史記

中国の人々は、やはり現実的?⑤ ー 歴史の重視。


前回、中国仏教を通じて中国人の現実を重視する姿勢について書きました。

今まで書いてきた儒教、老子、仏教、それらは思想書もしくは宗教です。

これらの思想所や宗教は中国人の現実を中止すると言う特性に合った形で展開されあるいは修正されていきました。

しかしこれらの思想以外に中国人の現実を重視する姿勢が現れているのが、何といっても暦書でしょう。

中国人は古来より、時代時代の王朝の栄枯盛衰を歴史書に記してきました。

その中で1番有名なのは、前漢の時代に司馬遷によって編纂された「史記」でしょう。古代中国の心は伝説上の皇帝である黄帝から、前漢までの武帝まで70巻からなる大歴史書です。

中国にはこの「史記」以外にも、「漢書」「後漢書」「三国志」「晋書」「宋書」など、正式な正史でも26あり、それ以外にも数多くの歴史書が現存しています。

日本にも「古事記」や「日本書紀」、「吾妻鏡」「太平記」などの記録や歴史書があり、またヨーロッパなどにも「歴史」「戦史」「ローマ史」「ガリア戦記」といった歴史書が数多くありますが、それでも中国の歴史書の充実は群を抜いています。

中国のお隣インドでは、あの長い歴史にもかかわらず歴史書はあまりなく、それに反して宗教書や宗教書は充実しています。インドは思想、宗教性が高い国民であることが伺えます。

そこから考えると、歴史書を充実させている中国人は、歴史つまり人間の営みという実際行動=現実を大切にし、それを詳細に記録に残しています。

なぜ中国人はこのように歴史を大切にするのでしょうか。それについて、「中国思想考える」(金谷治著)中央公論社には次のように書いています。

中国人が歴史を大切にする理由は2つあります。

1つは「殷(いん)の鑑(かがみ)は遠からず、夏后(かこう)の世にあり」という古いことわざにあるそうです。
このことわざの意味するところは、殷(いん)王朝にとってのお手本=鑑(かがみ)は遠いところにあるのではなく、前王朝の夏后(かこう)王朝にあるということです。

これは殷(いん)王朝に限らず、その次の周王朝の手本も、殷(いん)王朝であるとされています。

その手本とは、もちろん良いことばかりではなく、悪いことや失敗した原因なども対象になります。

つまり良い意味にせよ悪い意味にせよ、過去の人間の営みはそのまま現在の人々の参考や規範になると言う考え方です。

要は、現在のもしくは未来の人々のためにこそ過去の歴史があるという、中国人の現実を大切にする考え方です。

日本にもある「大鏡」や「増鏡」「吾妻鏡」など鏡がつく歴史書がありますが、この鏡は鑑みるから来ており、過去の人々の行為=歴史から読み取れるものを現在の政治に活かすという意味で、中国人の考え方を踏襲しているとのことです。

もう一つ中国の人々が歴史を大切にするのは、理論を展開する際に実際の人間行動の裏付けを持たない頭を使っただけの理論を好まないと言うところにあります。

頭を使っただけの理論は、事実を伴わない理論と言うことで、抽象的な理論と捉えられ、現実を重視する中国の人々にとっては、果たしてそれが現実に通用するものであるかどうかが判らないということなのです。

そのため実際にあった人間の行動を基に、現在起こっていることに敷衍することで、より説得力のある理論展開ができるとする中国人の考え方につながっていくのです。

このような実際の人間行動=現実を重視する中国人の思想が根底にあるため、中国の人々は歴史を大切にしていくのです。


※ 文中の写真はYahoo画像より転載させていただきました。
※ 表題の写真はYahoo画像より転載させていただきました。



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