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「あの人、ラブレター読んでる」 オープンテラスのカフェで、向かいに座っている妻が突然言…
「74番ゲートにて、進学743便にご搭乗予定のお客様にご案内します。 当便のお客様の機内へのご…
――今年も沸いて出たか……。 夕方、駅前ロータリーのストリートミュージシャンを見て、心底…
「皆さん、こんばんは。GWです」 いつも通り、夜の7時きっかりに配信が始まり、チャットチ…
――始まりはいつだって夜から。 僕らが真っ暗な海の底から、小さな泡粒と一緒に生まれた…
――桜色の季節? とんでもない。私にとっては、まさに暗黒時代の幕開けだ。 *** 「…
「あー、この曲、CMで聞いたことあるな。言うなよ? 当てるから」 カーオーディオから流れる軽快な音楽に、杉本は目を閉じて「うーん」と考え始めた。僕はそれを無視して「ローリング・ストーンズ」と答える。 「当てるって言ったじゃねーか!」 声を荒げる杉本を「どうせ当たんないよ」と一蹴した。 「しばらく会ってないうちに音楽の趣味が変わったか? あ、洋楽好きの彼女ができたとか?」 「そんなんじゃないって」 特に洋楽が好きというわけではないが、ローリング・ストーンズはたま
梅の花を見ると、亡くなった祖母を思い出す。 名前が「梅」だったんだが、それだけではな…
閏年――2月29日、実家に帰省した。 怪訝そうな顔で「なんで今日なん?」と言う母を無視し…
「チョコレートは食べちゃダメよ? 一番毒を混ぜやすい食べ物だから」 僕が小さい頃、隣に…
――本を書くように読む。 もの書きに転職した友人が言った。意味が分からず、続きの言葉…
「ジャミロクワイって、声に出して言いたくなるよね」 どこかの誰かがSNSで呟く。 「だよ…
「春と風に中てられたんだな。何とも運が悪い人だ」 診療所に運ばれてきた若い女性を見なが…
新しい色鉛筆を買った。とは言っても、それは「空色」と書かれた1本の鉛筆で、黒色の芯が付いている。試しに、画用紙に風景画を描いてみると、やっぱり普通の鉛筆と同じような黒い線しか出ない。 ――本当に色鉛筆なのかな……。 不思議に思いながらも一通り描き終えると、絵の空は見る見るうちにオレンジ、紫、藍色などのグラデーションになった。 まさに今、自分が見ている夕焼けと同じように。 ――なるほど。空色ね。 翌朝の空は快晴だった。 昨日と同じように風景画を描くと、