状や疾患リスクと関連することが最近の文献において多く報告され始めている(関連 note参照)。

そこで、社会的孤立に陥りやすい人たちを特定することで、介入を需要の高い人々に集中することが可能になる。
今回の論文は、社会的孤立のリスクが高い人々を層別化するのに役立つ情報を提供してくれた。
アジアにおいては、認知機能低下、一人暮らし、社会参加なし、自己評価による健康不良が有意な危険因子だった。
こう眺めると、入院中の高齢者において、その一部や全部が該当する方は多いように感じる。
そのような高リスク者に対しては、濃厚な退院支援、退院後の介護サービス設定が重要になろう。
回復期病棟で働くぼくとしては、そのようにこの研究を役立てたいと思っている。

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