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小説&ショートショート

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小説は主に短編です。フリー台本として、ご自由にお読みください。 (全部ではありませんが、「聴くっしょ!」にも投稿しています)
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固定された記事

恋文を読む人|掌編小説(#春ピリカグランプリ2023)

「あの人、ラブレター読んでる」  オープンテラスのカフェで、向かいに座っている妻が突然言…

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放課後ランプ|毎週ショートショートnote

「74番ゲートにて、進学743便にご搭乗予定のお客様にご案内します。 当便のお客様の機内へのご…

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春ギター|毎週ショートショートnote

――今年も沸いて出たか……。 夕方、駅前ロータリーのストリートミュージシャンを見て、心底…

トガシテツヤ
2週間前
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G.W|ショートショート

「皆さん、こんばんは。GWです」  いつも通り、夜の7時きっかりに配信が始まり、チャットチ…

トガシテツヤ
2週間前
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始まりはいつも夜|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 ――始まりはいつだって夜から。  僕らが真っ暗な海の底から、小さな泡粒と一緒に生まれた…

トガシテツヤ
1か月前
57

桜色の季節とダメダメな私|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 ――桜色の季節?  とんでもない。私にとっては、まさに暗黒時代の幕開けだ。 *** 「…

トガシテツヤ
1か月前
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転がる石ころたち|短編小説

「あー、この曲、CMで聞いたことあるな。言うなよ? 当てるから」  カーオーディオから流れる軽快な音楽に、杉本は目を閉じて「うーん」と考え始めた。僕はそれを無視して「ローリング・ストーンズ」と答える。 「当てるって言ったじゃねーか!」  声を荒げる杉本を「どうせ当たんないよ」と一蹴した。 「しばらく会ってないうちに音楽の趣味が変わったか? あ、洋楽好きの彼女ができたとか?」 「そんなんじゃないって」  特に洋楽が好きというわけではないが、ローリング・ストーンズはたま

梅の実|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 梅の花を見ると、亡くなった祖母を思い出す。  名前が「梅」だったんだが、それだけではな…

トガシテツヤ
2か月前
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死人歩き|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 閏年――2月29日、実家に帰省した。  怪訝そうな顔で「なんで今日なん?」と言う母を無視し…

トガシテツヤ
2か月前
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毒入りチョコレート|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「チョコレートは食べちゃダメよ? 一番毒を混ぜやすい食べ物だから」  僕が小さい頃、隣に…

トガシテツヤ
3か月前
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味のしないコーヒー|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 ――本を書くように読む。  もの書きに転職した友人が言った。意味が分からず、続きの言葉…

トガシテツヤ
4か月前
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ジャミロクワイ|ショートショート

「ジャミロクワイって、声に出して言いたくなるよね」  どこかの誰かがSNSで呟く。 「だよ…

トガシテツヤ
2か月前
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キガラシの花|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「春と風に中てられたんだな。何とも運が悪い人だ」  診療所に運ばれてきた若い女性を見なが…

トガシテツヤ
2か月前
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空色の鉛筆|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 新しい色鉛筆を買った。とは言っても、それは「空色」と書かれた1本の鉛筆で、黒色の芯が付いている。試しに、画用紙に風景画を描いてみると、やっぱり普通の鉛筆と同じような黒い線しか出ない。  ――本当に色鉛筆なのかな……。  不思議に思いながらも一通り描き終えると、絵の空は見る見るうちにオレンジ、紫、藍色などのグラデーションになった。  まさに今、自分が見ている夕焼けと同じように。  ――なるほど。空色ね。  翌朝の空は快晴だった。  昨日と同じように風景画を描くと、