「命の本屋」

紅顔の哲学者を目指して#8

2024年4月28日(日)

この本屋で働き始めてから3年が経つ。
今年で4年目になる。
僕はいつまでここで働くことになるのだろう。
ここから眺める棚とお客さんの景色もいつかは見れなくなってしまうのだろう。
万物流転。平泉澄の本。父に教えてもらった。
物事は変わり続ける。僕も変わり続ける。この本屋も変化し続けている。だから、いつか終わりはくる。このお店がなくなる時がいつかくるだろうし、僕がここを辞める時もいつかくる。そう思うと少し悲しくなる。でもしょうがないと割り切る気持ちも少し。
この本屋に出会い、もっと言ってしまえばこの土地に移り住み(今は別の場所に引っ越した)、ここで働くことができたのは"奇跡"といってしまいたい。
本が好き。本屋が好き。もちろんそう。だけどそれ以上にこの本屋が好きなのかもしれない。
2020年。大学一年生の時。バイト探しをしていた。色々と受けた。全部落ちた。ずっと本屋で働くことが憧れで、でも無理だろうなと思いつつも応募した。
母からの紹介でここを受けて、運よく受かった。面接で前の店長と意気投合してその場で採用してくれた。とても嬉しかった。多分今までの人生で1番嬉しかったと思う。だって世の中はコロナで大変だったし、その頃は僕も大変だったから。
それから今日に至るまでここで働くのが大好きで日々の生きがいになっている。
引っ越す前は歩いて行けたから、大学のない土日は朝からウキウキして向かった。
大体土日は朝からお昼までの勤務で仕事が終わるとお店の中をぐるぐる回って棚を眺め、本を買うことも多かった。
22年生きてきた中で、大学入学から今にいたるまでがずっと路頭に迷っているようで、不安で仕方ない。地獄とは言えないけど、地上ではなく地下をずっと彷徨っている感じだ。
大学に入学してからいろいろな困難があった。夢や目標はさまざまなものに影響を受けて変わっていったし、大学を休学したいという話を何度も親と話し合った。
そんな困難がつきまとう中でも、僕はこの本屋で働いていたし、精神的にきつい時も働いていた。
無理をして働いていたというよりはそんな状況でも働くことを許してくれた唯一の場所。
どんな時もこの本屋と僕が住む家は必ずあった。
もちろん、家に帰れば家族がいて自分の部屋がありホッと安心する。
でも、どんなに辛い時も僕はこの本屋に支えられてきたような気がする。
だから、僕にとってこの本屋はもう一つの家だ。
普段よく行く本屋とも、たまたま見つけて入った本屋とも違う。
ここより素敵な本屋はたくさんある。でも、ここでの思い出は他のものに変えられない。
去年引っ越してから、以前より距離は離れてしまったが、ここへ来ると安心するのは以前と変わらない。
今は本屋で就職することと最終的な僕の夢でもある哲学者になることを追い求めて日々働いている。
今振り返るとたくさんの本をここで買ったなあと思う。家にある本はほとんどここで買ったのかも知れない。一冊一冊にその時の情景がこびりついている。
そして、いつかは辞めることになるのだろうけど、できる限り長く居たい。
今後も僕と一緒に歩んでいって欲しい。
僕の命の本屋。

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