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【参考にならない京都観光】半日の1人時間で豚を食べ尽くして、息を吹き返す

早朝に家を出る。気乗りはしないが、京都で少し用事。すぐに終わるが、その短さに見合わない量の靄が胸いっぱいに充満してしまった。

だから、まっすぐ家になんて帰れない。やるせなさに勝る感情を手に入れるための寄り道が必要だ。普段いくら品行方正な人でもひとつの盗みをはたらいただけで以後悪人認定されるように、結局強いラベルが勝つのだ。「やるせない」という感情より強い感情を手に入れれば良い。

抽象的な「うれしい」「楽しい」みたいなぼやけた感情ではダメだ。もっと本能的な感情。

それは「あぁ満腹だ」という感情にほかならない。

使い古してシートカバーが一方に偏りまくった運転席にまた乗り込む。いや、偏りまくったという次元ではなく、もはや背もたれ部分の生地を尻に敷いてしまっている。

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まだ9時台。じゃあ、モーニングだ。いや、今から行く店で食べるのはモーニングではなく、明確に「朝メシ」だ。

開店時間が短く、まず行く機会がなかったが気になりまくっていた「かどや」へ。「かどや」は早朝から昼前までの営業。今日はまさにこの「かどや」へ行く専用の時間のようだ。朝イチで予定が終わることってまずないから。

立体感あるぶたに「ぶたじる」の文字。良い

外観がとにかく良い。「かどや」のネーミングどおり交差点の角にある。ギラギラしたカラーリングではないので、車だとうっかり素通りしてしまいそうになるが、歩いて見ればこれほどまでに目を引き、ぐっと心を掴まれる外観の店ってなかなかない。ぶたのイラストに「ぶたじる」と書く明瞭さもナイスだ。

めし小とシュウマイ、浅漬け?かな。良すぎる

ガララと入店すると、明らかに私以外のお客は常連だった。だって皆、酒を飲んでいるんだもの。

奥の席には日本のどの酒場にもいる白髪混じりで赤い顔をした「ラコステ」ではなく「クロコダイル」の長袖ポロシャツを着た男性を含む4人組、あとは中年の夫婦らしき人たちが2組いた。

私は店の奥のショーケースからシュウマイを選び、席につく。

すぐに店員の男性が来てくれて、シュウマイを温めてくれる。朝からシュウマイ。鯖煮的なものを食べようと思っていたが、妙にシュウマイにそそられてしまった。それにメシ小とぶたじるというチョイスにした。

脂膜びっしりのぶたじる。たまらなくうまい

ぶたじるは、完全にぶたじるだった。いわゆる根菜類などがふんだんに入った汁ではなく、大量の豚バラにたまねぎとごく少量の豆腐が入っているもの。ぶた脂の膜がびっしりと表面を覆っていて、冷める気配はない。

減っても減っても肉が減らないし、メシ小もそこいらの定食の大並。朝から大満足である。やるせなさをかき消すにはもってこいだ。

こういうメシを体力仕事ガテン系の人だけでなく、気持ちが落ち込んでいる人にも食べてほしい。きっとそのビジュアルを見た瞬間から元気をもらい始め、食べ終わるころには一筋の光が見えるに違いない。

目の前の物事は変わらなくったって、自分が元気になれば見え方は変わる。

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腹を膨らませ、次は二条へ向かう。話題になっている映画「変な家」を観るためだ。

映画はヒューマンドラマ系の洋画か役所広司が出ているものくらいしか観に行かないのだが、偶然見かけた「変な家」のWEB広告の前髪長い高嶋政伸のビジュアルが面白すぎて、どうしても観たかったのだ。

思いがけず1,300円。ラッキー

いざ、観てみると完全に怖い系。ミステリーっぽい感じかと思えば、仮面系が出てくるホラー系というか、ヒトコワ系というか私が最も観ないテイストの映画であった。端的に言って、完全に苦手系である。ミステリーですら苦手なのにホラーとは。予想外である。

お目当ての高嶋ももっとボソボソと喋るクセのあるキャラを想像していたのに、シンプルにバイオレンス嫌な奴で、出てくるシーンも暗い場所が多くて、前髪と影が一体化してしまっていた。

あの長い顔に対して長い前髪という面白さがなかなか感じられず残念だ。

残念だが、観ておいて良かった。観ておかないといつまでも脳の容量を高嶋政伸に割くところだった。若い頃だったら、きっと高嶋政伸が気になっているくらいでは観るに至らなかっただろう。まぁ佐藤二朗も佐藤二朗らしい役で出ていたし、良いさ。

くだらないことを気になり、実際に行動に移すくらい大人になったのだ私は。

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この後、カフェに行くつもりだったが、「ホラー映画で体力を使ってしまった」という口実を得た私は、近くの中華に流れ込む。ほら、観ておいて良かった。

住宅街の一角にある、大鵬。京都でもかなり有名な中華屋で、いつか行きたいと思っていた。この二条エリアはかなり気になっている店が多いものの、まず行かないエリアなので、できるだけ今日いろんな店に行きたいと思っていた。

