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“文化大国” を叶える「編集力」

column vol.1139

昨日は文化の日だったので「文化」について語ろうと考えていたのですが、休む技術について語ってしまったので

今日は一日遅れでお話ししたいと思います。

最近、文化に関して面白い記事がありました。

フォーブスジャパンに紹介されていた「カルチャープレナー」という概念です。

〈Forbes JAPAN / 2023年10月24日〉

カルチャープレナーとは、文化の価値現代の文脈で再解釈し、世界に発信し、事業化していく文化起業家のこと。

例えば、「TeaRoom」代表取締役CEOであり裏千家茶道家でもある岩本涼さんや、ファッションブランド「juetie」のクリエイティブディレクターとして東京カルチャーを発信するAMIAYAさん。

他にも、持続的な価値をもたらすものづくりを続ける「secca」代表取締役の上町達也さんなどがそうです。

今、日本各地では、職人によって受け継がれてきた伝統技術工芸品などが、担い手不足時代の変化に伴い、姿を消しつつあります。

そんな中、カルチャープレナーの方々はこうした文化資産の価値に気づき、自分たちの手で今に息づかせたいと活動しています。


「文化大国」としての日本の可能性

カルチャープレナーの一人、戦略デザインファーム「BIOTOPE」のCEOである佐宗邦威さんは、コロナ前よりも海外の方々の日本に対する興味関心がより一層高まっていると感じていらっしゃいます。

例えば、10年前のアメリカに比べてこのように仰っています。

アメリカ人から見た日本のイメージといえば、“Sushi”だけだった。しかし今や、寿司も含めた “Washoku” は健康的で繊細な高級キュイジーヌとして認知され、“Matcha” スタンドは街のあちこちで見かける。“Sake” は料理のジャンルを問わず多くの飲食店が扱い、日本人のシェフはトップクラスの技術をもつ人として、海外に出れば3倍、またはそれ以上の給料をもらえるようになっている。

さらに、“Dashi” 専門店がニューヨークにでき、日本にしかない ”Umami” という味覚自体の認知も上がってきている。

食だけではなく、アニメ工芸品などはもちろんのこと、“Wabi-Sabi”“Zen” などの精神性自然との共生などの思想といった「日本文化」そのものが引力となっていると指摘されています。

現在多くの外国人観光客が日本を訪れていますが、円安が全ての理由ではない

だからこそ

日本は観光大国にとどまらず「文化大国」を目指すべきである

というのが佐宗さんのお考えです。

確かに日本の文化大国のポテンシャルは期待できるでしょう😊

伸び代のある日本の「文化GDP」

ちなみに「文化GDP」という考えがあります。

文化庁が2018年に発表した文化行政調査研究によると、日本のアート、パフォーマンス、コンテンツ、デザイン、クリエイティブなどを足し上げた文化GDPは、14年時点で16兆5000億円

これはGDP比の1.9%に当たるとされています。

一方、イギリスの文化GDPは、GDP比の5%

これを見れば、日本にはかなりの伸びしろがあることが分かりますね〜

日本の数字には、11兆円規模の市場規模をもつ観光や、食産業は含まれていないので、まだまだ大きな可能性があります。

日本文化の付加価値を上げ、文化GDP比率を高めていくことで、経済成長にも貢献できる。

カルチャープレナーのみならず、私たちがもっと文化を起点にビジネスを考えることができれば、日本をいろいろな意味でもっと豊かな国にしていくことは可能なのです。

「The Big Flat Now」思考がカギ

佐宗さんは、カルチャープレナーの腕の見せ所の1つに

いかに、日本文化の価値を海外の文脈に翻訳できるか

ということを挙げていらっしゃいます。

確かに、日本独自性が海外の方々に理解されなければ日本文化への求心力は生まれません。

ただ、この「文脈」ということでいえば、そもそも日本文化の魅力を余すことなく発掘できているかということもあるような気がしています。

そこで、キーワードになるのが「The Big Flat Now(ビッグ・フラット・ナウ)」という考え方です。

〈Forbes JAPAN / 2023年10月18日〉

ビッグ・フラット・ナウとは、時間場所という制約を超えて何もかもが平坦化し、歴史未来現在化するという思考法。

つまり、「カンブリア爆発」から「昨日検索したレストラン」「今日のニュース」など全ての事柄をフラットに取り扱うというものです。

例えば、地方では「関係人口」という言葉が定着し、定住者と外部の人々がシームレスになって町を活性化させています。

東京から近いところでいえば、内外の人々が一緒になってエリア活性している事例の1つが熱海でしょう。

もともと、歴史的にも、谷崎潤一郎志賀直哉が熱海に別荘を建て、島崎藤村芥川龍之介が熱海を舞台とした小説を執筆したように、外からやってきたクリエイティブな人たちがつくり上げてきたという「文脈」があります。

一時は、定住者と外部の人たちの間に垣根がありましたが、近年になって再び協力し合ったことで街に活気が戻っている

歴史、自然など街の魅力を新しい感性で発掘し、価値の再提示することに成功しているのです。

いかに街の文脈、物語性を発掘し、現代の視点で再編集していくのか。

編集者のような役割が求められているというわけですね。

「エバンジェリスト」をいかに育むか

つまり、街づくり(地域活性)一冊の本をつくるように編集していく。

街に根ざす文脈鉱脈と捉え、魅力を発掘し、内外の人たちの心を動かす物語に変えていく

素敵な物語があれば、街に住む人たち・関わる人たちが誇りを持ち、自然と語り部になってくれる。

つまり、エバンジェリスト(伝道者)の誕生です。

ポルトガルの首都・リスボン流入人口が急増していますが、それでも独自の歴史や土地性を保ってこられたのは、土地の文脈や物語性の大切さ定住者が認識できていることが大きいとのこと。

つまり、確固たるポルトガル(リスボン)らしさがあるからこそ、異なるバックグラウンドをもった存在を受け入れられるわけです。

文脈と物語性が寛容さを生み出し、さまざまな新しい文化を取り入れることで、さらにその街の魅力が磨かれていく

編集力がカギを握るということが理解できますね〜

そう考えると、編集者は街づくりに力を発揮しやすいとも言えますし、街づくりは編集のスキルやノウハウを身につけると良いのかもしれません。

いずれにせよ、特に地方を中心に日本はまだまだ発掘できていない文脈の鉱脈が溢れているはずです。

そうした魅力の源泉を発見する力、興味深く伝える力を日本人が今まで以上に身につけていければ、「文化大国」と呼ぶにふさわしい国になっていくでしょう。

私も、そんなことに関われる仕事がしたいと思う今日この頃です😊

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