高強度の有酸素運動は、『脳由来神経栄養因子』を増加させる
📖 文献情報 と 抄録和訳
脳卒中生存者における運動と脳由来神経栄養因子との関係。システマティックレビューとメタアナリシス
[背景・目的] 脳由来神経栄養因子(BDNF, Brain-derived neurotrophic factor)は、脳卒中後の機能的転帰の改善につながる神経可塑性のバイオマーカーである。脳卒中患者において、運動後に濃度が上昇する可能性を示唆する初期の証拠があるが、運動パラメーターがBDNF濃度にどのように影響するかは不明である。
[方法-結果] この系統的レビューとメタアナリシスは、7つの電子データベースを検索した。脳卒中後の人々の運動後のBDNF濃度の変化を測定した実験的または観察的研究を対象とした。研究の特徴、参加者、介入、アウトカムなどのデータを抽出した。いくつかの固定効果およびランダム効果メタアナリシスが行われた。
[結果] 合計687名の参加者を含む17の研究が適格基準を満たした(6つの無作為化試験)。1回のセッション(平均差、2.49ng/mL;[95%CI、1.10-3.88])および高強度の有酸素運動プログラム(平均差、3.42ng/mL;[95%CI、1.92-4.92])の後にBDNF濃度に有意な改善が観察された。
[結論] 高強度有酸素運動は、循環BDNF濃度を増加させ、神経可塑性の増加に寄与する可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
前からぼんやりと感じていたことだったが、この論文を読んで、ある概念が結晶化された感じがした。
どういうことか。
多くの理学療法士や医療職が、「いま、なぜこの介入を選択したのか、この介入によって何がどうして良くなるのかを説明しきれて、なおかつその通り結果を出してこそかっこいいぜ」と思っている。
つまり、標的とする鍵穴を明確に特定(評価-問題点抽出)した上で、鍵をつくり(介入)、改善させることこそが善。
たとえば、歩行時のトレンデレンブルグ跛行が出現していて、中臀筋やその他Impairmentレベルの要因に問題がなかったとする。
とか、なるわけだ。
これは、畑の例でいうと、目的とする具体的な作物を育てようとする営みである。
だが、ここで大事なことがある。
土壌が固すぎたり、栄養がなかったとしたら、どうなるだろうか。
当然のことだが、それでは育たない。
アスリートがめっちゃ筋トレをしても栄養不足では糖新生が起こってしまうが如く、成長の需要があったとしても、そこに『栄養』という土壌が耕されていなければ、結実はしない。
そこで、神経における成長とBDNFの関係性である。
これはまさに、具体的な作物と土壌の関係性と類似した関係を持っている。
ある神経細胞に成長の需要があったとしても、そこにBDNFという栄養がなければ成長が生じにくい。
つまり、成長の『前提』なのだ。
アルブミンが筋肥大における前提条件であるように。
そして、BDNFの土壌を耕してくれるのが、『高強度有酸素運動』というわけだ。
そこには、具体的な作物をつくろうという意図はまだ存在していない。
むしろ、存在してはいけない。
まずは土壌を耕す、そこに作物を植える。
リハビリテーションにおいても、その順序を守りたい。
先ほどの例でいえば、
①高強度有酸素運動によってBDNFアップさせる(土壌を耕す)
②トレンデレンブルグ跛行を改善させるためのステップ練習(作物を植える)
この①→②によって、②の効果が保証される。
これからは、自分に問いかけよう。
禁忌でない限りにおいて、高強度有酸素運動は全患者にデフォルトでいいかもしれない。
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