大鵬。期待高まる外観

いわゆる雑多な町中華とは一線を画す清潔感。店内を見渡すとワインと中華を楽しんでいる人が多く見られた。メニューに目を通し、さまざまな誘惑を受けるが、まだ次の店もあるので、名物の「てりどんきんし」のみに抑える。

てりどんきんし。思いの外ストレートな味わい

細切りきんしたまごに豚肉の甘辛く炒めたものがのっている潔さ。なるほど、きんしたまごとの組み合わせは今まであまり出会ったことがなかったが、アリだ。

とろっとした卵とじとはまた違う、一体感ではない、絶妙な独立感が今日はこっちの方が良いかもという気にさせてくれる。結構量もあり、ガツガツと食べ進める。朝から豚過剰摂取気味である。

となりのおねえさんはてりどんきんしのお茶碗サイズみたいなものを食べていた。そういうのもできたのか、とそれを知っていればそっちにしたのにという顔を浮かべたが、実際はきっと知っていてもレギュラーサイズを選んだだろう。

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さて、喫茶を目指そう。大通りを渡り、やや細めの道へ。このあたりは行きたい喫茶・カフェが複数軒ある。だが、ここ1ヶ月くらいコーヒーを2杯飲んだだけで朝まで寝れないという異様にカフェインの影響を受ける体になってしまったので、1軒に絞る。どうしたのだろう。

SARASA敷地内の植物屋入り口
SARASA敷地内のアンティークショップ入り口

絞った喫茶までの間に、もう1軒行きたいと思っていた「CLAMP COFFEE SARASA」を通る。喫茶は利用しないが、同じ敷地内にアンティークショップ、調理雑貨店、植物屋があり、すべて覗いていく。

なんておしゃれな敷地なの。隙あらば何かを買おうと企んでいたが、がっつり心を掴まれるものはなかったので今回はセーブ。セーブできる時はしとかないと。また、ゆっくりと訪れたい。

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お目当ての喫茶は「喫茶チロル」。喫茶のあとに続くチロルはなぜか無性にかわいい。

COFFEE。わかりやすい

外観からして良い。外壁に「COFFEE」。看板のイラストもキュートだ。入店前からワクワクしている。長年行きたいと恋焦がれた店に入る時はいつだってそうだ。

味のある看板たち
キュートなイラスト

店内はやはり老舗喫茶のそれだった。小さなテーブルと椅子になぜだか私の巨体はミラクルフィットする。

ブレンドを飲みたいところだったが、汗ばむほどの陽気だったので、アイスコーヒー。それにたまごサンドのハーフがあったので、それも。ハーフがあるのがうれしい。少食な女子にも、逆にすでに食べ倒してきた巨体にも刺さる。ハーフをメニューに設けるだけで、市場は3倍に広がる。

ムチっと系たまごサンド。うますぎるよ

ほどなくして運ばれてきたたまごサンド。これぞたまごサンドという正しいルックス。ちゃんとこのレースのカーテンみたいな柄の紙も敷かれている。どうだって良いのだが、ひと敷きされているだけでなんだか嬉しい。

一口食べればしあわせ。この前神戸元町のサントスで食べたホットケーキもそうだが、喫茶の食べ物はしあわせである。「おいしい」という感想よりも先に「しあわせ」というワードがよぎる。

ふわふわというよりはムチっとしっかり目の食感で、少量のきゅうりが良いアクセントになっている。

隣にはカツカレーが運ばれてくる。向こうの窓際の席にはカレースパゲティらしきものが運ばれている。体を一切動かさずに、目が目尻から飛び出すほど横目にして、どんなビジュアルをしているかを確かめようとする。柱ごしに見えるおばぁさんはメイン料理を食べている様子がなく、ごはんと味噌汁を飲んでいる。

↓カツカレーとたまごサンドをTシャツに昇華しました。AIに依頼するのはまだまだ難しい…。

トムとジェリーの大イラストが描かれたトップスに乳母車、サンダルという奇抜ファッションのおばぁさんが入ってきたかと思えば、白人の若い女性2人も入ってくる。さまざまな人が入り乱れるが、チロルは愛嬌たっぷりに受け入れてくれる。ちょっとこれは、また来たい。

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チロルを出ると15時を過ぎていたが、まだただの昼のような明るさと陽気だった。私の前をパステルカラーのコートにミッフィーの輪郭のない顔のトートを持った女子と、ジャージのポケットから有線イヤホンを垂れ流している男子が歩いている。なぜこうもパステル女子はジャージー男子と付き合うのだろうか。

帰りにイオンに寄り、2種のジンを買う。ライターをさせていただいている商品比較サイトでおすすめ上位を獲得している商品だ。

桜の香りがするらしいってきいたら、買うしかないじゃない。帰ったら、窓から遠くに桜が見えた。昨日までは咲いていなかったのに。

サントリーの「ROKU」と京都蒸溜所の「季の美」

↓今回の私の軌跡を載せておきます。

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